
付属の専用プレーヤーで動作
キー・スイッチやリバーブなどを実装
ハリウッドの映画音楽家など多くのミュージシャンに愛用されているVienna Instruments Seriesには、さまざまな楽器の組み合わせを収めたバンドル・パッケージがリリースされてきました。一例としては、基本的なオーケストラ編成のVienna Special Editionやストリングスを集めたVienna Dimension Stringsなどが挙げられ、いずれもライブラリーを再生するためのVienna Instrumentsソフトウェア(メイン画面)が付属しています。DAWや楽譜作成ソフトでVST/Audio Units/RTAS/AAX Nativeプラグインとして動作するほか、スタンドアローンでも使用可能。今回のVienna Single Instruments Seriesの音源にも付属しています。
Vienna Instrumentsソフトウェアを立ち上げると、最初に表示されるのが“BASIC VIEW”。各楽器のパッチが画面右側のプリセット・ブラウザーから簡単に呼び出せて、マトリクス・リストでその同属楽器(フルートであればピッコロなど)やソロ/アンサンブルを選ぶことができます(画面①)。

BASIC VIEWには鍵盤が備えられており、色の付いているところがキー・スイッチとなっています。これにより奏法を瞬時に切り替えられるわけですね。さらに細かくニュアンスを設定するには、画面右上の“Advanced”を開きます。するとベロシティや内蔵リバーブなどのパラメーターを調整できるため、その楽器にとって自然なフレージングでの演奏が可能になります(画面②)。

多彩な奏法が特徴のトランペット音源
太くてしっかりとした打楽器のサウンド
それでは冒頭で触れた3つの音源を使ってみます。肝心のサウンドは、どの音源も響きが極力抑えられておりドライな方向。自由に空間設定できるようになっています。
各音源を詳しく見ていきましょう。まずVienna Trumpet(B♭)は、オーケストラからポップス、ジャズまで幅広く使われるB♭管トランペットをサンプリングした音源。スタッカートからレガート、トリル、フォルテ、ピアノ、はたまたフラッターまで、まさに欲しい奏法が網羅されており、中でもレガートのリップ・スラーで滑らかに音が切り替わるのがとてもリアルです。その音色は非常に伸びやかかつ華やかなもので、高域に行くと少しピッチを探るようなニュアンスになるのが、より人間味を感じさせます。 次はVienna Drums & Toms。オーケストラを盛り上げるのに欠かせない打楽器ですが、この音源にはスネアやバス・ドラム、タム、タンバリンなど特によく使う楽器が収録されており、ロールやリム・ショットなどの奏法が選べます。また生身の演奏者がパーカッションをたたく場合、一発一発に必ず違いが出るものですが、例えばこの音源のスネアは右手用/左手用に個別のライブラリーを備えているため、微妙な鳴りの違いも表現可能。どの打楽器も太くてしっかりした音色なので、オケの中で埋もれることはないでしょう。特にバス・ドラムや太鼓は低域の存在感が強く、楽曲の迫力が増すこと間違いなしです。
Vienna Soprano Choirはソプラノ・クワイアを収録した音源。鳴らした瞬間にうっとりするような音を聴かせてくれます。発音は“ウ”と“ア”で、スタッカート/サステイン(持続音)/クレッシェンドなどを選択可能。サステインを選び半音で隣り合う音を鳴らしてみると、“今にも真っ暗な森の向こうから得体の知れない何かが近づいて来る”といったような緊張感が演出できます。
Vienna Single Instruments Seriesには、紹介したもの以外にも良質な音源がそろっています。ウィーンの演奏家をあなたの曲に登場させてはいかがでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)