150以上の機能を追加したマスタリング/波形編集ソフトの最新版

マスタリングやオーディオ編集&レストレーションに特化したソフト、STEINBERG WaveLabがVer.8になって登場です。非常に高性能な前バージョンのWaveLab 7もレビューさせてもらったので、今回のバージョン・アップでどのように進化したか非常に楽しみであります。

STEINBERGWaveLab 8
マスタリングやオーディオ編集&レストレーションに特化したソフト、STEINBERG WaveLabがVer.8になって登場です。非常に高性能な前バージョンのWaveLab 7もレビューさせてもらったので、今回のバージョン・アップでどのように進化したか非常に楽しみであります。

EBU R-128準拠のラウドネス・メーター
3種類のプラグインも新装備


まずはWaveLabというソフトについて簡単に説明したいと思います。1995年に発売されたWaveLabは、バージョン・アップを繰り返しながら現在は32ビット浮動小数点/384kHz対応のMac/Windows用ソフトとして、プロのエンジニアからオーディオ・ファンまでさまざまなユーザーに使用されています。例えば複数の楽曲をアルバムとしてまとめ上げる、いわゆるマスタリング作業では、EQ/コンプ/リミッターを用いて音質&音圧調整を行い、曲間調整や曲のフェード・イン/フェード・アウトなどを指定してアルバムのマスター・データ(PMCDはもちろんDDPファイルの書き出しにも対応)を作成することができます。またポストプロダクションの現場ではマルチトラックで効果音やナレーションをBGMと混ぜたり、さらにはレストレーション機能が強力なので古いアナログ・レコードをデータ化する際に使うなど、オーディオ・データを扱うにあたって必要な機能がすべてそろっています。もちろん昨今のDAWソフトは多機能&高性能なので、上記のような作業をそれらで行うことも可能でしょう。確かにある程度までは同じことができると思いますが、そこは餅は餅屋。もう一歩進んだオーディオ処理やマスター・データの作成ができるのがWaveLabの利点なのであります。では、WaveLab 8の主だった新機能を1つずつ見ていきたいと思います。まずスピーカー・マネージング・システムという機能。これは8種類のスピーカー構成(最大で8chのサラウンド出力に対応)の切り替えがWaveLab 8上で行えるというものです(画面①)。

▲画面① 最大8chに対応した出力設定を、スピーカー構成として8種類まで登録可能。それらを切り替えながらモニタリングが行える ▲画面① 最大8chに対応した出力設定を、スピーカー構成として8種類まで登録可能。それらを切り替えながらモニタリングが行える
簡単に言うと、多チャンネル出力を持つオーディオI/Oのアウトプットに複数のスピーカーへの信号を振り分け、それらをWaveLab 8でセレクトできるわけです。ラージ、ニアフィールド、コンポ、ラジカセなどを切り替えながら、音の鳴りを比較をして作業が行えます。それぞれレベルも独立して設定できるので、余ったスピーカー構成にレベル小さめの設定も登録しておき、DIMスイッチの代わりに使うというのもアリかもしれません。バス送りで分けるのとは違い、マスター・チャンネルを通った音を複数のモニターで比較できるのが利点となります。自分も今は外部ミキサーを介さずにオーディオI/Oから2種類のモニター・スピーカーに信号を直接送っているため、この機能はうれしいところです。続いて、マスタリングにおいて音質調整と同様に重要なのが音圧の調整です。WaveLab 8はEBU R-128準拠のラウドネス・メーターを搭載しており、メーターはリアルタイム表示のほか、時間軸に沿った変化をグラフ化することも可能です(画面②。
▲画面② EBU R-128準拠のラウドネス・メーターを装備。上段のブロックがリアルタイム表示、中段の波形表示を挟んで、下段が時間軸のグラフ表示となる ▲画面② EBU R-128準拠のラウドネス・メーターを装備。上段のブロックがリアルタイム表示、中段の波形表示を挟んで、下段が時間軸のグラフ表示となる
マスタリング時の音圧調整の指標とするのはもちろんですが、市販のCDをリッピングして音圧の参考用に使うのも良いと思います。そしてWaveLab 8から新たにVoxengo Curve EQ、Tube Compressor、Brickwall Limiterという3種類のプラグインが加わりました(画面③)。
▲画面③ 今回新たに装備されたプラグインは3種類で、Tube Compressor(上)、Brickwall Limiter(右)、そして左ページの画面右下に見えるVoxengo Curve EQ。そのほかWaveLab 8には合計35種類のプラグイン・エフェクトがスタンバイする ▲画面③ 今回新たに装備されたプラグインは3種類で、Tube Compressor(上)、Brickwall Limiter(右)、そして左ページの画面右下に見えるVoxengo Curve EQ。そのほかWaveLab 8には合計35種類のプラグイン・エフェクトがスタンバイする
Voxengo Curve EQは64バンドのEQで、内蔵のスペクトラム・アナライザーでオーディオの周波数特性を確認しながらEQしていけるため、サウンドをかなり追い込んでいけます。Tube Compresserは、DRIVEツマミを上げるとただひずんでいくだけではなく、温かみのある帯域が増える感じのコンプ。おいしいところで止めると非常にファットなサウンドになりました。Brickwall Limiterは、0dBでしっかりレベルを抑えてくれるマスタリングに欠かせないリミッターです。あまり突っ込み過ぎるとひずみや不自然なダッキングが起こるので、薄っすら引っ掛けておくと自然な感じに仕上がると思います。個人的には3dBリダクションするくらいがちょうど良いと感じました。MS系のプラグインが追加されなかったのはちょっと残念に感じましたが、そこはサード・パーティ製のプラグイン(VST/DXに対応)で補えるので問題は無いでしょう。さらにディザリング機能としてIZOTOPE MBIT+が加わりました。このディザもかなり好印象でした。かけたときの音色変化を、サウンドの表皮が薄っすらめくれる手前くらいに抑えてくれます。文字では表現できない感覚なので、ぜひ体感してもらいたいです。 

