「ARTURIA Minilab」製品レビュー:MIDIコントローラーと5,000音色を備えたソフト・シンセのバンドル

ARTURIAMinilab
今回ご紹介するのは、ARTURIA MinilabというユニバーサルMIDIコントローラーだ。これには同社の新ソフト・シンセAnalog Lab(画面①)が付属し、“ハイブリッド・シンセ”という名を冠した製品になっている。これまでも素晴らしいソフトとコントローラーを世に送り出しているARTURIA、今回も期待に添うものかチェックした。

▲画面① 付属ソフトのAnalog Lab。基本は5,000以上のプリセットを備えたシンセ音色ライブラリーだ。同社Vシリーズのソフト・シンセを所有していれば、Analog Labでそのシンセを使った音色をセレクトしたときに、Vシリーズで同じ音を呼び出して本気のエディットを継続できる

▲画面① 付属ソフトのAnalog Lab。基本は5,000以上のプリセットを備えたシンセ音色ライブラリーだ。同社Vシリーズのソフト・シンセを所有していれば、Analog Labでそのシンセを使った音色をセレクトしたときに、Vシリーズで同じ音を呼び出して本気のエディットを継続できる
 

軽くて扱いやすいコントローラーは 25鍵/16エンコーダー/8パッド装備


ARTURIAはMOOG Modularをはじめとして、SEQUENTIAL Prophet-5、ARP 2600など、往年の名機を精密にモデリングしたソフト・シンセを開発してきた。その再現度はすさまじく、当時、実機を目の前にしたときのような重厚さまで感じさせるほどだ。しかしその一方で、ARTURIAはライト・ユーザーのために鍵盤型のMIDIコントローラーと上記のソフト・シンセのアルゴリズムを使いつつ、プリセットを膨大に用意したハイブリッド・シンセのAnalog Experienceシリーズも発売している。曲作りやアレンジをする上で、とにかくプリセット音色がたくさん欲しいというミュージシャンにとっては非常に使いやすい製品だ。本機はその最新機種であり、サイズ的にも末っ子と呼ぶのがピッタリ来るものだ。 まずはハードウェアのMinilabから見ていこう。見た目よりもずっと軽く、箱を持った瞬間“軽い!”と思う感じだ。それもそのはずで、ボディ全体にプラスチックを採用している(サイド・ウッドも木目調のプラスチックだ)。でもヤワな感じはしないし、使っていて動いてしまうほどの軽さでもないので、とても良いバランスだ。 25鍵ベロシティ付きミニ・キーボード、16個のロータリー・エンコーダー、8個×2バンクのパッド、そしてタッチ式のピッチ・ベンド/モジュレーションという構成で、左側のサイド・パネルにフット・スイッチ用端子とUSBが付いている。 クラス・コンプライアント・バス・パワーを採用しており、本機をパソコンにUSB接続すれば自動的に電源が供給され、ドライバーのインストールも不要。またAPPLE iPadでも使用可能だ(Camera Connection Kitが別途必要)。各コントローラーの細かい設定についてはMinilab MIDI Control Center(画面②)というアプリケーションから行う。同梱のAnalog Labを使うときは特に設定する必要は無いが、ほかのソフト・シンセなどを操るときには、細かいセッティングができるこのアプリの恩恵を感じるだろう。
▲画面② MinilabのMIDIマッピングなどが行えるMini lab MIDI Control Center。ロータリー・エンコーダーは絶対値か相対値(3モードある)、また最大値と最小値は幾つにするかといった非常に細かい設定が可能だ ▲画面② MinilabのMIDIマッピングなどが行えるMini
lab MIDI Control Center。ロータリー・エンコーダーは絶対値か相対値(3モードある)、また最大値と最小値は幾つにするかといった非常に細かい設定が可能だ
 

同社シンセ音源の旨味を凝縮し Minilabとの連携も抜群の付属ソフト


次にソフトのAnalog Labについて。これは同社のModular V、Mini V、Arp 2600 V、CS-80 V、Jupiter-8 V、Prophet V、Oberheim SEM V、Wurlitzer Vのコア部分をすべて内包し、5,000音色ものプリセットを備えたソフト・シンセだ。スタンドアローンもしくはVST/Audio Units/RTASで動作するMac/Windows用ソフトで、エフェクトも内蔵している。ARTURIAには同じコンセプトのAnalog Laboratoryというソフトが既にあり、僕も最初は同じものかなと思っていたのだが、改良されて別のソフトに生まれ変わっていた。REXファイルの内蔵リズム音源は無くなったが、シンセの音色は増えて、画面デザインも刷新されている。また音色をレイヤー/スプリット設定できるマルチモードや、ライブ・モード(後述)など演奏時に便利な機能も追加された。 Minilabとの相性は当然のことながら抜群に良い。各音色でキモとなるパラメーターがあらかじめMinilabのロータリー・エンコーダーに割り当てられており、音色を選んでちょっとエディット、という流れが非常にスムーズだ。またライブ・モードではパッド部に音色を割り当て、プレイ中に替えることも簡単に行える。音色的にはARTURIA特有の音ヤセの無い、オケに混ぜてもちゃんと存在感を出すサウンドだ。 本機はユーザーの意見を取り入れつつ、正常進化した同社最小のMIDIコントローラーである。鍵盤の弾けない人でもちょっと音を確認したいとか、DAWの側にあったら便利なものの1つだ。今まで大きさがネックになり卓上に置けなかった人も、このサイズなら満足できると思う。     (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年7月号より)
ARTURIA
Minilab
16,800円
(Minilabコントローラー) ▪外形寸法/373(W)×50(H)×191(D)mm ▪重量/約1kg 【REQUIREMENTS】(Analog Lab) ▪Mac/Mac OS X 10.6以降、2GHzのマルチコア・プロセッサー(INTEL製CPUのみ)、2GBのRAM、インターネット接続環境、動作フォーマット:Audio Units/VST/RTAS/スタンドアローン ▪Windows/Windows 7/8、2GHzのマルチコア・プロセッサー、2GBのRAM、インターネット接続環境、動作フォーマット:VST/RTAS/スタンドアローン