コンプレッション・ドライバーに
ウェーブガイドを装着し指向性を制御
CWT128は、8インチ径の低域ドライバーと1.5インチ径のコンプレッション・ドライバーを2発ずつ備えた2ウェイ・スピーカー。ネットワーク内蔵で、クロスオーバー周波数は1.5kHz。許容入力は450W(8Ω)なので、音圧は十分だろう。2発のコンプレッション・ドライバーにはそれぞれCWT(Crossfired Waveguide Technology)という独自の指向性制御を施したウェーブ・ガイドが装着されており、本機最大の特徴である160°という水平指向性を実現。複数台のスピーカーでエリア・カバーする必要のあった環境でも台数を減らせるため、スピーカー同士の干渉を抑え均一なサウンドを提供しやすくなっている。本機を目にしたときにまず印象的だったのが力強い外観、そしてドライバー径からは思いもよらないほど容量に余裕のあるエンクロージャーだ。素材は厚さ12/15mmの堅木合板で、Dura Flex塗装で仕上げられている。こうしたフィニッシュはツアー向けスピーカーにもしばしば施されており、熱や摩擦、経年変化に強い。耐久性/耐候性の持たせ方に、同社ならではの信頼性を感じる。外形寸法は250(W)×810(H)×300(D)mm、重量は27kgで、カラー・バリエーションとして黒と白をラインナップ。設置方法に関してはスタッキングも可能だが、エンクロージャーのトップ/ボトム/サイド/リア・パネルにサスペンション・ポイントがあるのでリギングも行える。リアにはネジ止めパネルがあり、中にはパワー・アンプを接続するためのスピーカー・ターミナルがある。ハイインピーダンス接続を可能にする内蔵トランスへとつながった端子もターミナル内に標準装備されており、さまざまな環境に対応可能だ。また、ネジ止めパネルにはHEYCO製のブッシングが備えられているので、不意な引っ張りなどによるケーブルの断線を防いでくれる。
押し出し感のある中域と
タイトでしっかりとした低域
本機は仮設現場向けのスピーカーではないため、弊社スタジオで台の上に置き、十分な出力のパワー・アンプを接続しテストしてみた。まずはマイクを使い、ワン・ツーでチェック。抜けの良いクリアな音質で、パワーも相当なものだ。続いて、コンピューターの中の音楽ファイルをオーディオI/O経由で再生。押し出しの良い中域と、タイトでしっかりした低域はさすがのJBLサウンドだ。個人的には100Hz以下がもう少々欲しい印象だが、低域ドライバーが8インチ径ということ、そして固定設備という用途を考えれば十分だろう。続いて、本体正面から真横近くまでの範囲を動き回り、水平方向の指向性をチェック。スペックにある通り、本体の真横付近でも中〜高域が伸びており、真横であっても10kHz以上が再生されていた。このようにして明りょう度を維持しているのは従来のスピーカーと大きく違う部分で、CWTの効果が発揮されている。200Hzと5〜600Hz、1.8kHz辺りに若干のピークが見られたが、恐らく設置状況によるものだろう。リギングすれば問題なさそうだ。低域は120Hz辺りからなだらかに減衰していく印象。クロスオーバー帯域での干渉は感じられなかった。本機の常設が想定される環境としては、ホールやライブ・ハウス、会議場といった屋内、そしてスポーツ・テーマ・パークなどの屋外が挙げられる。そのほか、個人的には飲食店のスピーカーとしても良いと感じる。よくあるのが、常設しているスピーカーが通常営業のBGM音量のみを想定したもので、結婚式の2次会やパーティが入ったときに音量が不十分というケース。本機を常設しておけば、スピーチはもちろん、パワー面から考えて楽器演奏などを伴った軽い余興にも対応できそうだ。またカバー・エリアが広いことから設置台数を減らすことができ、それによりパワー・アンプやプロセッサーの台数も絞れるため、システム全体のコスト・パフォーマンスも高まるだろう。