【お知らせ】6月20日の申込/更新分より、サンレコWebのサブスクリプション価格を改定いたします。詳細はこちらをご覧ください。また、6月17日までWeb+印刷版(年間)を約30%オフでご提供しています。

英国の名門エア・スタジオでテープ収録したオーケストラ系ソフト音源

SPITFIRE AUDIOAlbion Vol.1
オーケストラ系のライブラリーと言えば、ロサンゼルスを中心としたアメリカ、もしくはオーストリアやドイツなどヨーロッパ製のものが現在の主流です。今回レビューするSPITFIRE AUDIO Albion Vol.1は映画やTVなどのサウンドトラックの制作に適したスケール感のあるサウンドの管弦楽器やパーカションなどを中心としたシネマティック・ ライブラリーですが、なんとエア・スタジオ(ロンドン)のリンドハースト・ホールでビンテージの真空管&リボン・マイクや2インチ・アナログ・レコーダーを使用し、色濃くブリティッシュ・サウンドのエッセンスが込められた英国産のソフト音源です。Mac/Windows両対応で、VST/Audio Units/RTAS/AAXもしくはスタンドアローンで使用できます。

オーケストラを中心に打楽器やループ
アトモスフィア系音色まで収録


現在、オーケストラ系の音源は大きく2つのタイプに分類できます。一つは高度なシミュレーションを実現するために多数の奏法やアーティキュレーションを用意した大容量&細分類型のライブラリーで、ディビジ(分かれて演奏すること)に対応するため奏者の人数などのバリエーションが用意されているものもあります。もう一つはパートごとに細かく分けるのではなくアンサンブル全体としてのサウンドに重点を置き、ディテールよりも一音の持つ表現力やトータルでのサウンドの質感を優先させたタイプで、Albionはこの部類に属します。管弦楽器(ALBION ORC
HESTRA)、打楽器(DARWIN PERCUSSION)、リズム・ループ(BRUNEL LOOPS)、アトモスフィア系(STEPHENSON'S STEAM BAND)の4種類のカテゴリーに分けられた収録サウンドの全体的な特徴を一言でいうならば“Dark & Massive”。中低域に重心があり少しかげりのあるトーンは、ロンドンの曇り空を連想させるものがあり、どこかピーター・ガブリエルなどを思い起こさせ個人的にツボにハマりました。 

存在感ある音色と実用性を両立
マイキングも調整可能


メインとなるALBION ORCHESTRAのストリングス、ブラス、ウッドウィンドはバイオリン、トランペットといった個別の楽器ごとではなく、Strings Hi(1st、2ndバイオリン、ビオラ)、Strings Low(チェロ、コントラバス)などのようにセクションとして収録されています。キー・スイッチで奏法やアーティキュレーションを切り替える方式で、ストリングスなどはFXも含め15種類ほどあり、ベーシックなパッチではそのうちShort、Pizz、Long(Sustain)の3種がロードされ、そのほかに必要なものはユーザーが呼び込む仕様。不必要にメモリーを消費しないようになっています。ストリングスにトレモロとトリルが用意されていないのがちょっと残念ですが、全体的にとても丁寧にプログラムされており、音の立ち上がりも速めで音程ごとのバラつきも少なく、演奏しやすいのには感心しました。また簡単なパラメーター操作でサンプルのスタート・ポイントを調整できるパッチや、ピチカートやスピッカートなど短い音価の奏法の伸ばし具合を調整できるパッチなど、制作現場でのニーズにも配慮があります。SPITFIRE AUDIOが2人のTV&ゲーム音楽のコンポーザーが起こしたメーカーなので、クリエイター目線での使いやすさを考えているからだと思います。収録の基本はデッカ・ツリー(イギリスのDecca Recordsが採用しているマイクのセッティング方式)で、ナチュラルなステレオ感が得られます。音色によって異なりますが管弦楽器などはクロース/デッカ・ツリー/アンビエント/アウトリガー(デッカ・ツリーの一番外側にあるL/R)の最多で4つのポジションのマイクで収録。各ポジションの音は長い余韻などの派手な効果は一切なく、一見地味ですがプロのエンジニアが喜びそうな実用性を持った高品位なサウンドでまとめられています。クロースを上げれば音像が近くなり、アンビエントは奥行き、アウトリガーは左右の広がり具合の微調整と役割分担が明りょうで、セッティングを追い込めばエフェクトでは不可能なデリケートな効果を得ることができるでしょう。打楽器系のサウンドや“STEPHENSON'S STEAM BAND”と名付けられたアトモスフィア系のサウンドも独特な重量感と雰囲気を持った音色で、UKプログレ好きにはたまらないと思います。テープ・レコーダーの恩恵なのか打楽器のメタル系サウンドも良い感じにカドが丸くなり、アンサンブルの中で点にならずに使いやすいです。迫力がありながら、どこかハリウッドなどの派手さとは違う、重厚な品格のようなものを感じさせるところが“英国”なのかもしれません。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年8月号より)
SPITFIRE AUDIO
Albion Vol.1
52,605円 (2013年7月1日現在/ 為替レートによって変動)
▪Mac/Mac OS X 10.6以降、INTEL Core Duo 1.66GHz以上のCPU、4GB以上のメモリーを推奨、44GB以上のハード・ディスク空き容量、VST2.4/Audio Units/RTAS(Pro Tools 9)、AAX Native/スタンドアローン対応 ▪Windows/Windows 7(64ビット環境を推奨)、INTEL Core DuoまたはAMD Athlon 64 1.66GHz以上のCPU、4GB以上のメモリーを推奨、44GB以上のハード・ディスク空き容量、VST 2.4/Audio Units/RTAS(Pro Tools 9)/AAX Native/スタンドアローン対応