CPM110Pは3モードを用意
マイクプリも備え単体でのPAも可能
CPM110/CPM110Pのエンクロジャーは、10インチとして全く大きいとは感じさせないサイズ感です。ハンドルが本体背面に1つ付いており、軽いので両手に1本ずつ持って運んでも無理がありません。フロント・グリルはスチール製のハニカム・パンチング・メッシュで、1.6mm厚のしっかりしたもの。ステージで踏まれても安心ですね。
付属品は電源ケーブルに加え、何とつり下げ用のヨークが付いてきます。普通はヨークだけでも数千円は下りませんから、またもや驚きです。つり下げるために用意されたM10のネジ穴が両サイドにあるのですが、片方はネジでふたを開けるとスタンド・マウントになっています。オプション無しでウェッジ/つり/スタンド立てと1台で3度おいしい作りになっているのが魅力的です。
次にCPM110Pの仕様を見ていきましょう。入力端子(XLR/フォーン・コンボ)は2系統装備。各入力にはLINE OUTに加え各入力をサミング・ミックスしたMIX OUTも装備しており、このMIX OUTのみVOLUMEノブと連動。ユニットからもこのMIX OUTと同じ音が出ます。さらにMIC/LINE IN Aにはマイクプリも搭載し、単体での簡易PAも可能になっています。
アンプ部はMUSIC/FLAT/LOW CUTという3モードをシーンに合わせて使い分けることができます。FLATはその名の通り手を加えない状態。LOW CUTは聴感上おおよそ100Hz付近をハイパスした感じ。驚いたのはMUSICで、今まではこうしたプリセット、聴く前からナメていました。しかしSHURE SM58でマイク・チェックすると、とがりがちだったハイミッドやローミッドがスッキリ、高級感のある音になっています。“EQしなくてもいいんじゃない!?”というほどの音質です。アンプ部のLEDは、モード・セレクトがオレンジ、電源がブルー、入力インジケーターがグリーン、クリップがレッドです。ステージ上ではブルーのLEDの照度が少しキツいので、テープなどでマスキングすることをお勧めします。
低域に押し出し感のあるCPM110P
CPM110は伸びやかな高域
ではCPM110Pから音を聴いてみます。張らない声でミキサーのレベル・メーターを既定値前後まで振らせます。本体のボリュームは3時越えくらいにして実際の使用で適正レベルではないでしょうか……お! いい感じ。音に同軸のピタッとした気持ちよさがあり、手ごろな製品にありがちなハイ上がりなどのクセがありません。またこの時点でハウリングしそうな気配が全く無いんですね。ここからフルまで音量を上げても余裕があり、声を張ってもクリップしません。タフですね。
では音楽ソースではどうでしょう。既定レベルをフルレンジで鳴っているR&BのCDで試してみました。本体のボリュームは3時くらいで、ベース&キックでややクリップが見受けられるようになりました。そのくらい音量が入ってくるとひずみがちになります。ただし、ここまでで十分にステージで使える基準をクリアしています。優秀ですね。電流は既定レベルのフル・ボリュームで0.5A程度。ステージで10台使ってもわずか500Wなので、電源の用意も安心です。
続いてパッシブのCPM110には、価格帯に見合ったエントリー・モデルのパワー・アンプAMCRON XLS2500でチェックしてみました。アンプで鳴らした音の印象は、落ち着きがありCPM110Pより高域に伸びがある感じです。一方低域に関しては、パワードの方が量感/押し出し感が上に感じました。
次に両機種をグラフィックEQを使ってチューニングしてみました。CPM110は5ポイントを調整しました。下から125Hz/−1.5dB、160Hz/−1dB、1kHz/−1.5dB、2.5kHz/−1dB、5kHz/−1dB。一方のCPM110Pは6ポイントの調整で、160Hz/−1.5dB、315Hz/−1.5dB、1kHz/−2dB、1.6kHz/−1.5dB、2.5kHz/−2dB、8kHz/−1dBという結果となりました。どちらも共通して言えるのは、至ってクセの無いサウンドだということ。モニターとして非常に使いやすいと思います。ミュージック・ソースを混ぜた場合のマイクの鳴り方も、分離感があり優秀でした。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2014年2月号より)