「KRK RP-5 G3」製品レビュー:HF/LFアジャストで最適なサウンドに調整できるパワード・モニター

KRKRP-5 G3
“音楽不況”と言われながら続々とリリースされる魅力的なミュージック・ギアの数々。新しいモノに心躍る反面その誘惑とおサイフとの駆け引きに心悩ませている方も多いのではないでしょうか……。ここではKRKの魅力的なギアのご紹介です。しかしご安心ください、今回はおサイフにも優しいナイスなスピーカーです。

前シリーズの仕様を継承しながら
スペックは格段に進化


今回紹介するのはKRKのニアフィールド・パワード・モニター、Rokitシリーズの第3世代、RP-5 G3です。KRKのRokitシリーズは、リーズナブルなパワード・スピーカー・シリーズとして、それぞれウーファーのインチ数が名に冠されており、5/6/8インチ、そして3ウェイの10インチからなる製品群。本機は第2世代RP-G2シリーズの後継機としてスペック・アップと機能を追加しながらも、最低限の価格上昇に抑えているのが特徴です。1本分の値段かと思いきやペアでこの価格、驚くべきコスト・パフォーマンスの高さですね。今回試したRP-5 G3は、1インチのソフト・ドーム・ツィーターと、KRKおなじみの黄色い5インチ・アラミド・グラスファイバー・ウーファーによる2ウェイ仕様を継承。ユニット形状はほぼ変わらないものの、スペック表によると周波数特性は45Hz〜35kHz(−10dB)と格段に進化しています。ちなみにRP-5 G2は52Hz〜20kHz(±2.0dB)でした。背面には、XLRとTRSフォーン端子がバランス入力として、RCAピン端子がアンバランス入力として備わっています。また前シリーズにも搭載されていたHFアジャストは、高域特性を−2dB/−1dB/0dB/+1dBという4ステップのツマミで調整可能。本機ではさらにLFアジャストが追加され、−2dB/−1dB/0dB/+2dBの4ステップで低域特性の調整ができるようになりました。本機のような小型ニアフィールド・モニターは、恐らくデスクの上に設置されるケースが多いと思いますが、その際どうしても生じてしまう低域のボワつきもこのLFアジャストで調整できるようになったのは良いですね。そのほか全体のレベルは、−30dB〜+6dBの範囲で微調整できます。アンプは50Wのバイアンプ設計で、それぞれ高域20W、低域30Wでの駆動となっています。ツマミなどを触って感じたのは、KRKの製品に総じて感じるプロダクトの“質の高さ”です。外観の美しさや整然と並ぶ各パーツの安定感はさすが。レベル調整ツマミは、スピーカーでは使いやすい軽めのクリックのあるものであったり、筐体底面には滑り止めの役割をするシートが張り付けてあったりと細かいところも親切な作りになっておりとても好印象です。適度な重さで設置した際の安定感は低価格帯の製品とは思えません。 

気持ちの良い弾力感ある低域
宅録に適した音のバランス


早速いろいろな音源を聴いてみました。まず感じたのは、気持ちの良い低域の弾力感です。100Hz近辺のベースやキックがしっかりとした押し出しと位相で心地良く弾む感じがします。今回試したRP-5 G3は小型の5インチ・ウーファーなので、周波数特性的に鳴らせるローエンドはある程度のところで限界はありますが、それでもYAMAHA NS-10Mでは鳴り切らない、最近の音楽で大活躍のROLAND TR-808系のキックなどはきちんと聴こえます。最初はその低域の押し出しの良さに比べ、中高域の張りが少々弱めなのかな?とも思いましたが、しばらく聴いているうちに慣れてきてとても良いバランスに感じてきました。本機のように音の重心が少し低めの位置に設定されていると、小さめの音量でも低域に物足りなさが無くしっかり感じ取れる、いわゆる宅録でのニーズに合致するのではないかと思います。宅録で最も問題になるのが騒音問題です。特に低域は壁などの透過率が高く近隣にまで響いてしまうため、あまり音量が出せない原因にもなります。ヘッドフォンも併用して作業をすることになると思いますが、ヘッドフォン・モニターで実は分かりづらいのは低域です。それをチェックするために使用するモニター・スピーカーとして本機は、確かに理にかなったバランスであると言えるでしょう。高域は適度な分量ですが、ハイエンドは周波数特性の数字にもあるようにかなり伸びている印象を受けます。もちろん前述のHF/LFツマミでセッティングを追い込むこともできます。本機はとにもかくにもそのコスト・パフォーマンスの良さに驚かされます。宅録用途のモニターをお探しの方はぜひ候補に入れてみてください。 
▲リア・パネルには3つのツマミ(上からHFアジャスト、LFアジャスト、ボリューム)と、ボリューム・ツマミの左にRCAピンの入力端子、さらにその下にはTRSフォーン、XLRの入力端子を備える ▲リア・パネルには3つのツマミ(上からHFアジャスト、LFアジャスト、ボリューム)と、ボリューム・ツマミの左にRCAピンの入力端子、さらにその下にはTRSフォーン、XLRの入力端子を備える
 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年1月号より)
KRK
RP-5 G3
39,800円/ペア
▪構成:高域=1インチ・ソフトドーム・ツィーター、低域=5インチ・アラミド・グラスファイバー・コーン ▪出力:50W(高域20W+低域30W) ▪周波数特性:45Hz〜35kHz(−10dB) ▪入力インピーダンス:10kΩ(バランス)/7kΩ(アンバランス) ▪外形寸法:188(W)×284(H)×246(D)mm ▪重量:5.9kg(1本)