「PELUSO MICROPHONE LAB P-67」製品レビュー:名機U67を踏襲しつつ現代的にブラッシュ・アップした真空管マイク

PELUSO MICROPHONE LABP-67
PELUSO MICROPHONE LABは2002年にアメリカのバージニア州で設立され、NEUMANNを筆頭にTELEFUNKEN/AKG/SCHOEPSといったビンテージ・マイクの名機を徹底的に分析した製品を送り出しています。今回のP-67は、世界中で知られている真空管マイクのNEUMANN U67を意識して作られたとのことで、早速レビューしていきましょう。

U67より若干スマートなボディ
指向性は9段階切り替え


まずはオリジナルのU67について少し解説しましょう。1960年から1971年まで製造された真空管マイクで、ジョン・レノン「イマジン」のボーカルを含め、世界中のトップ・ボーカリストがこのマイクで録音をしてきました。ピアノ、ギター/バイオリンなどの弦楽器、管楽器、ドラムやパーカッションまで音源を選ばず素晴らしいパフォーマンスを発揮する名機です。そんなU67を踏まえつつ、このP-67を見ていきます。まずは外観から。カラーリングはほぼ同色ですが、P-67の方が表面のキメが細かい仕上がり。ダイアフラムを格納したグリル・メッシュはP-67の方が目が若干粗く、少しだけ長くなっています。ボディ部分もほぼ同形ですが、P-67は下部に向かって若干細くなっており、全体的にスリムな印象です。マイク本体裏側には、ローカットと−10dBのPADスイッチを実装。付属の電源ユニットでは指向性の切り替えができ、無指向〜単一指向〜双指向まで9段階の設定が可能。真空管はEF95(6AK5/6J1/5654)が採用されています。さらに電源ユニットとの専用接続ケーブル、ショック・マウント、木製ケース、そして豪華フライト・ケースが付属します。 

U67と非常に似たキャラクター
低域/中域の存在感は特筆モノ


では、実際に音を聴いていきましょう。まずは個人所有している初期型のNEUMANN U87とアコギで比較。マイクプリはAPIのコンソールから抜き出したオリジナルのものを使いました。マイク感度はほぼ同レベル。S/NはP-67の方が断然良く、高域〜低域の周波数レンジの広さもP-67の方が優れていました。また中低域に粘りがあり、ストロークでの倍音の抜け方もスムーズ。コスト・パフォーマンスの高さを売りにした最近のマイクとは根本的なステージが違うサウンドです。NEUMANNの伝統的なカラー/存在感があり、かなり好印象です。次に、初期モデルのTELEFUNKEN U47 Tubeと比較。声とギターでチェックしました。互いのキャラクターは大きく違いますが、P-67が持つ真空管特有の粘りと倍音の伸び、大小の音量差での表現力は、やはりNEUMANNカラーといったところでしょうか。特に高域のザラッとした質感には、本格的な真空管サウンドが感じられます。最後に、ちょうどサウンドシティで作業する機会があったので、限られた時間でのチェックでしたが、同スタジオが所有するU67との聴き比べも行ってみました。SSL SL9000Jのヘッド・アンプに接続し、歌とアコギでチェックです。S/Nの良さやウォーム・アップの速さはやはりP-67に軍配が上がりました。サウンド傾向は非常に似ており、ブラインド・テストでは2本のマイクの聴き分けが困難なほど。特に低域/中域のキャラクターが近く、共にどっしりとした存在感があります。強いて言うならばU67の方が若干重心が低めで、P-67は高域がワイドといったイメージでしょうか。オフマイク(単一指向)時の近接効果も似ています。ここもあえて言うならば、U67の方が指向性は広めで、P-67の方が鋭い(反射音が少ない)という印象も受けました。ただし、本当に若干の差しかありません。ここで注意してほしいのは、現存するU67(ビンテージおよび1990年に作られた復刻モデル)は個体差が大きいため、今回のチェックが必ずしもすべてのU67との比較にはならない点です。ビンテージの機材はコンディションも不安定で、パーツ交換やメインテナンス具合によって音もマチマチです。とはいえ、P-67はU67の“良いイメージ”をしっかり具現化していると思います。
 P-67は個人的にとても好印象でした。ビンテージに比べ安定して使いやすく、オリジナルのU67よりもはるかに優れたコスト・パフォーマンス。U67を連想させる型番を付けているのも開発者の自信とプライドが感じられます。同社のほかのマイクにもがぜん興味がわいてきました。▲マイクの裏側にはハイパス・フィルターとPAD(−10dB)スイッチを付属。指向性は電源ユニット側で切り替える▲マイクの裏側にはハイパス・フィルターとPAD(−10dB)スイッチを付属。指向性は電源ユニット側で切り替える  
 
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年12月号より)
PELUSO MICROPHONE LAB
P-67
283,500円
▪形式:コンデンサー ▪指向性:9パターン(無指向〜双指向) ▪周波数特性:20Hz〜24kHz ▪感度:18mV/Pa ▪等価雑音:14dB(A-weighted) ▪最大SPL:148dB ▪外形寸法:205(H)×56(φ)mm ▪重量:600g