毎回さまざまなシンガーとドン・ゴライアスがコーラスなどで参加するボーカル・ライブラリ・シリーズの４作目は、ダブ／レゲエ〜ダブステップ向け素材集。レゲエ・ボーカル、特にトースティングと呼ばれるラップは楽曲に強力なインパクトを付加することができる反面、声質、フロウ、加えてジャマイカなまりなどが“本物”でないとその効果は期待できませんが、本作はゴライアス本人に加え、なんと1970年代ルーツ・レゲエDJのアイコン中のアイコン、Uロイとディリンジャーの２人、またラガ・ダンス・ホール界からはJr.Cat、Jr. Tigerの素材を収録しています。各アーティストごとにループ素材、長尺のリード、ワンショット系シャウト、フレーズなどが収められていますが、一番使えるのは長尺のリードです。ゴライアス本人のボーカルはこのジャンルの雰囲気をよくとらえているものの、凡百の素材集の域を出ていません。しかし先に挙げた２人は本物。どこをカットアップしても十分な“レゲエ印”となる存在感です。ノーエフェクトなので、テープ・エコー系のプラグインでビンテージ素材感を出すもよし、クリアにミックスして新録感を出すもよし、アイディア次第です。また歌詞内容は、レゲエの定番（神様を讃える系）が多く、アイコンとして無難に成立します。どの素材もBPMは140（70）前後で収録されており、素材のグルーブを生かすにはあまりストレッチしない方が良いでしょう。モロにレゲエ・ダブの曲に使用するより、異ジャンルのビートにカットアップしたコテコテのジャマイカなまりをブチ込むのが効果的な使い方だと思います。素材の分量的に、せっかくなら長尺のリードに的を絞ってもう少しバリエーションが欲しいところでしたが、レゲエ・ボーカルのクリアランスはとても難しいため、今まであきらめざるをえなかったアイディアも、本作の素材でトライしてみてはいかがでしょうか。
