「NATIVE INSTRUMENTS Maschine Studio」製品レビュー:大型カラー・ディスプレイ×2を搭載するMaschineのフラッグシップ

NATIVE INSTRUMENTSMaschine Studio
NATIVE INSTRUMENTS(以下、NI)のMaschine Studioはハード/ソフトの統合により革新的なワークフローを実現したMaschineのフラッグシップ・モデルです。まず、最近さまざまなスタジオで見かけるMaschineとは一体どんな機材なのでしょう。実は筆者も初めて触れるこの環境、基本構成から見ていきたいと思います。

ハードとソフトが1対1で統合した
ビート・メイク環境の先駆


MaschineはUSB接続の専用コントローラーで直感的な操作を行いつつ、コンピューター上の大容量サンプル、パワフルなシンセ/エフェクトをソフト側で制御することでソフト/ハードの利点を余すところなく引き出した製品です。昨今こうしたトータルな制作環境は人気を集めており、他社からも同様の製品が発表され、一つのジャンルとして定着した感があります。Maschineはそうしたムーブメントの先駆的存在。ソフトと組み合わせるコントローラーとしては、初代MaschineとコンパクトなMaschine Mikro(現在はそれぞれMK2となっています)があります。Maschineソフトウェアは内部にシーケンサーを持ち、リアルタイム/ステップでの打ち込みが可能。スタンドアローン使用時はVST/Audio Unitsプラグインを読み込むこともできます。NI以外のサード・パーティ製品も使えるので、音色バリエーションは事実上無限。さらにMaschineはDAW上でVST/Audio Units/AAXプラグインとして立ち上げることもでき、大規模な楽曲制作を行う際にDAWと連携して作業するのも容易です。ちなみにDAW上でプラグインとして呼び出したMaschine上で、さらにサード・パーティ製のプラグインを呼び出すことも可能です。今回のMaschine Studioは、その名の通りスタジオの中核となりうるモデル。新しいコントローラーの登場に合わせてソフトもVer 2.0となり、さまざまな機能が追加されています。ちなみにこの2.0ソフトウェアは従来のMaschine、Maschine Mikroのコントローラーにも対応しています。 

カラー・ディスプレイ×2と
大型のジョグ・ダイアルを追加


では今回リリースされたMaschine Studioの詳細を、コントローラーから見ていきましょう。まずそのサイズですが、Maschineより2回りほど大きく感じます。小型で持ち運びやすいものではありませんが、制作環境の中枢に置かれるべくさまざまな機能を搭載したことを考慮すれば、納得の大きさです。続いて目に入るのは、楽器に搭載されるものとしてはオーバーキルとすら言える2枚の大型ディスプレイ(写真①:480×272ピクセル)。
▲写真① Maschine Studioのコントローラーは480×272ピクセルの大型ディスプレイを2枚搭載。打ち込みのピアノロールや波形まで表示できるようになり、コンピューターのディスプレイを見なくとも、トラック制作に関するほとんどの作業が完結する ▲写真① Maschine Studioのコントローラーは480×272ピクセルの大型ディスプレイを2枚搭載。打ち込みのピアノロールや波形まで表示できるようになり、コンピューターのディスプレイを見なくとも、トラック制作に関するほとんどの作業が完結する
従来のMaschineでもほとんどの作業をコントローラーだけで行えましたが、サンプルの状態やステップの確認など、幾つかの局面ではコンピューターの画面を確認する必要がありました。しかしMaschine Studioはこのフルカラー・ディスプレイのおかげで、より手元に集中して制作が行えます。また、コントローラー側にはシーケンスを表示し、コンピューター側にミキサー画面を表示させるデュアル・ディスプレイのような使い方も考えられます。ちなみにボディ・カラーはブラック/ホワイトの2色展開です。ドラム・パッドは従来のMaschineと同じくマルチカラーLEDを搭載したもの。用途に応じてカラーを変更することで、暗いステージでも操作に迷いません。またコントローラーの大型化に合わせ、従来はshiftキーと同時押しすることで実現していたナッジなどの機能が、独立したボタンとなりました。さらに大ぶりなジョグ・ダイアルが追加されており、音色セレクトなどの作業が快適になっています(写真②)。
▲写真② 16ドラム・パッドはMaschine MK2と同様マルチカラー自照式のもの。大ぶりのジョグ・ダイアルが新たに追加され、ブラウジングなどの作業がより快適になっている。その上にはUNDO/REDOなどもボタンとして独立し、操作性が大きく向上 ▲写真② 16ドラム・パッドはMaschine MK2と同様マルチカラー自照式のもの。大ぶりのジョグ・ダイアルが新たに追加され、ブラウジングなどの作業がより快適になっている。その上にはUNDO/REDOなどもボタンとして独立し、操作性が大きく向上
ダイアルは程良いクリック感や手になじむへこみがあり、常に触っていたい感じです(笑)。ダイアルの周りはどの機能が割り当てられているかが点灯するようになっており、視認性も良好。まだその上には、UNDOやREDOなど従来のMaschineでは頻出する操作の割にアクセスしにくかった機能が、これまたボタンとして独立しています。マスター・セクションも新設されたボタンで簡単にアクセスでき、トランポート周りの表示も分かりやすくなりました。これら“Studio”の名に恥じない操作感の劇的な向上には、ユーザー目線がよく反映されているように感じます。リア・パネルに目を移すと、MIDI I/Oは1イン/3アウトと充実。フット・スイッチも2系統用意され、再生/録音/停止などが足で操作可能です。こうしたI/Oの増加はスタジオ内での操作性の向上に寄与するのはもちろん、ライブでほかの機材を併用する場合も重宝しそう。また、USB端子は少しだけ奥まった場所に装備。端子形状によってはUSBケーブルを選びますが、この少しのくぼみがあるだけで、ライブなど重要な場面でUSBケーブルの脱落を防止してくれます。こうした仕様は軽く扱われがちですが、本当に重要です。さらに気が利いているのが、底面に格納されたスタンド。これを展開するだけでトップ・パネルに角度が付き、格段に操作がしやすくなります。Maschineにも別売の専用スタンドが用意されていましたから、このあたりもユーザーの要望をうまく形にしていると言えるでしょう。これだけ多機能なMaschine Studioのコントローラーは、さすがにACアダプターによる電源の供給が必須となりました。個人的にはバス・パワー動作で不安定になってしまうよりいいのですが、使用先で電源がもう1系統必要になったことは留意すべきかもしれません。 

