「ROSENDAHL Nanoclocks GL」製品レビュー:12系統の出力を備えるクリスタル式高精度クロック・ジェネレーター

ROSENDAHLNanoclocks GL
デジタル機器やDAWの普及により、注目を集めているのがクロックの重要性です。ワード・クロック端子やデジタル入力などを用いてマスター・クロックを供給することで音が変わる、というのはオーディオ関係では今や当たり前で、音作りの選択肢になっています。実際に筆者もミックスする際は、3種のマスター・クロックを曲によって変えたりしています。ほかの人に聴かせても、はっきりと違いが分かるほどです。今回は、ROSENDAHL Nanoclocksの後継機種、Nanoclocks GLが発売されたとのことで、同社の今までのマスター・クロックの音との比較も含め、実際に試してみましょう!

温度補償型水晶発振器を搭載
各種映像フォーマットに同期可能


まず本体を見てみると、何ともシンプルで分かりやすいパネルになっています。すべてが自照式のスイッチで、説明書を読む必要なく使えるほど操作も非常にシンプル。マスター・クロックは頻繁に設定を変えたりすることが無い機材なので、これくらいでも構いません。肝心のクロック精度は、インターナルではTCXO(温度補償型水晶発振器)を採用し、0.2ppmの精度を実現しています。それぞれのサンプリング周波数ごとにクリスタル・オシレーター使う方式を採用し、マスター・クロックとしての性能は十分と言えるでしょう。そのほかに本機ではPAL/NTSCの各SDフォーマットに加え、HDフォーマットとのビデオ信号をマスターとして同期することも可能。また、外部のオーディオ・クロック・リファレンスにも同期できます。さらに、ディストリビューション・モードでは、入力したクロック信号をバッファーして12基の出力に分配することが可能になります。 

ガッツのある音に伸びがプラス
ファームウェアで機能強化も予定


同社の旧機種、Nanosyncsは、プロ・スタジオでも幅広く採用され、発売当時は最もポピュラーなマスター・クロックだったと思います。今回、Nanoclocks GLを使ってみて感じたのは、まず同社の今までの音の感じを生かしつつよりワイド・レンジになった印象です。ROSENDAHLのクロックは中高域に張りが出て音像的にグッと前に来る、いわゆるガッツのある感じというのが筆者の印象ですが、ちょっと高域のクリアさや低域のふくよかさが欲しいときには、現在の機器の中では少し物足りない部分もあったかと思います。本機では、そのガッツを残したまま高域と低域が伸び、個人的にはかなり好印象でした。今回はAVID Pro Tools|HDXシステム(Pro Tools HD 11+HD I/O)での内部ミックスで聴き比べてみましたが、筆者が所有している他のマスター・クロックすべてと比べてみて、本機が一番音が前に出てくる感じに聴こえました。Pro Toolsは11になってワイド・レンジになった分ガッツはちょっと薄くなった印象もありましたが、ちょうどその部分を十分に補ってくれています。低域に関しては、ふくよかさというよりタイトに低域を出す感じですが、ローエンドまで出ています。高域の伸びに関しても、どちらかと言えば従来のROSENDAHLは苦手な方だと思っていましたが、本機ではその印象が薄くなったのはうれしいところですね。今回チェックをする期間、何曲か実際のミックスで使ってみましたが、ロックもののミックスということもあり、聴き比べて全曲で本機が選ばれたというのは、選択肢の一つとして十分に使えるということでしょう。さらに本機は、USB経由でのファームウェア・アップデートで、機能の拡張性も持たせています。サンプリング周波数も現状では44.1〜96kHz対応ですが、今後のアップデートで×2&×4モードを装備し、最大で384kHzへの対応が発表されています。加えて、12基の出力端子に対して個別のサンプリング・レートが設定可能に。S/P DIFの出力にも対応するとのことです。これらのアップデートは無償で提供される予定なので、ユーザーにとってはとてもうれしいポイントです。個別のサンプル・レートを扱えるとなると、例えばDAWは48kHzで、マスター・レコーダーは96kHzなどといった場合に、本機1台でクロック供給が完結できるというわけです。今回Nanoclocks GLを使ってみて、クロックの重要性をあらためて認識しました。最近ではどちらかと言えば、DAWソフトなどを中心に奇麗な音がトレンドですが、本機は奇麗さも残しつつガッツも!という感じで、個人的にはとても好印象でした。もちろん、曲やスタイルによって合う/合わないがありますし、好みもあると思いますが、選択肢の一つとして、ぜひ一度試してもらいたいですね。 
▲リファレンス・インプットA&B(BNC)、USB端子、ワード・クロック出力×12(BNC)、電源入力(DC24V/AC100V) ▲リファレンス・インプットA&B(BNC)、USB端子、ワード・クロック出力×12(BNC)、電源入力(DC24V/AC100V)
   (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年1月号より)
ROSENDAHL
Nanoclocks GL
252,000円
▪自動検知ビデオ信号:576i47.95、576i48、57 6i50(PAL)、480i59.94(NTSC)、480i60、720p50、720p59.94、720p60、1080i47.95、1080i48、1080i50、1080i59.94、1080i60、1080p23.98、1080p24、1080p25、1080p 29.97、1080p30、1080p50、1080p59.94、1080p60 ▪ワード・クロック:3.5Vpp@75Ω ▪AES11 DARS:1.0Vpp@75Ω(ハイレベル・モードの場合は1.5 Vpp) ▪オーディオ・リファレンス・サンプリング・レート:44.056、44.1、47.952、48、88.112、88.2、95. 904、96kHz ▪クロック・ジッター:10ps RMS以下(20Hz〜20kHz) ▪外形寸法:355(W)×44(H)×110(D)mm(端子を含まず) ▪重量/1.95kg