アサインする機能によって
フェーダーのバックLEDの色が変化
SI Expression 2は、入力端子として24個のマイク/ライン・インや2系統のステレオ・ライン・イン、1系統のAES/EBUインを装備。マイク/ライン・インには、同社PA用デジタル卓のハイエンド機VI1譲りの高品位なマイクプリが搭載されており、筆者が普段PA時に使っているSI Compact 32と比べて、より中域寄りのウォームなサウンドになっています。アナログ卓に近い音質ですね。出力端子は、16個のライン・アウトやAES/EBUアウトが用意されており、オプションのI/Oボックスと併用すれば最大64chの音声信号を送受信できます。バスは全14系統のAUXをはじめ、マスター/マトリクス/エフェクトといったバリエーション。そのほか29種類のLEXICON製エフェクトや全出力にかけられるグラフィックEQなどを備え、デジタル卓としての基本機能は押さえています。さて冒頭で述べた通り、本機の特徴は何と言っても直感的な操作性。まずトップ・パネルの“ACS(Assignable Channel Strip)”エリアでは、チャンネルEQ/コンプ/ゲートなど使用頻度の高い機能を決まったツマミに割り当てることができます。どんなチャンネルを操作するときも各ツマミの機能は変わらないため、ややこしくありません。ACSエリアのすぐ下に並ぶ“TOTEM(The One Touch Easy Mix)”スイッチも非常に便利。このスイッチを押すと、チャンネル・フェーダーを任意のバスへの出力フェーダーに切り替えることができます。例えば“ドラマーのモニターにボーカルをもっとください”と言われたら、①ドラマー用のモニターがアサインされたAUXバスのスイッチを押す→②ボーカルのフェーダーを上げる、という2ステップで調整完了です。フェーダーに割り当てた機能が変わると、内部のLEDの色が変わるフェーダー・グロウ機能も操作性を高めてくれます。例えばあるチャンネルにステレオ入力をアサインした場合は紫、グラフィックEQのゲインを割り当てると赤、という具合に色が変わります。変化が一目で分かりやすいですね。
AUXバス・センドは
プリ/ポストフェーダーを切り替え可
ジタル特有の便利な機能も搭載。各種設定を保存する機能=スナップショットは、複数のバンドが出演するライブのPAでは必須です。保存した設定をロードするときに“バス・センドのみ呼び出さない”などと細かく指定できるので、場面に合わせた応用が利きます。チャンネルごとの設定を複製するコピー&ペーストも使いやすく、機材トラブル/変更があった際などにゼロから設定を作るよりも素早く立て直すことができます。従来の“SI”系コンソールの利点が受け継がれていることは分かりましたが、変更もしくは省略された機能は無いのでしょうか? 上位機種のSI Performerシリーズと比較すると、照明機器の操作機能や各チャンネルの小型液晶などが省かれています。しかしSI Compactシリーズと比べてみると……何と驚くべきことに、ほぼ違いがありません! 機能面で劣っている部分は見当たらず、むしろ6系統のAUXバスがモノラル/ステレオの切り替えに対応していたり、チャンネル単位でAUXバス・センドのプリ/ポストフェーダー切り替えが行えるなど、かゆいところに手が届く仕様になっています。変化した点と言えばACSエリアのカラーリングが少しポップになったことと、オートメーション時のフェーダーの動きがやや緩やかになったことでしょうか。どちらも好みの領域ですが、カラーリングに関しては他シリーズと並べてみない限り気になりません。フェーダーは動きが滑らかになっているので、むしろこちらの方が好みという人も多いでしょう。アナログ的な操作性とデジタル特有の利便性が継承され、さらに使いやすく進化したSI Expressionシリーズ。価格的にも入手しやすいので“新しい卓が欲しいけどデジタル卓は不安”という中小規模の現場にお薦めしたい一台です。