「MACKIE. 1604VLZ4」製品レビュー:全入力に高品位Onyxマイクプリを備える16chアナログ・ミキサー

MACKIE.1604VLZ4
MACKIE.が20数年前に発表したアナログ・ミキサーCR1604は、“こんなに安価なのに良い音が得られるんだ!”という驚きをもって迎え入れられました。僕が興味を持ったのは、ベック『メロウ・ゴールド』がCR1604を通して録音されていると知ったからです。まさに宅録の予算でも頑張れば何とかできる、という希望を与えてくれた一台です。CR1604以降、MACKIE.からはVLZと銘打ったアナログ・ミキサーが登場しました。そしてこのたび、そのVLZシリーズがリニューアル。今回は16chモデルの1604VLZ4について、その実力をチェックしていきましょう。

操作子の配色が一新され視認性向上
ツマミの回し心地がスムーズに


まずはスペックから。背面には16ch分のマイク・インやライン・イン、メイン・アウトL/Rや4つのサブグループ・アウト、6つのAUXアウトなどが装備されています。各チャンネルには3バンドEQやパンのツマミなどを用意。フェーダーの横にはソロ・スイッチのほか、信号をサブグループ1/2または3/4、メイン・アウトL/Rのいずれかに送るためのスイッチが備えられています。この通り入出力の仕様は従来のVLZシリーズから大きく変更されていませんが、外観の雰囲気はガラリと変わりました。これまでよりもブラックの割合が増え、ツマミ類には蛍光色に近いカラーリングが施されています。ライブ時の視認性は、かなり上がっているでしょう。フェーダーの左右には切り込みが入り、下に書かれている目盛りが見えやすくなりました。ひとつ気になったのは、ツマミの回し心地がかなり変わったこと。従来はかなり重かったのですが、1604VLZ4では少し軽めになっています。もともと重かった回し心地が他社の製品に近づいた感じなので、他社のミキサーから乗り換える人は違和感無く扱えるでしょう。操作子以外の変更点としては、すべてのマイク・インに同社独自の高品位なOnyxプリアンプを搭載したことが挙げられます。 

マイクプリの音は周波数バランス良好
小さな音まで鮮明に収める


今回はボーカルとアコースティック・ギターの録音に1604VLZ4を使用。マイクは、AKG C414B-TLIIとSHURE SM57を使いました。まず印象的だったのは、Onyxプリアンプの音質。チャンネルに音を立ち上げた時点で、従来シリーズとはまるっきり別物だということが分かりました。 本誌で連載していた「マイク1年生」の録音では同社1202-VLZ Proを使用していましたが、生音を収めたときの中高域のジャリッとした部分と低域は、もう少しおとなしくてもいいなと思っていました。サンプラーやシンセを立ち上げると太くなるので便利な反面、ギター・アンプなどにオンマイクを立てると耳に痛い帯域が出てきたり、アコギでは胴鳴りのモヤモヤした部分が強調されてしまい、少しEQしないと使いづらい印象があったのです。しかし1604VLZ4ではその辺りが改善されていて、かなり自然なバランスです。Onyxプリアンプの良さは、特にアコギをSM57で拾ったときに顕著でした。安価なプリアンプを使うとペタッとした音になってしまいますが、本機ではザクザクとした感じが気持ちよく入ってきます。また従来機に比べると小さな音の解像度が上がっていて、同じ距離からマイク録りした音でも空気感がまるで違います。1604VLZ4の音は部屋鳴りなどもたっぷりと収めていて、従来機の音に薄いリバーブをかけたくらいの差が感じられました。とは言え音が遠くなったわけではなく、高域の抜けや分離が良くなったイメージです。そのほか、本機を通して2ミックスの音源を試聴してみました。するとキックなどの低音楽器の定位がボケることは無く、バチッと決まったところから聴こえてきたのです。プリアンプ部だけでなく、総合的に音の解像度が向上しています。従来シリーズと同じ価格帯でここまで音質を改善してきたことは驚きです。宅録はもちろん、ライブ・ユースにもお薦め。最近はジェイムス・ブレイクばりにボーカルにエフェクトをかける人が増えましたが、複数のエフェクトを直列でつなぐためS/Nが悪く、ノイズ除去でリハーサルが終わってしまうという話も聞きます。本機を導入したら状況が劇的に改善されるかもしれません!    (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年12月号より)
MACKIE.
1604VLZ4
171,150円
▪チャンネル数:16 ▪周波数特性:20Hz〜50kHz(+0/−1dB) ▪全高調波歪率:0.0007%以下(20Hz〜50kHz) ▪外形寸法:440(W)×129(H)×433(D)mm ▪重量:9.1kg