
高性能なエフェクトを搭載
上位機種Production Suiteも用意
Nectar 2は、前バージョンよりハーモニー・モジュールや特殊FXが追加されたほか、細かい改良が加えられている。ほかには前バージョンと同様、ピッチ補正、リバーブ、ディレイ、ディエッサー、サチュレーター、コンプレッサー、ゲート、EQ、リミッターと数多くのモジュールが内蔵されており、それらを組み合わせて一つのプリセットを作ることができる。またNectar 2 Production Suite(オープン・プライス/市場予想価格:30,000円前後)という上位バージョンには、Pitch EditorとBreath Controlという2つの独立したプラグイン・エフェクトが追加されている。Nectar 2を開くと表示されるのが、Overviewというウィンドウだ(上画面)。左下の“Overview”というボタンを押すと、“Advanced”という表示になり、左側に各モジュールのページにアクセスできるボタン群が表示される。ボタンに付いたチェック・ボックスをクリックしてオレンジ色にすると、そのモジュールの機能がオンになる。さらにボタン右側を上下にドラッグ&ドロップすると、モジュールの順番を変更することもできる(Pitchモジュールだけは一番上に固定されている)。Advanced/Overviewボタンの右側にはMixing/Trackingモード切り替えボタンがある。Mixingモードではクオリティの高いエフェクトを得られるが、レイテンシーが大きくなるので注意が必要だ。すべてのモジュールをオンにすると6,500サンプルほどになり、48kHzで動作させている場合は135ms以上の遅れが発生する。一方Trackingモードはクオリティは落ちるものの、レイテンシーが最小限に抑えられる。“ちょっと遅れがあるよ”と断りを入れれば、Nectar 2を通した音をモニターしても問題ないレベルだろう。いろいろな処理をした状態で歌ってみたい、というボーカリストは多いのでこの機能はとても素晴らしい。音についてはどのモジュールも好印象だ。特にEQは同社のAlloyと同様のもので、効き方もバリエーションも実に多彩。Option+ドラッグで、気になる帯域以外がグレーアウトし視覚的に確認でき、的確なイコライジングの助けになる。エフェクトのかかり方は、人によってはデジタル特有の固い、面白みの無いサウンドと思うかもしれない。しかしそれは未来っぽい見た目と、使い方によると思う。EQの例で言うとVintageというモードを使えば、同じパラメーターでもQが変わり、ソリッドさを和らげることもできる。Nectar 2 Production Suiteに含まれる2つのプラグインについても触れておこう。Pitch Editor(画面①)はプラグイン内にトラックの音を取り込み、それを細かく作業していくタイプのピッチ補正プラグイン。

充実のプリセットを150以上備える
複数のエフェクトの組み合わせが可能
筆者は以前、本誌で同社のAlloy 2をレビューしたが、そのときにプリセットの使いやすさを気に入った。Alloy 2は複数のエフェクトが合体しており、その組み合わせで作られたプリセットは非常に多彩で面白かったのだ。普段、エフェクトのプリセットはあまり利用しないが、ともすればマンネリに陥ってしまう各楽器の処理も“こんな方法もアリだなあ!”と気付かせてくれるところが素晴らしいと感じ、以後愛用している。Nectar 2もAlloy 2と同様、ボーカル処理に特化したプリセットを150以上も備えている。エフェクトに疎いミュージシャンはもちろん、ボーカルを録音したりミックスするエンジニアの人にもお勧めだ。ボーカルの処理を日常的に行うエンジニアは、お気に入りのEQやコンプ、そして使い慣れたピッチ補正ツールを既に持っていると思う。Nectar 2搭載のエフェクトのほとんどは、それらとかぶってしまうだろう。しかし、複数のエフェクトを組み合わせたプリセットにより、新しいサウンドを提示してくれるNectar 2のスピード感はまた違った面白さを与えてくれる。Nectar 2で試して“あぁー、こういうサウンドにすれば良いなぁ!”と思ったら、それをほかの機材と組み合わせて再現していくのも面白いだろう。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年1月号より)