
DSDとPCMで異なるA/Dを実装
DSDは2.8MHzの録音/再生に対応
まずはデザインから。PCM-D50とほぼ同サイズで、約395gと若干重めではありますが、手になじみむ重量感です。電源は単三電池×4もしくはACアダプター(付属)に対応。各スイッチ類の位置はほぼ一緒ですがPCM-D50からレイアウトが多少変わり、真ん中の液晶画面も若干大きくなって見やすくなっています。2基装備されているコンデンサー・マイクも少し大きなサイズに変更(15mm)され、マイクの向きがX/Yポジション(90度)とワイド・ポジションで選択可能な点は初代モデルのPCM-D1から引き継がれています。記録メディアは内蔵の32GBメモリーに加え、外部のメモリー・スティック/SDカードにも対応。録音時のレベル調整は、右側の2連ボリュームでダイレクトにコントロール。簡単にボリュームが動かないようにするためのダイアル・ガードも付いており、従来ユーザーの声を反映して操作性は大幅に改善されているようです。録音は、DSDが2.822MHz、PCMが44.1kHz〜192kHz(16/24ビット)、MP3が320/128kbpsに対応し、設定もディスプレイを見ながら簡単に行えます。再生可能ファイル形式としては、DSD(2.8MHz)、WAV、MP3、FLAC、WMA、AACに対応。録音用の回路設計もDSDとPCMで別のADコンバーターを搭載し、それぞれの方式で最適な録音を可能としています。再生には32ビットのDAコンバーターを採用し、音源の正確な再生が可能なほか、内部のコンデンサー類も高性能な部品を用いることで低ノイズ化が図られているそうです。さらに複数のADコンバーターとデジタル・リミッターの仕組みを応用する“S/N 100dBモード”も用意。これはチャンネルあたり2基のADコンバーターを使い、一方は通常の録音レベルで、もう一方は録音レベルを低くして録音し、対象音の大きさに応じて切り替えることで高いS/Nを再現するという仕組みです。ただ、残念ながらPCM方式にのみ対応です。そのほかの機能として、ピーク・ホールド、PCMとMP3を同時記録するデュアル録音機能なども搭載。また、録音したファイルのカットや結合、フェード・イン/アウト加工、トラック・マーク(頭出し位置)設定機能、録音中に内蔵メモリーがフルになってしまった場合にSDカードへ自動的に切り替えるクロスメモリー録音機能を搭載します。
ノイズまでクリアなDSD録音
透き通るようなサウンドの表現力
それでは実際に録音してみましょう。まずはスタジオでグランド・ピアノとドラムを録音。DSDと24ビット/192kHzで録音します。両フォーマット共に生々しく、本当に素晴らしいというのが第一印象。ピアノでは特に中域/低域の情報量に充実感があり、鍵盤のタッチ感やペダリング、音の強弱などのニュアンスがしっかり再現されています。ドラムも全くデフォルメ感が無く、本当に目の前でたたいているかのようです。また、ピアノの高域やドラムのシンバルは自然な伸びがあり、非常にリアルに感じます。特にDSDはより音が透き通って伸び、そして余韻の自然な減衰、レンジの広さ……驚きの表現力です。スペックで周波数特性を見てみると、可聴域を超える50kHz程度までレスポンスがあるようです。室内や野外のいわゆる生録音も、その空間を切り取ったように本当にリアルでした。ただし、スタジオ/室内/野外といった場所に応じて、恐ろしいほど微細な空調ノイズや空気清浄機、時計などの日常音も録れているので、その点も注意して録音する必要があります。
