低域から高域まで抜けが良く
左右の分離に優れたマイク収音
外観で特徴的なのはショック・マウントを装備した着脱式XYステレオ・マイク。カプセルが防振ゴムを介して本体に固定されているので外部からの振動やハンドリング・ノイズを最小限に抑えられる。また別売りのM/Sマイクやガン・マイクも使用できる。出力端子は本体左側にステレオ・ミニでのライン・アウトとヘッドフォン端子を個別に装備。入力端子は本体下部にXLR/TRSフォーン・コンボのL/R入力を装備し、12〜48Vファンタム電源対応マイクプリを内蔵する。付属ステレオ・マイクの横にはライン・イン端子も装備。音は小さいが、確認用の小型スピーカーも裏側に内蔵している。メモリーは最大32GBまでのSD/SDHCカードを使用。アルカリ単三電池で約15時間の録音が可能だ。録音フォーマットはWAVとMP3で、WAVは16/24ビット、44.1/48/96kHzから選択可能となっている。96kHzはステレオ録音のみだが、4chの入力をL/Rにミックスすることもできる。H5はXYマイク(またはステレオ入力)+本体の入力×2で4tr録音が可能だ。単体ギター・アンプ・シミュレーターを使い、ステレオのモニター・スピーカーにH5のXYマイクを向け、L/R入力端子にはラインで接続。ビブラートやロータリー・スピーカーなどステレオ定位が分かりやすいエフェクトでギターを録音した。XY方式のマイクの音色は左右の分離感に優れながら中抜けすることもなく、低域から高域まで偏りがなく音抜けも良い。ここにライン成分を足していくと音は太くなり、輪郭はさらに明確になっていった。H5には6種類のプリセットから設定を選択するコンプレッサー/リミッター、空調ノイズなど低域の処理に効果的なローカットも内蔵。大音量のスタジオ演奏からホールでの静かな演奏まで幅広く使えそうだ。今回は試せなかったがライブの同録でエアーとラインの両方を録音すれば、臨場感のあるミックスが作れるだろう。リハスタでリズム隊をXYマイクで収録し、ボーカルなどをラインで入力すればちょっとしたデモも簡単に作れる。また、パンチ・イン/アウトはできないが、H5はダビングも可能だ。ダビングを繰り返すとその回数分だけオーディオ・ファイルが増えていく。あらかじめ曲のオケをファイルとしてSDカードに入れておき、リハスタでボーカルやギター・ソロなどを何テイクか録音して家で編集するという使い方もいいだろう。
140dB SPLの耐入力特性に加え
12dB低いバックアップを同時録音可能
H5がギタリスト向けと思わせる機能の一つがチューナー。通常のクロマティック/ギター/ベースのモードに加え、各キーのオープン・チューニングや、ジミー・ペイジでおなじみのDADGADもある。再生速度を遅くしたり、キーを調整して再生することも可能で、耳コピーにも最適だ。さらに、ほかのハンディ・レコーダーにはあまり無いのがバックアップ・レコード機能。44.1/48kHz WAVフォーマットでの使用時に限られるが、本体下のL/R入力に対し、オリジナルのファイルとは別に12dB低いレベルでバックアップ録音を行う。H5のXYマイクは140dB SPLという、結構な爆音でもひずみなくとらえるほどの高耐圧設計になっているが、万が一過大入力によりクリップしてしまった場合、ひずんだ個所だけをバックアップ・ファイルと差し替えればいいわけだ。最後にH5は4イン/2アウトのUSBオーディオI/Oとしても使える。DAWソフトSTEINBERG Cubase LEもバンドルされているので、パソコンさえあればこれだけでDAWシステムが構築できるし、APPLE iPadのオーディオI/Oとしても使えるということもあり、音楽制作はもちろん、映像、ネット配信など、すべてのクリエイターが1台持っていると便利に使えるだろう。