
裏面からの音声を遮断するPM11
各マイクにAMIのトランスを使用
セットの内訳はスネア/タム用のダイナミック・マイクPM10が4本、キック用のPM11が1本、オーバーヘッド用のペンシル型コンデンサー・マイクC5が2本です。PM10とPM11は指向性がスーパー・カーディオイドで、かぶりの少ない収音が可能。ネオジム・カプセルを採用し、クリアなサウンドと高出力を特徴としています。いずれもステンレス製のダイキャスト・ボディで密閉性が高い上、PM11のカプセルには裏面からの音声信号を遮断する特殊機構が備えられており、通常のハイパー・カーディオイドよりもソリッドな録り音が期待できます。PM10に関しては、レバーでロックできるリム・マウントが付属しているのでPA用途に便利。もちろん通常のマイク・スタンドに取り付けて使用することも可能です。
C5の指向性はカーディオイド。ダイアフラムは0.5インチ径で、金を蒸着させた5μ厚のマイラーが使用されています。特性のバラツキを抑えるため、回路にはハンド・セレクトによるトランジスターが使われており、個体ごとに測定された周波数特性グラフが付属。ボディはソリッド・ブラス製で、プラチナ・フィニッシュです(写真①)。以上すべてのマイクにAMI製トランスフォーマーを惜しみなく投入。これは最近のビンテージ・クローン系ハイエンド・マイクにこぞって使われているものです。

情報量が多くクリアな音のC5
5kHz辺りの上がったPM10とPM11
それでは音を確認していきましょう。今回は、福島県の国際アート&デザイン専門学校のスタジオにてドラムを録ってみました。PMD7全体の印象としてまず驚いたのが、とにかく音がクリアだということ。これはオーバーヘッドに立てたC5のキャラクターによるところが大きいですね。筆者が普段使用しているAKG C414やNEUMANN U87と比較して、粒子が一段細かくザラつきが少ない印象。情報量が多く“別途設置したアンビエンス・マイクを混ぜているのでは?”と思うほど、空間が奇麗に録れます。決して温かい音ではありませんがスムーズで、変にギラついたところも無く、EQの引っ掛かりも良いです。
次にキック用のPM11をチェック。こちらはアタックが強調された派手めのサウンドです。低域も強調されていますが、5kHz辺りに出っ張ったところがあり、ベチベチとした成分がガツンと出てきます。サウンド・ホールにグリルのみを入れて設置したのですが、現在定番と言われているキック用マイクを打面から数cmのところに立てたような音が得られました。打面近くまで突っ込むマイキングには時間を要するので、サラッと立てられる位置でこの音が録れるのは便利ですね。
最後にスネア/タム用のPM10。こちらは用途の似ているSHURE SM57やSENNHEISER MD421などと比較して、出音の大きさが耳を引きますね。そしてこれらのマイクと同じく5kHz前後がかなり持ち上がっていますが、ザックリとした感じは全くありません。クリーンな特性のEQでブーストしたような上がり方なので、アタックが速く聴こえる印象です。また50Hzを谷の中心にして深めのディップがあるので、特に処理せずともキックとのすみ分けが図れます。付属のリム・マウントは可動域が広く、目的のポイントをストレス無く狙えますね(写真②)。

このPMD7というセットは、クリーンなドラム・サウンドが得意だと思います。アコースティックな音を的確にとらえたいとき、もしくは不要な倍音でストリングスなどの上モノが濁ってほしくないときに重宝するでしょう。サッと立てても既にトリートメントしたような音が得られるため、設置の時間が短縮できるのも利点。レコーディングのみならず、PAの現場などでも即戦力になると思います。



製品サイト:http://www.electroharmonix.co.jp
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年11月号より)