「TASCAM UH-7000」製品レビュー:単体マイクプリとしても使える4イン/4アウトUSBオーディオI/O

TASCAMUH-7000
NAMMショウでも話題になり、各メディアで既に大きく取り上げられているTASCAMの新しいオーディオ・インターフェースUH-7000をチェックします。24ビット/192kHzに対応し、高級感のあるボディのデザインと音質重視の回路設計は、国内メーカーのプライドを感じさせてくれるもの。早速レポートしてみたいと思います。

AES/EBUデジタル入出力を装備
ソフト上のミキサー・パネルと本体が連動


まずは外観。精密な音量調整ができる大口径ボリューム・ノブに20ドットLEDピーク・メーター、肉厚のアルミ・ボディに丸い脚が付いているその落ち着いた雰囲気は、まさにオーディオ機器然とした印象を与えてくれます。手に持ってみると程良い重量感があり、リュックに入れて気軽に持ち運ぶというよりはホーム・スタジオにどっしりと据え置きたいコントロール・センター的な扱いに適した存在感です。電源は3Pインレット・タイプのACケーブルが使えるようになっており、電源アダプターやバス・パワーを使わない仕様からも音質に対する意気込みを感じました。オーディオの入出力はアナログ/デジタル(AES/EBU)でそれぞれ2イン/2アウトとなっており、両者を併用することで4イン/4アウト仕様になります。アナログのインプット端子はライン/マイク(共にバランス仕様)を選択可能。アウトプットはリンク・ライン機能を有効にするとヘッドフォン・ボリュームつまみによって音量を調整できるようになります。ダイレクトにパワード・スピーカーを接続できるのがいいですね。自分のパソコン(Mac)に専用ドライバーをインストールしてUSB 2.0経由で接続。オーディオ・ドライバーはASIO(Windows)/Core Audio(Mac)に対応しています。USB接続をせずに起動するとスタンドアローンのマイク・プリアンプとしての使用も可能です。その際、アナログ出力からはAD/DAを経由した音が出力されます。ドライバーと同時にインストールされるMixer Panelによって細かい調整ができるのはTASCAMのほかのオーディオ・インターフェースにも採用されている仕様です。DSPベースのミキシング処理は低レイテンシーで、デジタル・エフェクトも搭載されています。フロント・パネルの“MIXER PANEL”ボタンを押すだけでソフト上のMixer Panel画面を呼び出すことができるのは意外と便利な機能でしょう。ミキサーの操作も皆さんが慣れ親しんでいる一般的なオーディオ・ミキサーとほぼ変わりません。また2つのチャンネルをステレオ・リンクさせて扱うこともできます。画面上のSENDつまみはリバーブへの送りを調整するためのものです。また画面上部にあるMON MIXのスライダーによってマルチトラック録音時にコンピューターから戻ってきた音とインプット端子から入ってきたダイレクト・モニタリングの音とのバランスを調整することができます。これを活用すればダビングの時にレイテンシーを最小限にしてモニターすることができるでしょう。 

新設計のHDIAマイクプリを搭載
中高域〜高域のつながりが素晴らしい


当然ながら音質に関する設計についても相当なこだわりが見受けられます。クロック・ジェネレーターにTCXO(温度補償型水晶発信器)を搭載し、精度±1ppmを実現しているそうです。コンバーター部分ではA/Dに定評のあるBURR-BROWN PCM4220を、D/Aにも同社のPCM1795を採用しています。そして新設計のHDIAマイク・プリアンプを搭載。金属皮膜抵抗やフィルム・コンデンサーを使った回路はとにかくこのクラスでは申し分ないスペックでしょう。実際にリスニング・チェックを行うため、スタジオでドラムにコンデンサー・マイクを立ててレコーディングしてみました。第一印象はスペック通りあいまいさが無く、聴きたい音がちゃんと聴こえてくる安定感を持っているということ。この価格帯の製品にありがちな、高域の下品な派手さやローエンドの薄っぺらさは全くありません。中高域から高域へのつながりがスムーズで、スネアのアタックのスピード感もうまく表現されています。ステレオで録ったときの空気感やシンバルのピーク感もうまくまとめられていると感じました。SN比も117dBと良く、素晴らしい音質! どんなシチュエーションにも対応可能といった印象で、個人的に“アリな音!”と言って間違いないでしょう。全体的に派手さは少ないようですが、その分重心がやや低めに感じられるサウンドなので、好みが合う人は導入しやすいかもしれません。中域の密度が濃いため、ハイエンド・オーディオのようなリッチな音質を追求しているのかなというイメージも持ちました。変なクセが無いのでアコースティック音楽からダンス・ミュージックなんかでもいけるオールラウンダーな製品だと思います。海外メーカーの分かりやすい傾向のストレートな表現とはまた違った、繊細な視点を持ってサウンドの高級感とリアリティを追い求めた一台という印象です。いい意味でのナチュラルさも兼ね備えています。 オーディオ・インターフェースを選ぶ際、“MIDIインターフェース機能は必要無い”“アナログで2chあれば十分”“とにかく音質にこだわりたい”といった人にとって、本機は選択肢に入れるべき製品だと思います。要チェックです。 
▲リア・パネル。左上からライン・イン(フォーン)×2、マイク・イン(XLR)×2、アウトプット(XLR)×2、AES/EBUイン&アウト(XLR)、USB ▲リア・パネル。左上からライン・イン(フォーン)×2、マイク・イン(XLR)×2、アウトプット(XLR)×2、AES/EBUイン&アウト(XLR)、USB
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年6月号より)
TASCAM
UH-7000
オープン・プライス (市場予想価格:65,800円前後)
▪接続タイプ:USB 2.0 ▪周波数特性:20Hz〜80kHz(+0.005/−0.16dB) ▪オーディオ入出力:4イン/4アウト ▪最高ビット&レート:24ビット/192kHz ▪外形寸法:214(W)×81.2(H)×233(D)mm ▪重量:2.2kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.6.8以降 ▪Windows:Windows 7以降