「YAMAHA Nuage」製品レビュー:コントロール・サーフェス&I/OとNuendoから成る統合DAWシステム

YAMAHANuage
ついこの間まで、サウンド・エンジニアという仕事の大半は、ノブのたくさん付いた卓の前に座って、スピーカーとスピーカーの間の虚空を見つめながらフェーダーを触るというものでした。この20年で世の中の多くの仕事がコンピューターを相手にするものに変わるとともに、この仕事も画面を見つめキーボードとポインティング・デバイスでするものに変わりました。既に最初からそちらで始めた方は、マウスでミックスした方が楽だという話も聞きます。しかし最近では、また多くのフェーダーとノブでコントロールする方向に戻っているように思えます。ちょうど、YAMAHA DX7やROLAND D-50といったデジタル・シンセが、アナログ・シンセの象徴であるノブを排除して市場を席巻した後、バーチャル・アナログ・シンセが登場し、またノブの時代が到来したのと似ているかもしれません。このNuageはアナログのラージ・コンソールに引けを取らない操作性を持ったDAWシステムです。

コントローラーはイーサーネット
Nuage I/OはDanteネットワークで接続


NuageシステムはコントローラーとオーディオI/O、そしてDAWソフトのSTEINBERG Nuendo(Mac/Windows)で構成されています。まずコントローラーの1つNuage Fader(写真①)は、16本のフェーダーと32個のマルチファンクション・ノブから成り、Nuendoのミキサー機能を見た目通りに使いやすく配置してあります。もう1つのコントローラーがNuage Master(写真②)で、ジョグ・ダイアル、テン・キー、モニター・コントローラーなどNuendoの多くの機能を集中的に配置し、上部のタッチ・スクリーンではマスター・セクションの機能だけでなく、選択チャンネルのEQやダイナミクス・セクション、CUEミックス、プラグイン・エフェクトなどを操作できます。

▲写真① Nuage Fader(オープン・プライス)。別途用意した24インチ・ディスプレイを本機の上部にセットすると、Nuendo 6のミキサー画面と本機のチャンネル・ストリップの縦のラインが一致して、シームレスな操作が可能に。16ch分用意された各チャンネル・ストリップには、ムービング・フェーダーとマルチファンクション・ノブ×2を備え、Nuendo/Cubaseでおなじみの“e”ボタン(チャンネル設定画面の呼び出し)なども用意 ▲写真① Nuage Fader(オープン・プライス)。別途用意した24インチ・ディスプレイを本機の上部にセットすると、Nuendo 6のミキサー画面と本機のチャンネル・ストリップの縦のラインが一致して、シームレスな操作が可能に。16ch分用意された各チャンネル・ストリップには、ムービング・フェーダーとマルチファンクション・ノブ×2を備え、Nuendo/Cubaseでおなじみの“e”ボタン(チャンネル設定画面の呼び出し)なども用意
▲写真② Nuage Master(オープン・プライス)。質感や重量にこだわって設計されたという大型のジョグ・ダイアル、8つのファンクション・ノブ、タッチ・スクリーン、そしてオートメーション/モニター切り替え/エディット/アサイナブル系の各種ボタンを配置 ▲写真② Nuage Master(オープン・プライス)。質感や重量にこだわって設計されたという大型のジョグ・ダイアル、8つのファンクション・ノブ、タッチ・スクリーン、そしてオートメーション/モニター切り替え/エディット/アサイナブル系の各種ボタンを配置
コントローラー上部に配置されているディスプレイは、Nuage専用のものではなくHPの24インチ型がオプションとして採用されています(他のディスプレイも使用可能)。画面に表示されているNuage用のミキサーやチャンネル・ストリップ(フェーダーの無い状態)はNuendoを走らせるコンピューターからマルチモニターとして出力され、Nuageのモジュールにはつながっていません。つまりNuageの画面もNuendoが出しているので、今後柔軟で迅速なアップ・グレードも期待できるわけです。パッと見、ディスプレイ位置の高さに違和感を覚える方もいると思います。実は私もそうでした。見た瞬間、“これスピーカーどこに置くの?”と思いましたが、実はNuageのミキサー画面はNuendoのミキサーと同様にリサイズ可能で、例えばディスプレイの上部2/3とか半分だけをモジュールの上に出したセッティングでも、画面をリサイズしておけば大丈夫だそうです。好きな高さで使えるわけですね。これもソフトならではの柔軟な設計と言えそうです。Nuage Fader/Master自体はパソコンとの接続に通常のイーサーネットを使っています。またオーディオを扱うモジュールとしてNuage I/O(写真③)が用意されており、パソコンとのやり取りにDanteというネットワークを採用しています(写真④)。Nuage IO-A16_frontjpg_2013-5 
▲写真③ Nuage I/Oは24ビット/192kHz対応のオーディオI/Oで、全3種類をラインナップ(いずれもオープン・プライス)。写真の16Aはアナログ16イン/16アウト・モデルで、リア・パネルにはD-Sub25ピンの入出力端子を2つずつ(ch1-8/ch9-16)用意。パソコンとはDanteネットワークで接続するため、イーサーネット・ケーブルを接続するためのリンク(プライマリー/セカンダリー)&カスケード・イン/アウトや、システム・リンク・アウトとワード・クロック入出力(BNC)も装備。このほか、デジタル16イン/16アウトの16D、アナログ8イン/8アウトのデジタル8イン/8アウトの8A8Dもラインナップ ▲写真③ Nuage I/Oは24ビット/192kHz対応のオーディオI/Oで、全3種類をラインナップ(いずれもオープン・プライス)。写真の16Aはアナログ16イン/16アウト・モデルで、リア・パネルにはD-Sub25ピンの入出力端子を2つずつ(ch1-8/ch9-16)用意。パソコンとはDanteネットワークで接続するため、イーサーネット・ケーブルを接続するためのリンク(プライマリー/セカンダリー)&カスケード・イン/アウトや、システム・リンク・アウトとワード・クロック入出力(BNC)も装備。このほか、デジタル16イン/16アウトの16D、アナログ8イン/8アウトのデジタル8イン/8アウトの8A8Dもラインナップ
 
