重みのある上質なツマミやスイッチと
オールドNEVEを意識したカラーリング
まずは外観。同社の既存シリーズはパネルが白だったのに対し、本機はまさに往年のNEVEを思わせるような、青みがかったダーク・グレーのカラーリングが施されています。NEVEのコンプレッサーである33609/JDや、かつてコンソールの8014に実装されていた複合モジュールの1073などでおなじみの色です。古き良き時代のビンテージ・サウンドへの意識が見て取れます。パネルの構成は至ってシンプル。右の列の一番上部にあるのがEQ INスイッチ(ただしハイパス・フィルターはこのスイッチとは独立して機能する)。その左手にあるのがHF(高域)用のゲイン・コントロール・ツマミで±15dBのブースト/カットが可能です。すぐ下に並ぶ2つの小さいスイッチはHF用で、上は8/16kHzの帯域切り替え、下は8/16kHzのEQカーブをシェルビングかピーキングに切り替える仕様になっています。その右手にあるのはMF(中域)用パラメーター設定ツマミで200Hz/350Hz/700Hz/1.5kHz/3kHz/6kHzの6ポジションを選択可能。その下のMF HI Qスイッチで、MFのピーク・カーブ幅の広さを選択できます。その左手は±15dBのブースト/カットが調整できるMF用ゲイン・コントロール・ツマミです。さらに下にあるLF(低域)用のLOW FREQツマミは、35Hz/60Hz/100Hz/220Hzの4ポジションを選択できます。左手にあるLF PEAKのスイッチでEQカーブのシェルビング/ピーキングを選択でき、すぐ下のゲイン・コントロール・ツマミでは±15dBのブースト/カットが可能。その右手のHPFスイッチは、80Hzのローカット(12dB/oct)用です。以上が操作パネルのすべてです。実際に操作してみると、ツマミやスイッチは程良い重さで使いやすく、上質なものでした。
同社の特徴的な野太いサウンドが得られ
かかり具合は音楽的
初めに男性ボーカルに使ってみました。最も重要なローミッドの辺りを調整すると、筆者もニヤッとしてしまうほどに同社の特徴的な野太いサウンドに変化してくれます。本機においてMF/LF帯域に注目した場合、前述の通り700/350/220/200/100Hz辺りを選んで設定できますが、どこに設定してもいい仕事をしてくれます。まるで、ボーカリストの体調や力量までも操作するかのように、自然に肉付いてくれるのです。高域においても、ナチュラルで繊細な効き方が印象的でした。倍音やザラつき感を強調するというよりは、実音自体が変化しているように感じられるほどです。次はドラムに使用。ハイエンドの強調感が特に素晴らしく、無理なブーストは感じませんでした。タムの倍音など、要らない部分をカットしてみると、かゆいところに手が届くようなスムーズで音楽的な効き具合であることを実感しました。それが本機の特徴的な素晴らしさの一つでもあるのでしょう。EQの効き具合を表す周波数特性グラフを見て分かったのは、ブーストとカットにおけるQの幅、低域と高域におけるQの設定が違っていること。高域の方が低域よりQの幅が狭く、さらにブーストよりもカットの方が狭く設定されていました。これを見れば、音楽性に重点が置かれ、理にかなったEQを施せることが分かります。整理すると、不要な部分はピンポイントで削除可能で、中高域の楽器を想定してQ幅を狭くしてあり、低域のQ幅は普通に設定されている、ということでしょう。 ほかにもさまざまな楽器に使ってみましたが、どれも非常に効きが良かったです。あえて言うなら、原音を大きく変化させるようなワイルドな仕事は苦手かもしれないということくらいでしょうか。同社らしい上質な印象を受けました。