「ARTURIA Microbrute」製品レビュー:多機能なオシレーター部&パッチ対応の小型アナログ・モノシンセ

ARTURIAMicrobrute
Microbruteは、非常にコンパクトでありながら本物のアナログ・サウンド、DAWとの簡単な接続、さらに自由度の高いモジュレーション・マトリクスを備えたモノフォニック・シンセです。2012年に発売された同社のMinibruteを小型化した製品ですが、本機独自の機能も追加されています。早速詳細を見てみましょう。

Ultrasaw/Metalizer/Overtoneなど
各波形に独自のノブを搭載


まずは外観。25鍵のミニ鍵盤と多数のノブ/スライダーで構成されたトップ・パネルが相当かわいいです。このサイズでありながら、隣り合ったノブを触るときでも指同士が邪魔にならないように設計されていますし、大きめのピッチ/モジュレーション・ホイールやオクターブ切り替えスイッチも扱いやすいです。オシレーターはノコギリ波/矩形波/三角波/サブオシレーターをON/OFFではなくノブで混ぜるタイプ。これだけで多様なサウンドを作ることができます。が、やはり各波形に搭載されたUltrasaw/Pulse Width/Metalizerなど、波形自体を劇的に変化させていく機能無しに本機は語れないでしょう。例えば、複数のノコギリ波を重ねた効果が得られるUltrasawはオシレーターの曇りを取り払うような、フィルター全開時より“もう1段階昇る”ようなサウンドが作れます。矩形波のPulse Widthはシンセではおなじみの機能ですが、これだけ小型のシンセにも備わっているのはうれしいことです。さらに三角波に付属するMetalizerはその名の通り金属的なサウンド効果を加えます。これによって単純なアナログ・シンセでは出すことの難しい金物系やパーカッシブな音までカバーします。さらに注目は、このMicrobruteのために新たに開発されたOvertone機能! これが本当に素晴らしいです。サブオシレーター用のパラメーターで、これを回していくと基音に対する倍音を付加してくれます(1オクターブ下〜5度上を連続可変で選択)。サブオシレーターは単純に鳴らせば低域を補完するものですが、Overtoneで倍音を付加していけばジリジリとひりつくようなエッジーな音を作ることもできます。陳腐な表現で恐縮ですが、ここまで電気が通っている感じのシンセは最近あまり無かったかもしれません。続いてフィルターですが、シンセの肝となるこの部分も一筋縄ではいきません。Minibrute発表の際にシンセ好き界隈に衝撃が走った“STEINER PARKERフィルター”を本機も搭載。さらにローパス/ハイパス/バンドパスとしっかりマルチモードです。そして最後段のアウトプットには、Minibruteでも好評のBrute Factorツマミをもちろん装備。この機能は“ヘッドフォン・アウトを外部入力に突っ込んでフィードバックさせる”という従来のアナログ・シンセの裏ワザ(?)的なサウンドをノブ1つで付加できる機能です。フィードバック・ループを作って音を暴れさせるわけですからさまざまな変化が期待できます。ちなみにマニュアルの解説には“ダーティ”“かろうじてコントロール可能”“警告!”など非常にソソる単語が並んでいます。 

CVコントロールに対応し
外部モジュラー・シンセとの連携も可能


モジュレーション周りも非常に柔軟です。1系統のLFOツマミやエンベロープ・スライダー(ADSR)の搭載はもちろん、パネル右上のパッチ式モジュレーション・マトリクスを用意することで任意のルーティングが可能。例えば、MetalizerのかかりをLFOで揺らしながらエンベロープでピッチを下げれば、メタリックなシンセ・パーカッションがすぐに作れちゃいます。また何とステップ・シーケンサー(全音符〜32分音符)まで搭載。これらを組み合わせ、複雑にモジュレートしながらきらびやかな高音が時折聴こえつつ、サブオシレーターの倍音が変化することで音の“重さ”まで変わっていくようなサウンドを作ることができました。ちなみにモジュレーションの入出力はCV仕様なので、モジュラー・シンセとの接続も可能です。さらにリアにはCV/Gate出力やGate入力に加え、MIDI IN、オーディオ入力(フィルター前段)、さらにUSBまで装備。USBではMIDIデータの送受信のほか、専用ソフトからベンド・レンジなどの基本設定を行うこともできます。過去のアナログ・シンセを踏襲しつつ、ほとんどすべての個所で新しい試みがなされたMicrobrute。サイズや価格からは想像もできないサウンドが入手できます。DAWの中だけの作業に飽きてきた方の一台としても、アナログ・シンセの可能性を広げる最新の一台としてもお薦めです。  
▲リア・パネルの端子群。左からCVアウト(ピッチ)、Gateアウト、Gateイン(以上モノラル・ミニ)、ライン・アウト(フォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・ミニ)、入力レベル・ツマミを挟んでオーディオ・イン(フォーン)、MIDI IN、USB ▲リア・パネルの端子群。左からCVアウト(ピッチ)、Gateアウト、Gateイン(以上モノラル・ミニ)、ライン・アウト(フォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・ミニ)、入力レベル・ツマミを挟んでオーディオ・イン(フォーン)、MIDI IN、USB
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年5月号より)
ARTURIA
Microbrute
45,000円
▪オシレーター・ミキサー:ノコギリ波、矩形波、三角波、サブオシレーター ▪エンベロープ:1(ADSR) ▪LFO:1(ノコギリ波、矩形波、三角波) ▪鍵盤数:25 ▪モジュレーション・マトリクス:<CV Out>ENV/LFO、<CV In>Metal/Saw/Sub/Pitch/Filter/PWM ▪外形寸法:325(W)×60(H)×221(D)mm ▪重量:約2kg