「MACKIE. SRM450V3」製品レビュー:内蔵DSPで4種類の周波数特性を選べるPA用パワード・スピーカー

MACKIE.SRM450V3
MACKIE.のPA用パワード・スピーカー、SRMシリーズのバージョン3が登場。2ウェイ・モデルを5機種、サブウーファーを3機種、ポータブル式のフル・レンジ・モデルを1機種ラインナップしていますが、今回は高域に1.4インチ径のコンプレッション・ドライバー、低域に12インチ径のフェライト・マグネット製ドライバーを備えた2ウェイ機、SRM450V3をレビューします。

内蔵アンプの出力は最大1,000W
フィードバック・デストロイヤーを搭載


SRM450V3は、高域にピーク出力200WのクラスABアンプ、低域にピーク出力800WのクラスDアンプを備えており、バイアンプで駆動します。背面には2chの音声入力が配置され、ch1のマイク/ライン・インと、ch2のマイク/ライン・インもしくはライン・インL/Rを内蔵のミキサーで混ぜて出力することが可能。スルー・アウトは本機の音を別のスピーカーに送るためのもので、出力する信号をch1単体かch1+ch2のミックスの2種類から選べます。音声入力の上には、音響補正用のDSPスイッチを用意。PA/DJ/MON/SOLOの4つの周波数特性をプリセットしたスピーカー・モードやマルチバンド・フィードバック・デストロイヤーを使用できます。 

低域の量感に富みながらも
ボーカルの帯域が埋もれない音質


それでは実際に使用したインプレッションをレポートします。外形寸法は406(W)×663(H)×376(D)mmで、ほかの12インチ径スピーカーとそう変わらないように思うのですが、重量は16.8kgとなっており、持ち上げてみると思いのほか軽い印象。天板と左右の側板の計3カ所にハンドルが付いているので、運搬や設置が楽に行えそうです。エンクロージャーのデザインが丸みを帯びているのも安心感がありますね。次にCDの音を鳴らし、サウンド面を見ていきます。内蔵DSPのスピーカー・モードを使ってみたところ、PAモードは補正された感の薄い、比較的なフラットな特性。ボーカルの帯域がとてもスムーズに聴こえつつ、ベースのボトムも十分に再現されています。クセが少なく、バランスの良い音です。DJモードに切り替えると、低音がグッと前に出てきました。PAモードではやや聴き取りづらかったキックが見えやすくなった上、ベースのボトムに至っては腹に響く感じになります。12インチ径のウーファーからこれだけの低音が出せるのは驚きです。そしてこのDJモードでも、ボーカルの帯域が埋もれずに再生されます。続いてはSOLOとMONを使用。この2つはボーカル・マイクでチェックしてみました。使ったマイクはSHURE Beta 57A。背面のマイク/ライン・インには専用のゲイン・ノブが用意されているので、入力音量を簡単に調整することができます。SOLOモードから試してみたところ低域が適度にロール・オフされ、とてもマイルドな声質に。MONモードに切り替えると、マイクのゲインを高めに設定しても、高域のハウリングを回避することができました。とりわけ、ボーカルやアコースティック・ギターのモニターに便利なモードでしょう。スピーカー・モードに続いては、フィードバック・デストロイヤーをチェック。ほかのスピーカー製品にも同様の機能を持ったものがありますが、本機のフィードバック・デストロイヤーの良い点は、カットしたい周波数ポイントを設定しても、ある程度の時間フィードバックが持続しないとカットが始まらないところ。設定できるポイントは最大4つまでと絞られており、イコライジングが過度にならないのも良いです。むやみな音響補正により、かえって聴き取りづらくなるといった状況も回避できますね。そのほかリミッターを内蔵しているため不測の事態にも安心ですし、これらの機能をスイッチひとつでモード変更したりON/OFFできるので、操作も簡単です。今回はCDとボーカル・マイクを個別に使ってチェックしましたが、背面のライン・インL/Rから携帯音楽プレーヤーなどでオケを鳴らしつつボーカル・マイクを出すこともできますし、2つのマイク/ライン・インはいずれもハイインピーダンスに対応しているので本機をギター/ベース・アンプ代わりに使用することも可能です。ライブ・ハウスやクラブなどへのインストールもちろん、リハーサル・スタジオへの導入やミュージシャンの個人所有にもオススメできる製品です。
 
▲背面には、内蔵DSPによる音響補正機能や入力端子を装備。音響補正機能としては、PA/DJ/MON/SOLOの4つの周波数特性を選べるスピーカー・モード、カットする周波数ポイントを4つまで設定できるマルチバンド・フィードバック・デストロイヤーが備えられている。音声入力は2ch仕様となっており、いずれのチャンネルにもマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とそのゲイン・コントロールが装備されている。ch2についてはライン・インL/R(RCAピン)とスルー・アウト(XLR)、スルー・アウトの出力をch1単体かch1+ch 2のミックスにするか選べるスイッチを装備 ▲背面には、内蔵DSPによる音響補正機能や入力端子を装備。音響補正機能としては、PA/DJ/MON/SOLOの4つの周波数特性を選べるスピーカー・モード、カットする周波数ポイントを4つまで設定できるマルチバンド・フィードバック・デストロイヤーが備えられている。音声入力は2ch仕様となっており、いずれのチャンネルにもマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とそのゲイン・コントロールが装備されている。ch2についてはライン・インL/R(RCAピン)とスルー・アウト(XLR)、スルー・アウトの出力をch1単体かch1+ch2のミックスにするか選べるスイッチを装備
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年10月号より)
MACKIE.
SRM450V3
85,000円(1本)
▪スピーカー構成:12インチ径ドライバー(低域)+1.4インチ径コンプレッション・ドライバー(高域) ▪周波数特性:42Hz〜23kHz(−10dB) ▪最大音圧レベル:128dB SPL ▪クロスオーバー周波数:3kHz ▪指向性:90°(水平)×45°(垂直) ▪内蔵アンプ構成:クラスD/ピーク出力800W(低域)+クラスAB/ピーク出力200W(高域) ▪外形寸法:406(W)×663(H)×376(D)mm ▪重量:16.8kg