7種類のリペア・モジュールでノイズ除去可能なオーディオ編集ソフト

IZOTOPERX3 Advanced
IZOTOPEはマスタリング・ツールOzone 5のEQのかかり具合や、リミッターのリダクションの音の変化がとても良かったです。その後、同社からクリップのひずみなどを除去/クリーニングできるソフトのRX3がリリースされ、その効果も良かったと聞き、普段のマスタリングでひずみに頭を悩ませることも多いので購入を検討しているときにレビューの依頼が来ました。RXシリーズは初めて使いますが、3になってゼロ・レイテンシーでのリアルタイム・ノイズ除去や、リバーブの除去、無制限アンドゥなどの機能が追加されたようです。今回は機能拡張版であるRX3 Advancedでチェックしました。

ダイナミクスを色で確認できる
スペクトログラムで分かりやすく表示


RX3は、スタンドアローンとプラグイン(Audio Units、VST/VST3、RTAS/AudioSuite、AAX)として使用できます。まずインストールしてスタンドアローンで立ち上げてみると、インターフェースの中央に大きく波形を読み込む画面が、そして下にズームや選択の各種ツール、トランスポート・パネルやピーク・メーター、右側にDeclip、Denoiseなど7種類のリペア用のモジュールと、Gain、Equalizerなどのツールが8種類配置されています。中央の波形は大きく表示し、それ以外の機能はコンパクトに分かりやすく配置されており、マニュアル無しでもすぐに使えそうです。今回ミックス済み音源で録音時にクリップ・ノイズが乗り、気になる音源がちょうどあったので、それを読み込んでみました。中央に曲全体の波形と、背景に黒〜オレンジ〜黄色のスペクトログラムが表示されます。無音が黒色で、音が大きくなるにつれオレンジになっており、0dBの部分が明るい黄色。波形と共にダイナミクスが色で確認できるようになっています(色は変更可能)。黒とオレンジの淡い色の部分はヒス・ノイズで、低域のキックやベースのアタックがつぶれてひずみっぽく聴こえる部分はオレンジが線上に波打っていたり、アタックのピークが強くてひずんでいる部分は棒状の黄色い線で表れていたりと、ダイナミクスとノイズが視覚で分かりやすく表されています。波形の下にあるズーム・ボタンで、1サンプル単位まで拡大できます。ハード・ディスクのラグや波形編集時のサンプル・ノイズ、短いリップ・ノイズなどは、RX3のプロセッサーを使わなくてもここで波形を書けるので、簡単に修正可能です。またスペクトログラムは、時間軸だけでなく、周波数での選択も可能。矩形での選択や投げ縄、ブラシなど、さまざまな選択ツールが用意されており、状況に応じて使い分けることができます。 

簡単操作でノイズを除去可能
編集後も音質の劣化はない


ではリペア用のモジュールを幾つか紹介していきましょう。Declipはデジタル、アナログのひずみの除去をスレッショルドで調整できる機能。デジタルのひずみの場合、波形のピークでひずむのでスレッショルドの位置を表示されている波形のピークより下げれば除去できます。スレッショルドとインターフェースの波形がリンクしているので、音を聴かなくても調整できてしまう感じですね。実際気になっていたひずみは簡単に取れました。音の変化は多少ありましたが、嫌な感じはなくプロセス後もいい音だなぁと思える印象です。Remove Humは、電源から乗ってしまうハム・ノイズの除去フィルターです。こちらは50Hz(東日本/欧州)、60Hz(西日本/米国)、Freeと環境によって異なる電源の周波数が選べ、各周波数のハーモニックも、リニア・フェイズ/ハイパス/ローパス・フィルターでカットできるようになっています。今回追加されたDereverbですが、こちらは4バンド(Low/Low-Mid/High-Mid/High)でリダクションさせて、リバーブや余韻を取り除く機能。立ち上げてから波形のリバーブをLearnで覚えさせ、あとはプレビューしながらトータルのスレッショルドと各バンドのリダクションを設定するのですが、とても奇麗に消すことができました。こちらの音の変化も違和感なく、深くリダクションしていっても嫌な音になりません。リバーブを除去するのでドライな音になりますが、音質自体が劣化することはありませんでした。ほかにもノイズを除去するDenoise、クリック音やポップ音を除去するDeclick & Decrackle、録音された素材から不必要な音を除去できるSpectral Repairなど、さまざまなモジュールがあり、幾つか設定を聴き比べたいときは、Compareボタンを押すとそれぞれの設定が聴き比べられるようになっています。アンドゥ機能では、自動保存された履歴を無限にさかのぼれるので、こちらで過去の設定をたどっていくこともできます。そしてEQはOzone 5のように変化が素晴らしかったです。状況に応じたモジュールがしっかりと用意され、音質の変化もさほど気にならずに使える本機は、ポスプロの現場での即戦力となりそうです。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年12月号より)
IZOTOPE
RX3 Advanced
オープン・プライス (市場予想価格:134,400円前後)
▪Mac:Mac OS X 10.6.8以降、Audio Units/VS T/VST3/RTAS/AudioSuite/AAX(64ビット)対応のホスト・アプリケーション、スタンドアローン ▪Windows:Windows XP SP2/Vista/7/8(32ビ ット&64ビット)、VST/VST3/RTAS/AudioSuite/AAX(64ビット)対応のホスト・アプリケーション、スタンドアローン ▪その他:メータリング・ソフトInsightを付属