「MICW I436/I266」製品レビュー:iOSデバイスやスマートフォンに向けた超小型のコンデンサー・マイク

MICWI436/I266
今回レビューするI436とI266は、スタジオ用マイクで知られるMICWから新しく発売された超小型のコンデンサー・マイク。APPLE iPadやiPhoneといったiOSデバイス、そしてSAMSUNG Galaxy S IIなどのスマートフォンの内蔵マイクよりも高音質で録音したい人に向けている。手にしてみると、触れ込み通りのコンパクトさとスタイリッシュさが印象的。I436は全長50mm/重量8g、I266は55mm/16gとなっており、ポケットからおもむろに取り出して“これ、マイクなんだよ”と言えば誰もが驚くに違いない。

iPhone 5の内蔵マイクよりも
ナチュラルで余裕のある音質


冒頭で述べた通り、I436とI266はポケットに入れて持ち運べるコンデンサー・マイク。I436は7.0mm径のカプセルを備えた無指向性モデルで、感度は−44dB(6.3mV/Pa)、最大SPLはiPhone 5に接続する場合120dBとなっている。I266は12mm径のカプセルを採用した単一指向性モデルで、−40dB(10mV/Pa)という感度の高さが特徴だ。

それではチェックを開始しよう。今回はiPhone 5(以下、iPhone)とそれに標準搭載された録音用アプリ=ボイスメモを使用。“モバイル機器での録音クオリティ向上”というI436/I266の開発コンセプトに沿う形で、iPhoneの内蔵マイクとの音質比較を行ってみた。まずはレコーディング・スタジオのブースに入り、アコースティック・ギターへiPhoneの内蔵マイクをオンで設置して録音。iPhone 5ユーザーの方ならご存じの通り、基本的にはハイ上がりのギラッとした音質で、過大入力時はガッツリとリミッターがかかりアタックが強調される。次にiPhoneのヘッドフォン端子にI436を接続。電源はiPhoneから自動的に供給されるので、別途用意する必要はない。早速、先ほどと同様にアコギを録音し、プレイバックしてみる。最初に“おやっ?”と気になったのは、内蔵マイクに比べて録り音の音量が小さかったこと。しかしその分、演奏の音量が大きいときも深くリミッティングされた不自然な音にはならず、バランスが良い。基本的な音のキャラクターもまたナチュラル。内蔵マイクと比べると、ややふくよかなイメージといったところだ。低域もしっかりとカバーできている。そして最後はI266をチェック。基本的な音質の傾向はI436と似ているものの、やや低域がスッキリとした印象で、相対的に中高域がくっきりと聴こえる。 

両モデル共に大音量ソースにも対応
特にI436は低〜高域まで好バランス


以上のテストから分かったことだが、内蔵マイクよりも高い音圧に耐えるようなので、アコギとは違うソースでも試してみた。ブースからコントロール・ルームに戻り、音圧測定器を使いながらモニター・スピーカーから105dBAほどの音量で音源を再生。かなり大音量のロック・コンサートを聴いているような感覚だ。こうした環境のもと、内蔵マイクとI436/I266で録音テストした。結果はと言えば、内蔵マイクはオーバー・レベルでひずんでしまっている状態。当然、ガッツリとリミッティングされている。それに対して、I436とI266はアコギ録りの際に感じたキャラクターと同様ながら、全くひずむことなく録音することができた。特にI436に関しては、ベースからシンバルまで見事にバランス良く録れていて、驚きだった。こうした特性は音楽活動をする人にとって非常に有用だ。例えば“スマートフォンでライブの動画撮影をしたが、音はバリバリにひずんでいた”といったことを簡単に回避することができる。また、ミュージシャンにはリハーサル・スタジオで自分たちのプレイを録音/確認するという作業がつきもの。こうした場面では、専用のレコーダーを使わずともI436/I266をポケットから取り出し、手持ちのスマートフォンに接続するだけで簡単に録音が行える。また、スマートフォン・ユーザーなら録った音源をその場で仲間に送ることもあるだろうから、コンパクトながら内蔵マイクよりも高い音質が得られるI436/I266は、やはり便利なアイテムと言える。さらに、マイク本体以外に小技が効いているのも見どころ。何と、付属ケースがマイク・ホルダーに早変わりするのだ。ケース上部の穴は装飾ではなく、実はマイク本体をピッタリと収納することが可能。底面にはネジ穴が開いているので、標準的なカメラの三脚などに固定することができる。付属の延長ケーブルを使えば、I436やI266をスタンド・マイクとしても使用可能だ。このマイク・ホルダーの代わりに、これまた付属のクリップを使えば衣服に装着できるピン・マイクにもなる。これはかゆいところに手が届く仕様だ。
 なお、MICWからはI436/I266のほか、デジタル一眼カメラやスマートフォンとの併用に向けたガン・マイクIshotgun(27,800円)も発売されている。こちらも興味深い製品なので、気になる人はチェックしてみよう。 
▲I436/I266の付属ケースは、マイク・スタンドとして使用することも可能。ケース上部の穴にはマイクを通すことができ、ケース底面の穴は一般的なカメラ三脚などに取り付けられるようになっている ▲I436/I266の付属ケースは、マイク・スタンドとして使用することも可能。ケース上部の穴にはマイクを通すことができ、ケース底面の穴は一般的なカメラ三脚などに取り付けられるようになっている
   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年10月号より)
MICW
I436/I266
I436:12,800円 I266:14,800円
⃝I436 ▪形式:コンデンサー ▪指向性:無指向 ▪感度:−44dB(6.3mV/Pa) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪外形寸法:9(φ)×50(H)mm(実測値) ▪重量:8g ⃝I266 ▪形式:コンデンサー ▪指向性:単一指向 ▪感度:−40dB(10mV/Pa) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪外形寸法:11.5(φ)×55(H)mm(実測値) ▪重量:16g