「APHEX IN2」製品レビュー:老舗APHEXによるクラスAマイクプリ搭載のUSBオーディオI/O

APHEXIN2
APHEXと言えば、筆者にとってはエキサイターの代表格という印象で、DAWとプラグインが主流になる前は大変お世話になっていたものです。老舗のAPHEXが、オーディオ・メーカーとはいえ群雄割拠のオーディオI/O市場に参入したというのは、戦えるだけのセールス・ポイントを持っているということの表れなのでしょう。早速その実力を見せてもらうことにします!

重量感のあるアルミ・ボディ
分かりやすい操作子のレイアウト


まずは、製品の外観。これについては正直、今時のオーディオI/Oとしては質素な印象でした。ただし、素材は安価なプラスチックではなく肉厚のアルミで、持ってみるとずっしりとした重量感があります。内部に使われたシールドなどに、ノイズ対策がしっかりと採られているのでしょう。次に、入出力部分を見ていきます。アナログ2イン/2アウト仕様で、入力端子はリア・パネルにXLR×2、フロント・パネルにHi-Z対応フォーン×2がスタンバイし、両者同時につないだ場合はフロントのフォーンが優先されます。出力端子はリアにフォーン×2を装備。またS/P DIFデジタル入出力(コアキシャル)も1系統備えるほか、MIDI IN/OUT×1、ヘッドフォン・アウト×1を用意しています。コンピューターとの接続はUSB 2.0で行い、Mac/Windowsの両方に対応。Mac OSX(10.5以降)であればドライバーのインストール無しで使えます。量子化ビット/サンプリング・レートは24ビット/192kHzまでサポートしていて、気になるマイクプリはクラスA回路構成による高音質仕様。トップ・パネルの右上にはマイクプリ2系統のインプットそれぞれに対応する操作子が同じ配列で並び、分かりやすい配置です。操作子は上からゲイン、+48Vファンタム電源、—20dBのPAD、ボーカルやナレーションで低域ノイズをカットするための75Hzローカット・フィルター・スイッチがあり、最下部にはマイクの過大入力によるひずみを抑えてくれるオプティカル・コンプレッサー(後述)を配備。左側のメインのボリュームにはMONOとDIMスイッチが付いていて、スタジオのコンソールに倣った仕様です。 

鋭いアタック感がリアルに伝わる出音
内蔵コンプも自然な効きで好感触


では音質をチェックしていきましょう。マイクにNEUMANN U87AI、DAWソフトにABLETON Live 9を用意し、GRACE DESIGN Model 101+AVID HD I/Oと比較してみました。各オーディオI/Oからの出力はSSL X-Deskに立ち上げてモニターします。まずは24ビット/48kHzの音源を聴くと、音の立ち上がりや左右の位相、ノイズ特性などどれをとっても素晴らしい音質で、HD I/Oに引けを取らない印象です。それどころかスネアの鋭いアタックは、顔にバチンと衝撃が来るようでした。シンセ・パッドはしっかりと広がり感があり、ボーカルは中央での存在感が心地良く、空間も表現されています。HD I/Oとの違いは、本機の方が超低域がわずかに控えめなところです。96kHzの音源を聴いてみると、音像が一段と大きくなり、スピーカーの空間が広がりました。次にボーカルとエレキギター、アコースティック・ギターを48kHzで録音し、今度はAVID Pro Tools 11にインポートして比較。Model 101はハイファイなマイクプリとして有名なので、本機のマイクプリと比べると超高域の抜け感にこそ違いが出ましたが、それ以外はほぼ互角。同価格帯のオーディオI/Oと比べても頭一つどころか二つくらい抜き出るほど音質が良かったです。声の立体感、ギターのアタック音、ボディの鳴りなど、余すところ無く拾っています。75Hzのローカットを試すと、ボーカルの吹かれ具合やエアコンなどのルーム・ノイズをいい感じに抑えてくれました。最後に内蔵コンプもチェック。乱暴に大きな音に設定してみましたが、アタックがパコンとつぶれる感じも無く、自然にレベルを抑えてくれます。その後も96kHz/192kHzとサンプリング・レートを上げて録音するたびに音像が力強くなり、この価格帯のマイクプリとしては最強な印象でした。 搭載しているマイクプリは本気のプロ・レベルです。飾りは無くとも、本物の音質を手に入れたいという人にお薦めできる一品でしょう。 
▲リア・パネルの端子は左からマイク・イン(XLR)×2、アウトプット(フォーン)×1系統、S/P DIFイン/アウト(コアキシャル)×1系統、MIDI IN/OUT×1、USB 2.0 ▲リア・パネルの端子は左からマイク・イン(XLR)×2、アウトプット(フォーン)×1系統、S/P DIFイン/アウト(コアキシャル)×1系統、MIDI IN/OUT×1、USB 2.0
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)
APHEX
IN2
オープン・プライス (市場予想価格:63,000円)
▪接続タイプ:USB 2.0 ▪オーディオ入出力:4イン/4アウト ▪最高ビット&サンプリング・レート:24ビット/192kHz ▪マイクプリ数:2 ▪最大入力レベル:ー2dBu ▪最大出力レベル:+21dBu ▪外形寸法:151.1(W)×67(H)×141(D)mm ▪重量:770g 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.5以降 ▪Windows:Windows Vista以降