これまでもトラック・メイカーのツボを突き、創作意欲を駆り立てる革新的なサウンドを提供してきたSAMPLEPHONICS。今作はアコースティック楽器を中心としたブレイクス系のサンプルを約 1.7GB収録しています。“アコースティック楽器” とはいえ、一通り試聴して案の定にやけてしまう ほど楽器選び、フレージング、鳴らし方、空気感 が、どれを取っても良い意味で“普通”ではなく “使える”スレた音がそろっています。 まず何と言ってもプリペアド・ピアノが収録されている点には胸が躍りました。プリペアド・ピアノ とは、ピアノの弦のすき間などに紙やペン、鉄くずなどの異物を挟んで雑音やパーカッシブな音を付加する、現代音楽的な手法なのですが、学生時代、ピアノにフォークやスプーンを差し込み録音しまくる妙な日々を送っていた私にとって、この手法はロマンでありソウルそのものなのです。少々言い過ぎましたが、このご時世なかなかそういう手法を試すのは難しいかと思います。しかし本作にはピアノの新しい世界を垣間見ることができるその奏法を使ったフレーズがさまざまなテンポ／キーで収録されているので、楽曲のスパイスとして気軽に取り入れられます。そのほか、表情豊かに演奏されたクラリネット、中国の伝統楽器である古筝（グーチョン）など６種類のコンストラクション・キット、上質なブレイクビーツなどのドラム・ループ、そして単発素材が多数収録されていて、アイディアを生み出すヒントやマンネリ化したトラックへの新しいアプローチになることでしょう。対応BPMは106～160ですが、すべての素材において空気感が素晴らしいので、BPMの異なる楽曲にもカット・アップで取り入れたり、単発素材を組み込んだビート・メイクをすることで、よりグルービーなアレンジが構築できそうな、そんな予感がする素敵なサンプル・ライブラリーに仕上がっています。
