「PHIL JONES BASS Bighead」製品レビュー:オーディオI/Oにもなるベース専用ポータブル・ヘッドフォン・アンプ

PHIL JONES BASSBighead
以前、ライブ・ハウスに設置されていたPHIL JONES BASSのコンボ・アンプ、Briefcaseを使いました。5インチ径ユニットを2つ積んだコンパクトなキャビネットから、信じられないほど量感のあるベース・サウンドが得られたことを記憶しています。またクリアで癖の無い、ダイナミック・レンジの広いサウンドに驚き、その出会いから同社の製品は常に気になる存在でした。  今回紹介するBigheadは、オーディオI/Oとしても使うことができる、ベース専用ヘッドフォン・アンプ。コンパクトながら多機能で活躍の幅を持った本機は、多くのベーシストにとって心強い味方となりそうです。早速見ていきましょう。

iPhoneと重なるほどのコンパクトさ
デザイン性に優れた高級感ある筐体


本機は65(W)×25(H)×135(D)mmで、APPLE iPhoneとちょうど重なるサイズです。重量は240gと大変軽く、まさにモバイル・デバイスといった装い。筐体は、コンパクトながらも高級感があり、コントロール・ツマミ類はシンプルで分かりやすく、デザイン性にも優れています。フロント・パネルには、ボリュームとゲイン、EQのトレブルとベースが、それぞれ同軸2連ツマミ上に配備。トレブルは6kHz辺りを12時の位置に500Hz〜20kHzを、ベースは60Hz辺りを12時の位置に20Hz〜500Hzを約±18dBの範囲で調整可能です。また、ヘッドフォン用のアウトプット(ステレオ・フォーン)を1つ用意。本機は内蔵のリチウム・イオン・バッテリーによって8時間駆動しますが、バッテリーへの電源チャージはUSB経由で行います。USB接続時は、USBからの電源供給で作動。LEDインジケーターは、USB接続時(充電中)は緑に、内蔵バッテリーで作動中には青に、バッテリー切れ約10分前には赤に点灯します。 

16ビット/48kHzでの入出力が可能
専用ドライバー無しで即録音できる


初めにヘッドフォン・アンプとして、パッシブ4弦ベースのFENDER American Vintage Precision Bassでチェックしました。強弱やフィンガリングのニュアンスをとらえるダイナミック・レンジの広さは、同社ならではといったクオリティでしょうか。小型のプリアンプは、大抵の場合ノイズが気になるところですが、アンプ回路が優秀なためか本機では全く気になりません。EQは聴感上効きが良く、ベースのおいしいポイントを押さえているところがうれしいです。ハイは落ち着いた音で、ローの響きも十分なので、練習ではフラットの状態で問題ありませんでした。量感が欲しい場合はベースを少しずつ足していくとよいでしょう。アクティブの5弦ベース、MIKE LULL M5Vでも試してみると、プリアンプのレスポンスが良く、最低音のBでも音ヤセが無いことに驚きました。癖や偏りの少ないフラットな特性のプリアンプなので、ギターやピエゾ・ピックアップを搭載したウッド・ベースにも使えるでしょう。次にAUXインプット(ステレオ・ミニ)にAPPLE iPhoneを接続します。ポータブル・アンプとして音源を再生しながら練習することを想定し、ベースを弾いてみました。AUXインプットの音質もクリアな印象で、再現力やベース音との分離も良く、ストレス無く演奏できます。意外に良いなと感じたのは、やはり本機のサイズ感でしょう。APPLE iPhoneをBigheadの上にちょうど重ねられる上、付属のステレオ・ミニ・ケーブルの長さもちょうど良く、接続の際も安定感がありました。本機は1イン/2アウトのオーディオI/Oとしても機能し、最高16ビット/48kHzでの入出力が可能なので、APPLE Logic Pro Xを用いて録音チェックもしてみました。モノラル・インプットからベースを入力して、早速録音します。ベースのピックアップやパッシブ/アクティブ・タイプによっても出力が異なるため、ゲイン設定はセンターから調整することをお勧めします。今回はAmerican Vintage Precision Bassを使って、ゲインを1時辺りに設定すると適切なレベルで録音できました。録音後にコンプやEQなどのプラグインをかけることを想定し、フラットな状態で録音してみたところ、割と腰高で硬めの印象ですが、クリアかつアンプっぽさも感じました。芯がある音でEQなどのプラグインの効きも良かったので、曲によっては録音の段階からEQを積極的に使って音作りをしても面白いかもしれません。ちなみに、AUXインプットから入力した音はUSB経由で入力されないため、レコーディングすることはできません。レコーディングに使ってみた印象は、機能としては簡易的なオーディオI/Oですが、サウンドの実力は十分で、特にプリプロなどで活躍しそうです。スタジオでは24ビットでファイルをやり取りすることが多いので、24ビット対応になるとさらに需要が期待できそうですね。 いろいろと試してみましたが、一番印象深かったのは安心のクオリティでベース音を出せる、音ヤセの無いプリアンプだということです。そして、ベース・フレーズのアイディアがわいたらすぐに録音できる手軽さも便利でしょう。録音した音も申し分ない音質でコンピューターに残せるのも良いですね。 
▲リア・パネルの端子類。左から電源スイッチ、USB、AUXインプット(ステレオ・ミニ)、モノラル・インプット(フォーン) ▲リア・パネルの端子類。左から電源スイッチ、USB、AUXインプット(ステレオ・ミニ)、モノラル・インプット(フォーン)
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年9月号より)
PHIL JONES BASS
Bighead
オープン・プライス (市場予想価格:22,500円前後)
▪周波性特性:20Hz〜20kHz ▪オーディオ入出力:1イン/2アウト ▪最高ビット&レート:16ビット/48kHz ▪バッテリー駆動時間:約8時間 ▪最大出力:200mW ▪外形寸法:65(W)×25(H)×135(D)mm ▪重量:240g ▪付属品:ステレオ・ケーブル×2、USBケーブル