スーパークリップで作業効率アップ
異なるサンプル・レートの素材も混在可


オーディオ編集用であるモンタージュ・ワークスペースの使い勝手も、WaveLab 8でさらに向上しています。主だったところで言うと、複数のクリップ(波形リージョン)を“スーパークリップ”としてまとめて扱えるようになりました。そもそもWaveLabはクリップごとにチャンネル・ストリップを持っており、それぞれ異なるエフェクト処理が行えるのですが、それらをスーパークリップとしてまとめて処理が行えるというわけです。トラック>スーパークリップ>クリップという階層をイメージすると分かりやすいかもしれません。しかも単なるグループ化と違って、もう少し複雑なまとめ方ができます。マスタリング時なら、曲の一部のクリップだけ任意のエフェクトをかけて曲全体にマスタリング処理を適用したり、ポスプロの現場ではSEをまとめるのに便利でしょう。なお、各クリップの詳細な調整はサブモンタージュ画面に入って行うことが可能です(画面④)。
▲画面④ スーパークリップ内のクリップを個別に処理するためのサブモンタージュ画面。WaveLabはクリップごとにチャンネル・ストリップを持つ構造となっており、ここで各クリップにエフェクトをかけた結果は即座にスーパークリップの波形表示に反映される ▲画面④ スーパークリップ内のクリップを個別に処理するためのサブモンタージュ画面。WaveLabはクリップごとにチャンネル・ストリップを持つ構造となっており、ここで各クリップにエフェクトをかけた結果は即座にスーパークリップの波形表示に反映される
さらに異なるサンプリング・レートを持つファイルを1つのモンタージュ・ワークスペースで扱うことが可能になりました。作業の最終段階までそれぞれのサンプリング・レートに余計なコンバートが入らないので、音質を保ったまま作業できます。このほかにも、150を超える改良がなされているため、ここではそのすべてを紹介しきれませんが、前バージョンも触っている自分としては細かい部分がブラッシュ・アップされていて、さまざまな用途での使用が増えるのではと感じました。ちなみに、エンジニアリングに特化しているWaveLabですが、個人的にDJをやっている人にもWaveLab 8をお薦めしたいと思います。パソコンでDJするのは当たり前の時代になりましたが、古いアナログの良曲がCDやデータ化されていないケースもまだまだたくさんあります。そこでレストレーション機能が充実しているWaveLabが役に立ちます。順序としては、レコードをかけっぱなしにして録音したものを、付属のSONNOX製ノイズ除去プラグインをかけたり、EQ/コンプ処理をしてリマスタリング。そして曲ごとにマーカーを打ち、レンダリングして1曲ずつファイルに書き出して終了。いわゆるマスタリングと変わらない工程で、アナログのデータ化が行えます。気を付けることと言えば、録音時のレベルの取り方くらいでしょうか。WaveLabは複数のウィンドウを行き来きすることがなく、シングル・ウィンドウで効率良く作業できるので、スムーズに操作を覚えられると思います。DJの方も持っていて損は無いでしょう。 WaveLab 8を触ってみて一番感じたのが、慣れると作業がどんどんしやすくなるということです。一般のDAWとはインターフェースが異なるので一見取っ付きにくそうに感じるかもしれませんが、汎用的なオーディオ編集作業は簡単に慣れてしまいました。使えば使うだけ手になじむソフトという印象です。    (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年9月号より)
STEINBERG
WaveLab 8
オープン・プライス (市場予想価格:59,800円前後)
▪Mac:Mac OS X 10.8(32/64ビット)、INTEL Core Duoプロセッサー、Core Audio対応デバイス ▪Windows:Windows 7/8(共に32/64ビット)、INTEL/AMDデュアル・コア・プロセッサー、Windo ws対応オーディオ・デバイス(ASIO推奨) ▪共通項目:2GB以上のRAM、1GB以上のハード・ディスク空き容量、1,024×768ピクセル以上のディスプレイ、DVD-ROMドライブ、USBポート(USB-eLicenser接続用)、インターネット環境(アクティベート/ユーザー登録)