「IK MULTIMEDIA ILoud」製品レビュー:IRig回路搭載のBluetooth対応モバイル・パワード・スピーカー

IK MULTIMEDIAILoud
アンプ・シミュレーター・ソフトAmplitubeや、IRig HDをはじめとするAPPLE iPhone/iPadの周辺機器などで定評のあるIK MULTIMEDIAがリリースしたILoudは、単なるBluetooth対応スピーカーではありません。特徴は最大出力40Wという、そのスタイリッシュ&小型なサイズからは信じられないほどの音量と、内蔵バッテリーで最大10時間の連続再生ができるタフなところにあります。

脚色の少ないフラットな音質
リスニング/モニター用途に両対応


バッテリー駆動もできるコンパクトなボディ+Bluetooth対応のステレオ・パワード・スピーカー、それがILoudです。さらに、ギターやダイナミック・マイクの入力信号を外部iOSデバイスのアプリで処理できるIRig回路も装備しています(後述)。フロント・パネルはiPadをほんの少し大きくした程度で、厚さも6cm、重量は1kg足らず。片手でも楽に持て、リュックやバッグなどにも余裕で入るサイズです。実物を手にすると“40Wも出るの?”と疑ってしまいますが、BluetoothでiPhoneを接続し本体中央のボリューム・ノブを回していくとホーム・ユースならば“もう十分です!”というぐらいまで余裕で音量が上がります。ちなみにボリューム・ノブはロータリー・タイプ。左に回して赤いリングが点滅すれば最小、右に回して同じように点滅すれば最大というおおらかな仕様で、音量表示などはありません。気になる音質は、さすがに左右のスピーカーの間隔が狭いのでステレオ感は薄いですが、基本的に誇張や脚色の少ないフラットな音質は、リスニングだけでなく音楽制作時のポータブルなスタジオ・モニターとしても十分使用が可能です。薄く小型ながらも両側にそれぞれ3インチ・ネオジム・ウーファー+3/4インチ・ネオジム・ツィーターを備え、バイアンプ方式で駆動。内蔵DSPによるタイム・アライメントなどのチューニングが効いているのか、位相が良くまとまりのあるサウンドです。スタジオ・モニターとしては細部をチェックするというよりも、全体的な印象などを把握するのに向いていると思います。個人的にとても気に入ったのが、離れたところで聴いても音像の変化が少ないところ。ミックスの途中で一度耳をクール・ダウンさせて、全体を眺めるように聴くのにうってつけです。またリチウム・イオン充電池を内蔵し、パワー・マネージメント・システムにより長時間の駆動ができるのもポイントで、最長で10時間、フル・ボリュームでも3時間の連続再生が可能です。野外でも自宅内でも場所を選ばずリスニングできるのはなかなか新鮮で楽しい体験でした。 

外部iOSアプリをインサートして
ギターやマイク・サウンドの処理が可能


ILoudのもう一つの特徴は、前述したIRig回路を搭載している点です。これによってギターやマイクをiOSデバイスに入力できるわけですが、本機の場合、リア・パネルにあるGUITAR/MIC端子にギターやダイナミック・マイクをつなぎ、同じくリアにあるINPUT端子に付属の4ピン・ミニ・ケーブルでiOSデバイスを接続することでセッティングが完了。そしてiOSデバイスで同社のアプリAmplitubeなどを起動すると、ILoudに入力したサウンド(ギターなど)がAmplitubeで加工され、そのサウンドがILoudに戻ってスピーカーから鳴らされることになります。信号の流れとしては、4ピン・ミニ・ケーブル1本でILoudにiOSデバイスがインサーション接続されるという状態です。注意点としては、本機のGUITAR/MIC端子にギターやマイクをつないだけでは、ILoudから音は出ません。GUITAR/MIC端子に入った信号はINPUT端子に送られるので、そこに外部iOSデバイスをインサートして戻ってきた音が鳴る仕様です。もしハードウェアのアンプ・シミュレーターなどを使う場合は、GUITAR/MIC端子ではなくINPUT端子へ直接接続してください。またこのINPUT端子はライン入力も兼ねているので、外部プレーヤーを物理的につなぐ場合もここに入力することになります。なお、INPUT端子の入力とBluetoothの入力は同時使用が可能なので、Bluetooth経由でバック・トラックを再生しながら、ボーカルやギターなど演奏して鳴らすといった使い方もできます。 チェックしていて何より感心したのが、口径の小さなスピーカーが鳴っているとは思えないほど余裕を感じる音像と、リバーブなどが自然な広がりを持って聴こえることです。スピーカーのポテンシャルが最大限に発揮されたサウンドと言えるでしょう。リスニングはもちろん、ギターやマイクをつないで、さらには小規模のPAでも十分に活躍できる守備範囲の広いスピーカーです。 
▲リアの入出力端子は、左から外部iOSデバイスへのセンド&リターン/ライン入力兼用のINPUT(4ピン・ミニ)、GUITAR/MIC(フォーン) ▲リアの入出力端子は、左から外部iOSデバイスへのセンド&リターン/ライン入力兼用のINPUT(4ピン・ミニ)、GUITAR/MIC(フォーン)
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)撮影/川村容一(リアのみ)
IK MULTIMEDIA
ILoud
オープン・プライス (市場予想価格:37,980円前後)
▪周波数特性:50Hz~20kHz ▪スピーカー構成:3インチ・ネオジム・ウーファー×2+3/4インチ・ネオジム・ツィーター×2 ▪アンプ出力:LF=16W×2、HF=4W×2 ▪外形寸法:250(W)×160(H)×60(D)mm ▪重量:1.33kg