
前作の全音色に100種類を追加
パーカッション系の充実ぶりが光る
さて、そのForest Kingdomから進化したのがForest Kingdom II。サンプル・プレーヤーに同社のEngine 2を採用しており、Mac/Windowsに対応。VST 2.4、Audio Units、RTAS、スタンドアローンで動作し、最大8.1chサラウンド出力も可能です。ユーザー・インターフェースは一新され、さらにエスニックさが増したデザインはまるで古代エジプトの彫刻のよう。エンベロープがノブからスライダーに変更され、逆にミキサーはスライダーからノブへと変更されています。中央にはグローバル・カウンターを設置。いずれかのノブを調節する際に、その設定値を大きく表示してくれ、視覚的にも確認しやすくなりました。気になるサウンドはForest Kingdomの全収録レイヤー(パッチ)に加え、約100種類の新規レイヤーが追加収録。特に印象的なのは“Per
cussion”カテゴリーです。前作にもさまざまな時代/国籍の打楽器が収録されていましたが、ブラジルの“Berimbau”、スペイン風の“Culo e P
uya Drums”、アイリッシュな“Frame Drum”など、ユニークな楽器が加わりました。しかも、どれもリアルな音色で自然な質感を持っています。そして特筆すべきは、“Percussion”カテゴリー内の一部パッチに、ホスト・アプリケーションとのテンポ同期可能なMIDIフレーズが用意されていること。画面内のキーボードで緑色に表示されたキーにはMIDIフレーズが割り当てられていて、フレーズをトリガー再生できます。日本ではなじみの少ない楽器などは、ワンショットで聴いてもどんなフレーズを組んでよいか悩む場面も多いですが、このMIDIフレーズを鳴らすことでインスピレーションを得やすくなるでしょう。
管弦楽器にも表情豊かな新規音色が
使用効率も大幅に改善
ほかには、“Plucked”カテゴリー内に新たなハープの音色“Electric Celtic Harp NR”や“Kalimba”“Music Box”が収録。どれもが心地よいアンビエンスが加えられている音色です。単音をつま弾くだけで神秘的な世界が広がり、イメージがかき立てられます。“Winds”カテゴリーではフルートの種類がさらに充実。前作でもフルートは特にお気に入りだったので、これはうれしい限りです。メキシコ原住民の楽器“Aztec Clay Flute”や、ボリビアの“Moseño Flute”など、個性的で珍しい音色が増えました。複数の“リリース・ボタン”に割り当てられている装飾音でノートのリリースに表情を加えることも可能。さらにキー・スイッチによるバリエーション付きで、トリルやビブラートといった各種奏法を切り替えることが可能。表現の可能性を倍増させてくれます。そのほかではオーストラリアの金管楽器ディジュリドゥがとても印象的。ワンショットとグルーブ・フレーズがパッチ別に収録されており、その個性的なサウンドから強力なビート・メイクができそうです。そのほか“Soundscapes”カテゴリーではノイズ、ボイス、動物の鳴き声など、複数のレイヤーから構成されたパッド音が多数追加されています。また、Forest Kingdomに比べ、CPUやメモリーの使用量、ストリーミングなどが大幅に改善されており、使いやすさが向上しています。前作ではパッチによってはメモリーの消費量が多く、読み込みに時間を要するものもあったのですが、新バージョンではそのストレスを感じません。 Forest Kingdom IIは壮大なアンビエントを手掛ける音楽家にはもちろん、ファンタジーや大自然がテーマのドキュメンタリー映画など、幅広いジャンルの楽曲制作に重宝するでしょう。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年1月号より)