刷新されたオーディオ・エンジン
ミキサー画面やサイド・チェインを実装


続いてMaschineソフトウェアを見ていきましょう。何と言っても大きいのは、オーディオ・エンジンをフルスクラッチで書き直している点。問題点を洗い出して現在求めらる音質クオリティを再度ビルドアップしたとのことで、期待が持てます。さらにこのオーディオ・エンジンを十二分に表現する“ドラム・シンセ”の搭載も大きなトピック。音質については、この後実際にトラックを制作しつつ検証してみたいと思います。さらに、これまで8つしかなかったパッド・グループを無限に増やすことが可能になり、インサート・エフェクトも無制限に挿せるようになりました……これ、並のDAWよりすごいと思います。そして、これらを一元的に管理できるミキサーもついに搭載。グループやエフェクトのルーティング、AUXセンドなどを一目でチェックできます。さらにMaschineソフトウェア内部でサイド・チェインが可能になりました! この機能追加でより今っぽいトラック・メイクが可能になっています。また、マスター・セクションに送られる前の音声をモニターできるキュー・チャンネルも新たに追加。コントローラー側から簡単にアクセスできるので、例えばライブ中のとっさの音色変更などにも即対応できます。ソフト自体のユーザー・インターフェースも新しくなっており、サンプルやプラグインのプリセットなどをタグで検索することができるようになりました。Maschineのことを“新世代の機材”と感じるのは、これらの機能がコントローラーと密接にリンクし、考え尽くされている点。ソフト/ハードのつじつまが見事に合っていて、何だかほれぼれしてしまいます。 

