「TRITON AUDIOPRESONUS BlueTube DP V2」製品レビュー:真空管を搭載しDIとしても使用できるハーフ・ラックの2chプリアンプ

TRITON AUDIOPRESONUSBlueTube DP V2
64ビットDAWのStudio OneやAudioBoxなど、ユニークかつ実用的な製品が話題になっているPRESONUSから、独自のソリッド・ステートによる透明なサウンドに真空管サチュレーションを追加できるマイク・プリアンプが登場した。早速チェックしてこう。

2系統のVUメーターを搭載するほか
マイクプリに欠かせない基本機能を装備


本機はマイクや楽器の入力に対応した2chのプリアンプである。ステレオ入力はもちろん、ボーカル・マイク+楽器(ギターやベース、シンセなど)といったモノラル2系統の独立した使い方も可能。マイク入力は65dBの増幅が行え、楽器においてはゲイン調整可能なダイレクト・ボックス(DI)として使用することができる(トータルの可変ゲインはマイク/楽器入力ともに80dBの範囲となっている)。ではまず、宅録環境では意外と重要なイン/アウトの端子形状から確認してみよう。入力にはマイク用XLRとインストゥルメント用フォーンのどちらでも受けられるようにコンボ・タイプの入力ジ端子を採用している。宅録ではSHURE SM58などのダイナミック・マイクをXLR→フォーン変換ケーブルで使用している方も多いと思うが、コンボ入力端子ならそのまま挿せるので便利だ。また出力はXLRバランス出力とフォーン・タイプのアンバランス出力の両方を備えているので、本機の後にコンプレッサーやイコライザーなどのアウトボード、またはミキサーへ接続する場合に民生機/プロ機の入力受け違いがあっても面倒なことはないだろう。では次に前面パネルを見てみよう。一番目立つのは両端に配置されたVUメーター! 本機はハーフ・ラック・サイズであるが、このサイズでチャンネル2系統の両方にVUメーターが付いているのはうれしい。しっかり出力レベルを確認することができるだろう。各チャンネルにはスイッチが4つあり、オンで青いLEDが点灯するので暗所でも各機能の状態が分かりやすい。左から順に説明すると、48Vスイッチはコンデンサー・マイク用のファンタム電源。次の位相反転(∅)機能は、例えば複数本のマイクを使用して録音するドラム、またはステレオ音源の録音などで位相の補正をするために無くてはならない機能なのだ。次の−20dBのPADスイッチで音量レベルの大きい入力にも対応できる。80Hzのハイパス・フィルターは不要な低音や低周波のエア・ノイズなどを減衰できるので、例えばボーカル録音では声に明りょう感が出るだろう。このようにマイク・プリアンプに欠かせない基本機能はしっかりと搭載されている。 

簡単操作で真空管ドライブによる
サチュレーションを付加可能


スイッチの下のツマミはTUBE DRIVEコントロールとGAINで、本機の最大の特徴はそのTUBE DRIVE機能が搭載されている点である。12AX7という真空管が使用されており、PRESONUS独自のXMAXクラスAマイク・プリアンプで得られる透明なサウンドに、真空管ドライブのサチュレーションを追加することが可能なのだ。簡単に言えば音源をローノイズ&クリアに取り込めることはもちろん、その音に“ひずみ”を加えることができるということ。一見矛盾しているように思えるが、ここで言う“ひずみ”とはギターのディストーションのような分かりやすいものではない。説明していると別の分野の長い話になってしまうので“サチュレーション”と一言で言ってしまうが、これが加わることによって音に音圧や存在感、またはつやが増してくる。“ひずみ”を付加することは実際にエンジニアが行っていることでもあり、マスタリングにおいてはさらにもっと重要な技術要素となっている。本機能はサチュレーショの効果を簡単なツマミ一つの操作だけで行えるという優れもの。なお、TUBE DRIVEツマミに付いているクリック・スイッチで機能のオン/オフが可能となっている。それでは実際に本機を試してみた感触をお伝えしよう。まず一般的なコンデンサー・マイクを接続してみたが素直に問題なくクリアな音である。どんなものをつないでもマイク本来の音色が楽しめるだろう。逆にソリッド・ステートを売りにしているため、トランスやオペアンプ部品で構成しているプリアンプのようなキャラクター色は求められないので、何かひと味足したいと思ったときにTUBE DRIVE機能を使用してみると良いと感じた。ただ、コンデンサー・マイクでの歌録音などはなるべくクリアに録りたいだろうから、TUBE DRIVEはあまり利用しないと思えるが(もしエフェクト的に使うならば話は別だが)、例えばダイナミック・マイクでの歌録りや楽器録音、またはシンセやベースなどのライン録りなどで音に物足りなさを感じたら、TUBE DRIVEを与えることによって良い変化を期待できる。実際にエレキギターを直接本機につなぎDAWに取り込んで試聴してみたのだが、TUBE DRIVEツマミが10時くらいのところで効果が現れ、ラインのギター音でありながら存在感のある音になった。さらにツマミを12時くらいまで上げると確実に音は変化しだし、それ以上はエフェクトに近い効果となってくる。DIとして使用するならば本機さえあれば十分に良質な音を取り込めると感じた。 ミキサーをはじめ、最近のオーディオ・インターフェースにはプリアンプ搭載の機種も多く、本製品のような単体プリアンプの立ち位置は非常に難しいかもしれない。しかしながら、一般的なミキサーより良質で広いヘッドルームを備え、2chのDIとしても使え、さらにサチュレーション効果を加えられるという非常に珍しくもあり、ユニークな製品であることには間違いないだろう。 
 
▲リア・パネルの端子は、左からDC IN、出力×2系統(XLR、フォーン)、入力×2(XLR/フォーン・コンボ) ▲リア・パネルの端子は、左からDC IN、出力×2系統(XLR、フォーン)、入力×2(XLR/フォーン・コンボ)
 (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年8月号より)
TRITON AUDIOPRESONUS
BlueTube DP V2
23,000円
▪最大ゲイン/65dB ▪マイク入力インピーダンス/1.3kΩ ▪インストゥルメント(Hi-Z)インピーダンス/1MkΩ ▪ソリッド・ステートTHD+N/0.005%未満 ▪真空管ステージTHD+N/0.01%〜30% ▪SN比/95dB未満 ▪電源電圧変動除去比/98dB以上 ▪出力インピーダンス/51Ω ▪外形寸法/241.3(W)×44.45(H)×139.7(D)mm ▪重量/1.8kg