
最大24ビット/192kHzに対応
MIDI鍵盤用USB端子も新装備
本製品は24ビット/192kHzに対応し、マイク/ライン入力(ギター対応)×2(XLR/フォーン・コンボ)、ライン出力×2(フォーン)とヘッドフォン出力(フォーン)×1系統の2イン/4アウト仕様。マイク/ライン入力とライン出力は付属のブレークアウト・ケーブルを使って接続します。
トップ・パネルは視認性の良い有機LEDディスプレイと大きなエンコーダー・ノブを配置し、非常にシンプル。エンコーダーは押し込むことによってマイク入力のゲインや出力レベルへも素早くアクセス可能。トップ・パネルにはタッチ・センサーも2つ付いていて、モニターのディム/ミュートなど多様な機能がアサインできます。
Macで使う場合はMaestro 2というミキサー・ソフトをインストールするのですが、このソフトからマイク/楽器切り替えやファンタム電源のON/OFF、ダイレクト・モニタリングのミキサー調整などが可能。前述したように、ライン出力とヘッドフォン出力は別系統なので、独立したモニター・ミックスも作ることができます(後述しますがiOS版のMaestroもあります)。……と、ここまで紹介したスペックはDuet 2とほぼ同じなので、何が違うのかな?と製品写真を比較したところ、リア・パネルに“MIDI”と書かれたUSB端子を発見。ここにUSB仕様のMIDIキーボードを接続できるようになったわけです。
中域の表現力に秀でたマイクプリ
iOS機でもパソコンと同様の使用感
音質の評価に移りましょう。まずは比較対象にAVID HD I/Oを用意して、パソコン上のABLETON Liveで同じミックス・ファイルを再生してみます。録音チェックに関しては、ボーカルとアコギをNEUMANN U87AIで収音し、さらに直接エレキギターもつないで検証してみました。
再生音質ですが、48kHzのファイルを再生してみるとHD I/Oとだいぶ違います。中域に立体感のあるHD I/Oと好対照というか、本機はむしろAVID 192 I/Oの印象に近く、本機や192 I/Oが凹レンズ、HD I/Oが凸レンズのような感じで、HD I/Oから本機に切り替えるとステレオ感がガーンと広がります。もちろん広がり感が優秀ということは位相特性が良いということです。キックもHD I/Oより重心が低く、高域のハイハットもスーッと天井まで伸び切ったような感じです。
96kHzの再生音質はより力強さが増す印象で、グッと前に押し出していく音に変化しました。ヘッドフォンに関しては、ライン出力とはまた別にチューニングしているのでは?と思うくらい低域/高域をうまくまとめており、耳に痛くなく聴き疲れしない音質。これは見事です。内蔵マイクプリを使った録音チェックでは、中域のディテールの表現力が素晴らしいと感じました。本機の使用環境で想定される“ボーカル録り”に最も適した音質にチューニングされている印象です。
続いてiOS機でのチェック。本機と僕のiPad2をUSB-30ピンDockケーブルで接続し、App Storeで専用アプリのMaestroをダウンロードします。するとパソコンで見慣れたMaestroの画面がiPad2上に現れました。APPLE GarageBandを立ち上げてデモ曲を再生してみると、パソコン環境に劣らない良い出音。調子に乗ってMIDIキーボードをつないで音源を鳴らそうとすると、アレ音が出ない?? USBパワーで駆動するMIDIキーボードですが、どうやら本機からの供給電力が足りないらしく、より小型のMIDIキーボードに変えてみるとバッチリ出ました。いいですね! 続いてエレキギターの録音では、普通に良い音で録れました……正直、こんなにまじめに録れるとは思っていませんでしたよ。STEINBERG Cubasisなど高機能化したアプリと組み合わせれば、可能性はもっと大きく広がっていくと思います。
小型のオーディオI/OがiOS機と合体すると、こんなに別次元の使い方ができるわけですね。将来iPadだけで曲を作ってビッグ・ヒットを飛ばすアーティストも出てくるかもしれません。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2013年6月号より)