“使える”サウンドが満載!
新しく搭載されたドラム・シンセ


ではMaschine Studioを使って実際にトラック制作をしていきましょう。最初ですからGROUP Aのパッド1をたたいて選択し、ここにアサインする音色を選びます。まずはコントローラーの“BROWSE”ボタンを押してブラウザー画面へ。大きな液晶ディスプレイにプリセットがリスト表示されるので、目的の音色を選んでジョグ・ホイールを押し込み決定するだけです。ここではまずキックの音色をセレクト。インストール時に付属するファクトリー・ライブラリーのサンプルも良いのですが、せっかくですから新搭載のドラム・シンセのキックを選んでみました。この場合もサウンド・ソース/ライブラリー/キャラクターなど細かなサブカテゴリーを選んで目的の音色を探せるので、非常に分かりやすいです。またこのブラウザーは、プリセットをプラグイン間で横断して検索することもできます。今回はMaschine Studio単体のレビューのため使用していませんが、同社のKompleteがインストールされている環境でこの機能を使用すれば、例えばエレピを探したいと思ったときにFM8やMassive、あるいはKontaktなどのプリセットを一括して検索できるのです……これは、Komplete単体より全然使いやすいです。この機能だけでもMaschineを使用する意味があると思います。さて、キックをロードしてパッドを一発たたいたところで、思わず“うおっ!”とうなってしまいました。とんでもなく音がいいです。太く、しんのあるキックが読み出してすぐ鳴ってくれます。“シンセを使って取りあえず乗っけてみました”という感じは一切無し。さすがNI印のサウンドと言うべきか、楽器プリセットにありがちな“昔よく聴いた音の焼き直し”ではなく、いまここで欲しい“分かっている”音色です。これはカッコいい! 読み出した音色は“Dusty”というセットだったのですが、少しホコリっぽい“ジャッ”としたエッジのある質感が素晴らしいです(画面①)。ゼロからここまでのキックを作るのは、相当骨の折れる作業になるのではないでしょうか。
▲画面① ドラム・シンセはKick/Snare/Hi- Hat/Tom/Percussionの5つのプラグインで構成。Kickプラグインのサウンド・エンジンは8つで、画面はクラシックなアナログ・リズム・マシンを基にした“Dusty”を呼び出したところ。シンセなので音質劣化を気にせずに音作りできる ▲画面① ドラム・シンセはKick/Snare/Hi-
Hat/Tom/Percussionの5つのプラグインで構成。Kickプラグインのサウンド・エンジンは8つで、画面はクラシックなアナログ・リズム・マシンを基にした“Dusty”を呼び出したところ。シンセなので音質劣化を気にせずに音作りできる
今回は4つ打ちにしたいので、キックのディケイを短くし、もう少し暗めのピッチにしたいと思います。ブラウザーを閉じると既にコントローラーのツマミにドラム・シンセの各パラメーターがアサインされているので、対応するツマミを触るだけで音色エディットができます。機能を呼び出し、アサインして……という作業は全く必要ありません。またサンプルを音色エディットする際は、短くしたディケイのテール処理やピッチ・シフトによる音質の劣化を気にしなければなりませんが、この場合はサウンド・ソースがシンセなので、ディケイの変化はもちろん、ピッチ変化による音質の劣化も全く気にする必要はありません。理屈では分かっているのですが、実際にこのドラム・シンセを触ってみると本当に感動的な音の良さです。キック一発でここまで盛り上がってしまってお恥ずかしい限りですが(笑)。 

