DYNACORDVertical Array Series

昨年12月に発表されたDYNACORDのPA用スピーカー、Vertical Arrayシリーズ。パッシブ型の2ウェイ・フル・レンジ・モデルTS400に加え、パワード・サブウーファーのPSD215とPSD218をラインナップしている。今回はこの3製品を500人規模のホールで試してみた。
ウーファー×4を備えるTS400は
小型/軽量ながらパワフルなサウンド
TS400の本体は想像以上に小さく、高域ドライバー×1+ウーファー×4という計5発のユニットを備えているのに、重量は17kg/1台。持ち上げてみると軽く、取っ手も付いているので運搬は楽だ。スタンドに設置しようとしたところ、本体に高さがあるので女性の私にはバランスが取りにくかったが、軽さのおかげで楽に設置できた。まずは聴き慣れているCDを使い、TS400を単体でチェック。RAMSAのアンプで鳴らしてみた。ミキサーなどでEQを施すことなく、すべての設定をフラットにして再生してみたところ、このサイズでこんなに迫力のある音が出るのかと驚きだった。本機は中央2発の低域ユニットでフル・レンジを再生し、上下にある2発は内蔵のバンドパス・フィルターを介して250Hz以上の帯域で垂直方向の指向性を制御している。指向性は一般的な90°×40°なので設置に悩むことはない。高域ドライバーも4発の低域ユニットに負けない力強く抜ける音だ。そして、これら5発のユニットが一列に並び合成されることで、全体として安定した音を生み出している。
TS400とPSD215/218を併用し
外部アンプ不要のシステムを構築可能
次に、15インチ径のサブウーファーPSD215と18インチ径のPSD218をTS400と併用。両機はパワード型なので、卓の出力を直接背面の入力端子へ接続できる。この際TS400はPSD215/218の内蔵アンプで駆動できるため、別途アンプは必要無い。PSD215/218には電源ケーブルが付属するのだが、それに抜け防止ロックが付いているのはうれしい。現場への気遣いだろう。また両機共にDSPを搭載。入力に6バンドEQが内蔵され簡単な調整ができるほか、サブローの位相を反転させたりハイパス・フィルターやディレイをかけることも可能だ。さらに、ユーザー・プリセットとして最大5つの設定を本体に保存できる。ボタンは触りやすく、表示も見やすいのでマニュアル無しでもすぐに使い始めることができた。ただし、操作パネルを備えた背面にはキャスターが付いており、運搬時はパネルが床の方を向くことになるので注意が必要だ。さて、TS400にPSD215/218を追加した音だが、デモを行った500人キャパのホールであれば十分過ぎる音圧と、サブウーファーが加わったことによるバランスの良さが感じられた。ポール・ジョイントによくあるポールの共振も見られず、後方への回り込みも少なく感じた。これは、TS400のユニットが一列に配置されており、ラインアレイのような特性を持つためだろう。近年ダンス公演などのスピーカーでもサブウーファーの使用が増えているが、TS400とPSD215もしくはPSD218のセットならパフォーマンスは十分だろう。PSD215/218は内蔵アンプにより適度な重量があるため、TS400をポール・ジョイントしても安定しており、アクターの入れ替わりが激しいダンス公演でも安心して設置できそうだ。TS400はオプションのマウンティング・ブラケットWMK-25を用いれば壁などに設置することが可能であり、傾斜角度を0°〜30°の範囲で調整できる。映画やお芝居などのリア・スピーカー、宴会場やライブ・ハウス、会議室などのメイン・スピーカーとして幅広く使える1台だ。

DYNACORD
Vertical Array Series
TS400:271,950円 PSD215:432,600円 PSD218:449,400円
⃝TS400
▪スピーカー構成:6.5インチ・ネオジム・ウーファー×4(低域)+1.25インチ・ドライバー(高域)
▪周波数特性:74Hz〜20kHz
▪外形寸法:199(W)×935(H)×281(D)mm
▪重量:17kg
⃝PSD215
▪スピーカー構成:15インチ・ウーファー×1
▪周波数特性:40Hz〜クロスオーバー帯域(−10dB)
▪外形寸法:640(W)×465(H)×694(D)mm
▪重量:39.6kg
⃝PSD218
▪スピーカー構成:18インチ・ウーファー×1
▪周波数特性:34Hz〜クロスオーバー帯域(−10dB)
▪外形寸法:759(W)×575(H)×694(D)mm
▪重量:47.8kg
⃝PSD215/PSD218共通
▪内蔵アンプ出力:1,000W(連続)×2