「MIKTEK CV3」製品レビュー:9段階の指向性切り替え可能なラージ・ダイアフラム真空管マイク

MIKTEKCV3
世界各国から厳選した高品位なパーツを集め、アメリカはナッシュビルにて数多くのマイクたちをハンドメイドで制作しているMIKTEK。筆者はこれまでにも同社のコンデンサー・マイクCV4とC7をチェックしてきたが、今回試すニュー・カマーは真空管コンデンサー・マイクのCV3。一体どんなマイクなのか、早速見ていこう。

デュアル1インチのダイアフラム
カプセルは0.4μm金蒸着の独自規格

まずはたたずまいから。長さ213mm×直径66mm、重さは742gと重厚で、作りの良さがうかがえる。外観は全体がグレー・ブラックに塗装されており、ややシックな雰囲気を醸し出しているのが特徴だ。色味以外はこれまでの同社製品と同じく、メッシュとボディの間の樹脂部分にモデル名、正面下部にブランド・バッジがあるなど、シンプルそのもの。そのほか本体裏のPADおよびハイパス・フィルターのスイッチ群はC7譲りだ。付属品は、過去に紹介したマイクと統一された仕様になっている。

カプセル回りはデュアル1インチのラージ・ダイアフラムで、0.4μmの金蒸着を施した5μmマイラーによって構成されるMK9を使用。CV4との相違点に注目すると、アンプにはAIMのカスタム・トランスが、あまたのビンテージ・マイクのごとく伸びやかな低域の振る舞いとクラシカル・サウンドを得る要として用いられている。心臓部である真空管には、厳選されたサブミニ五極管を使用。独自の高電圧サーキットで駆動させることで同クラス最高の性能を確保しているという。PS4と名付けられた電源トランスには9段階の指向性を可変できるスイッチを装備。これもCV4譲りだ。ここまでのところ、CV4とC7の良いとこ取りな風体だが肝心のサウンドはどうか?

90Hz辺りの深みと量感が顕著
高域は明りょう度が高くシャープ

CV4のチェック時同様、マイクプリのRUPERT NEVE DESIGNS Portico 5012につないでアコースティック・ギターに立ててみる。付属のスイベル、ショック・マウント双方を試してみたのだが、どちらもこの重量級のボディをしっかりと支え、取り回しに不安は無い。ストロークやアルペジオなどの奏法にて試聴した第一印象として、CV4のときは“ナチュラルかつスムーズ”、C7では“スムーズでカラッとしている”という表現でお伝えしたが、CV3の場合は“シャープ&クリア”。

細かく分析すると、低域は90Hz辺りの深みと量感が顕著で、200Hz辺りはブーミーになり過ぎず収まりがいい。中低域は音のキャラクターを決める500Hz近辺が出過ぎるともっさりし、足りないと音像が細くなってしまうが、程良く整理されており必要十分。中域である1〜2kHzのしんの部分はフォーカスがしっかり合っていながら張り出しがうまく収められて嫌みが無い。ここから伸びていく高域はくもり無く乾いており、その明りょう度はアメリカン・サウンドと表現するにふさわしい。各帯域の立ち上がりは速いが、それらをコントロールする存在としての真空管が上手に機能し、全帯域においてピーキーな部分が無く扱いやすい。真空管と聞いて“温かく太い”とイメージしがちだが、CV3の場合は音をとらえる反応とまとまりに真空管らしさを感じた。

次に、男女それぞれのボーカルでチェック。男性ボーカルを受け止める太さ、しんの強さは十分。女性ボーカルのきらびやかさを表現しつつ、子音の収まりが良かったのは好印象であった。後日、ドラムのアンビエンス用として使用してみたのだが、ややオフ気味にセッテイングしてもフォーカスが甘くならず、指向性を切り替えることでさまざまな収録環境に対応できるフレキシブルさはCV4の特徴と合致。これらの特徴からボーカル、アコースティック・ギター、ピアノ、ブラス、ドラム&パーカッション、ストリングスなどの各種生楽器と相性の良いマイクであると言える。

総合するとウォーム&シルキーなCV4、ソリッド&エッジーなC7との中間的なキャラクターという、やもすると安易に導いたと思われがちなインプレッションではあるが、それぞれの製品のすみ分けができている点で、MIKTEKの製品企画とその具現化能力の高さを思い知らされた。

サウンド&レコーディング・マガジン 2014年10月号より)

MIKTEK
CV3
120,000円
▪形式:真空管コンデンサー ▪指向性:9段階切り替え(無~単一~双) ▪周波数特性:20Hz~20kHz ▪感度:−35dBV/Pa ▪最大SPL:133dB ▪外形寸法:66(φ)×213(H)mm ▪重量:742g