NOTE REPEATで連打を入力
オートメーションも楽々


続いてハイハットを入れてみましょう。少しクリック/グリッチぽい音色にしたいので、エレクトリックなサンプルをサチュレーターとディレイで少し味付けし(画面②)、リバーブで広げた後にEQで微調整しました。
▲画面② Maschineソフトウェアには高品位なエフェクトが23種類も付属。フィルターやEQ、コンプレッサーなどベーシックなエフェクトに加え、GrainDelay、Ice Verb、Freq Shifterなどのクリエイティブなものも用意。サード・パーティ製のVST/Audio Unitsプラグインを含め、無限にチェインが組める ▲画面② Maschineソフトウェアには高品位なエフェクトが23種類も付属。フィルターやEQ、コンプレッサーなどベーシックなエフェクトに加え、GrainDelay、Ice Verb、Freq Shifterなどのクリエイティブなものも用意。サード・パーティ製のVST/Audio Unitsプラグインを含め、無限にチェインが組める
こうしたエフェクトの追加時も、細かなタグベースの絞り込みがコントローラーから行えますので、文字で読むより簡単に追加していけます(画面③)。
▲画面③ 2.0ソフトウェアより採用されたタグベースのブラウザー。画面のエフェクト・タイプだけでなく、グループやサウンド、インストゥルメントなどをスピーディに探し出せる ▲画面③ 2.0ソフトウェアより採用されたタグベースのブラウザー。画面のエフェクト・タイプだけでなく、グループやサウンド、インストゥルメントなどをスピーディに探し出せる
プラグイン・ストリップはインストゥルメント/エフェクトで個別のレイアウトが設けられており、視認性も良好。もちろんエフェクトのパラメーターも、設定無しですぐコントローラーのツマミにアサインされます。次に空間的な広がりが欲しくなったので、シンセ・パッドを足してみましょう。今回から2GBも増えたファクトリー・ライブラリーからサンプルをロードします。このままコントローラーのパッドをたたくとC3が“ぶぉーん”と鳴るだけですが、パッドを“KEYBOARD”モードにすると音階を弾けるようになります。もちろんコンピューターやコントローラーのMIDI INにつないだMIDIキーボードで演奏することも可能。今回はあまりノートが動き過ぎると雰囲気が変わってしまうので、慎重に白玉シンセ・パッドを足していきました。さらに少しリズミックな動きが欲しくなったので、このシンセ・パッドにサイド・チェイン・コンプをかけてみます。ここでもブラウザーのカテゴリーから絞り込み、付属のスタンダードなコンプレッサーを追加。エディット画面の2ページ目を開くと“Input”というコラムがあるので、ここからトリガーとなるトラックを選ぶだけです。こう書くと階層をたどった小難しい操作に思われるかもしれませんが、必要な情報はコントローラー側に表示されているので、実際はボタンを一つ押すだけ。今回はスタンダードにキックをトリガーとしたいので、先述したパッド1を選択しました。DAWによってはコンプ側でキー・インを不可にしたりバスを用意したりと、幾つかの手順を踏まなければならないサイド・チェインの設定ですが、コンプを挿すだけでその用意ができているのは、とても使い勝手が良いです。続いてメロディックなパーカッションを足したいと思います。サンプルから音色を選び、ロード。16分音符っぽいノリが欲しいのですが、16分音符をたたいて入力するより、簡単にノート・リピート機能を使って入力します。ここも操作はシンプルで、“NOTE REPEAT”ボタンを押しながら16分音符を選択、そのまま音色をアサインしたパッドをタイミングよくたたけば、あっという間にパーカ
ッションが入力できました。結果は、ノリとしては良いのですが少し単調に感じたので、フィルターの開閉で時間的な展開を付けます。ここでも付属のフィルターをロードし、オートメーションを書いていきます。やり方はいたって簡単で、コントローラー上部にある“AU
TO”ボタンを押しながらオートメーションしたいツマミを回すだけ。これでシーケンスに合わせてオートメーションが書けるのです(画面④)。オートメーションの追加による細かな音の変化は昨今のトラック・メイクで必須ですが、ここまで簡単に書けると、DAWでエディットする際に最大の敵として立ちはだかる“めんどくさい!”にも勝っています(笑)。
▲画面④ 上はNOTE REPEATを使って打ち込んだパーカッションのピアノロール画面。フィルターをインサートし、シーケンスに合わせてカットオフ・フリケンシーが自動アサインされたコントローラーのツマミを回すと、オートメーションが下のように記録される ▲画面④ 上はNOTE REPEATを使って打ち込んだパーカッションのピアノロール画面。フィルターをインサートし、シーケンスに合わせてカットオフ・フリケンシーが自動アサインされたコントローラーのツマミを回すと、オートメーションが下のように記録される
またこのオートメーションはパターンの要素として記録されるので、デュプリケートした際もちゃんと反映されます。さて、ミキサー画面を呼び出してフェーダーでバランスを微調整すれば(画面⑤)、トラックの骨組みがあっという間に出来上がります。
▲画面⑤ MaschineソフトウェアVer 2.0より搭載された待望のミキサー画面。ボリューム、パン、AUXセンドなどの操作が非常にやりやすくなった。ピーク・レベル・インジケーター付きメーターも装備し、よりシビアなレベル管理が行える。なお、これらの画面はすべてコントローラーのディスプレイに表示される ▲画面⑤ MaschineソフトウェアVer 2.0より搭載された待望のミキサー画面。ボリューム、パン、AUXセンドなどの操作が非常にやりやすくなった。ピーク・レベル・インジケーター付きメーターも装備し、よりシビアなレベル管理が行える。なお、これらの画面はすべてコントローラーのディスプレイに表示される

フル・バージョンのMassiveが付属
DAWとの連携もスマート


Maschine StudioにはMassiveをはじめとする4種類の音源/エフェクトが付属します。Massiveの音の良さや実際の現場でどれだけ使われているかは言わずもがなですが、あの高品質なサウンドがそのまま付いてくるだけでなく、まるでMaschine Studio元来の機能であるかのように統合された状態で使用できます。しかもMassiveを読み出せばコントローラーにパラメーターが自動アサインされているので、音色を簡単かつディープにエディットしていくことが可能。こうしたエディットの手軽さは、サード・パーティ製のプラグインの場合も同様です。試しに他社製のソフト・シンセを読み込んで音を重ねてみましたが、一般的なパラメーターはコントローラーのツマミに自動で割り振られるようで、先述したAUTOボタンと組み合わせて自由にオートメーションを書けました。こうした自由度があることで、これまで散々使ってきた手持ちのソフト・シンセの別の側面が見えてきたのは驚きでした。こうして出来上がったパターンを複製し、さらに音を足して盛り上げたり、逆に音を抜いて空間的な広がりを出すなどしてバリエーションを作っていきます。後はこれらのパターンを切り替えていくことで(パターン自体をコントローラーのパッドにアサインすることも可能)、トラックの原型はすぐできてしまいます。今回は筆者の趣味でスクエアなテクノの打ち込みをしましたが、パッド・ベースの入力がここまで簡単にできると、ヒップホップやダブステップなど手入力によるグルーブが必要になるジャンルにも有効でしょう。それに関連して2.0ソフトウェアでユニークだと感じたのは、サンプルを読み込むと、“MP60”“S1200”などハードウェア・サンプラーの名機をシミュレートしたとおぼしき出音にできる点(画面⑥)。現在では良い状態の個体を手に入れることが難しい名機のサウンドを、手軽にシミュレートできるのです。最新の数GBに及ぶサンプルを直感的に扱える一方、過去の名機の太い出音までを選択肢の一つとして取り込んでしまっているところがすごいです。
▲画面⑥ Maschineソフトウェアにサンプルを読み込むと、“VOICE & ENGINE”の“MODEL”メニューより“MP60”“S1200”など往年の名サンプラーのアルゴリズムを選択可能。レンジが狭まったマッシブな音が得られる ▲画面⑥ Maschineソフトウェアにサンプルを読み込むと、“VOICE & ENGINE”の“MODEL”メニューより“MP60”“S1200”など往年の名サンプラーのアルゴリズムを選択可能。レンジが狭まったマッシブな音が得られる
ところで、ここまで読んでいただいてお気付きの方もいらっしゃると思いますが、これまでの作業で筆者は一回もコンピューターを触っていません。サウンドをロードしてエディット、パターンのバリエーションを作ってシーンを構成、ミキサーでバランスを微調整……という、トラック制作で必要になるおおよその作業が、コンピューターの画面を確認することなくできてしまいました。さて、Maschine Studioさえあればトラック・メイクが完結するとはいえ、オーディオ・エディットやレコーディングなどDAWが有利な点もあります。最後に、DAWとの連携も試してみましょう。一度プロジェクトをセーブしてスタンドアローンのMaschineソフトウェアを終了。僕が普段使っているSTEINBERG Cubaseを立ち上げてその上でプラグインとして動作してもらいます。先ほどまで作っていたプロジェクトをプラグイン動作中のMaschineに読み込めば、そのまま鳴らすことができます。CubaseのミキサーにはMaschineのメイン・アウトがそのまま立ち上がりますが、パラアウトの設定も可能。さらにMaschineで作ったパターンを、MIDIだけでなくオーディオとしてもCubaseにドラッグ&ドロップして持っていけるという神がかった機能もあります。 今回Maschine Studioで制作してみるまで、発売当初のMaschineの印象から、ドラム・サンプルをロードして手軽にビート・メイクできる機材だと認識していました。ですが実際に使ってみると、プラグイン環境の統合やハードウェアと一体化したエディットの操作感など、守備範囲の広い機材と認識を新たにしました。なお、ソフトウェアだけのバージョン・アップも可能ですが、従来のMaschineユーザーは必須と言っていいです。刷新されたオーディオ・エンジン、新規インストゥルメント、サイド・チェイン、ミキサー画面など、これまで無かったのが不思議なくらいです。では新規に購入を考えていらっしゃる方はどうでしょう。“Maschine Studioはいろいろなことができる反面、難しそう”“バージョン1から使っていないと機能が増え過ぎてついていけなさそう”という気持ちもあるかもしれませんが、今回のバージョン・アップは、これまでのユーザーからのフィードバックを生かしてユーザビリティが大きく向上しており、まさに“今が買いどき”と言えます。まずはぜひ専用コントローラーの質の高さ、ソフトウェアの洗練された音色、何より、それらが一体化した新世代の制作環境を、ぜひ楽器店などで体感してみてください。    (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年12月号より)
NATIVE INSTRUMENTS
Maschine Studio
104,800円
【ハードウェア】 ▪カラー・ディスプレイ:480×272ピクセル×2 ▪電源:15V 1.2A(同梱) ▪スタンド:内蔵式 ▪外形寸法:430(W)×58.5(H)×350(D)mm ▪重量/3.2kg 【REQUIREMENTS:ソフトウェア】 INTEL Core 2 Duo以上のCPU、2GB以上のRAM(4GB以上を推奨) ▪Windows:Windows 7/8(最新Service Pack、32/64ビット)、INTEL Core 2 DuoまたはAMD Athlon 64 X2以上のCPU、2GB以上のRAM(4G B以上を推奨) ▪共通項目:USB2.0ポート、13GB以上のディスク空き容量(フル・インストール時)