▲写真④ パソコンとNuage I/OをDanteネットワークで接続する際に必要なDante Acceleratorカード(オープン・プライス)。Mac/Windowsに対応し、イン/アウトそれぞれ最大128chのオーディオ信号を扱える ▲写真④ パソコンとNuage I/OをDanteネットワークで接続する際に必要なDante Acceleratorカード(オープン・プライス)。Mac/Windowsに対応し、イン/アウトそれぞれ最大128chのオーディオ信号を扱える
Danteは1本のイーサーネット・ケーブルで24ビット/48kHz時なら最大512chのオーディオ伝送ができるネットワークです。Nuage I/Oは最大24ビット/192kHzに対応しており、アナログ16イン/16アウト、デジタル16イン/16アウト、アナログ8イン/8アウト+デジタル8イン/8アウトの3種類がラインナップされ、DSPを内蔵することでベース・マネージメントを含むサラウンド対応&レイテンシーの無いモニタリングを実現しています。ちなみに既存のオーディオ・インターフェースを使いつつ、コントローラーとしてNuage Fader/Masterを使用することも可能です。 

スライダーに指を滑らせてチャンネル選択
ノブへの機能アサインもフレキシブル


ここからは実際の使用感を書きたいと思います。大げさな見た目とは裏腹に、Nuendo(もしくはSTEINBERG Cubase)を既に使える人ならば、間違いなく誰でもすぐに扱えます。意味の分からないボタンがあったとしたら、それはその機能を知らなかったというだけの話で、ほとんどのボタンはすべてNuendo上の機能と一対一で対応しています。たとえNuendoを使ったことがなくても、チャンネルを選んでプラグインをインサートするとか、センドにリバーブを立ち上げて送るなどのミックス作業だけなら、デジタル・ミキサーを使える人であれば誰でもすぐに使えると思います。DAWのコントローラーというよりも、デジタル・ミキサーを使っている感覚に近いです。僕は卓でミックスする時代に育ち、時には楽器のように卓を扱うのが好きです。なので今まで散々いろいろなコントローラーを試してきましたが、どんなコントローラーでもミキサーの操作をする際はキーボードとマウスの方が速い場合があります。しかしミックスに限定して考えれば、通常の卓で行う作業はNuage Fader/Masterだけで実行でき、マウスとキーボードを使う必要はほとんどなくなります(これは驚くべきことですよ)。一番ネックになるプラグインのエディットでも、ファンクション・ノブを押してプラグインのリストを出し(すごい便利です)、もう一度押してインサートすれば目の前のディスプレイにGUIが表示され、各ノブ上部にパラメーターが並んですぐに触ることができます。このパラメーターの並びはVST2/3に関係なくNuendo側で好きなように変更して保存しておけるので(Nuendo 6の新機能です)、例えばコンプレッサーはすべてレシオを左端、スレッショルドをその隣……というように統一させて一度設定しておけば、自然と指が変更したいノブに向かうようになります(一度これをやると病み付きになりますよ)。パラメーターが非常に多いプラグインや、そもそもマウスを使うことを前提として作られているもの以外なら、アナログ卓とアウトボードでミックスしている感覚に戻れるのです。また、今ではDAWで100本のトラックを扱うことも普通ですし、ましてやポストプロダクションの現場ではもっと多くのトラックを使っているでしょう。そのためコントローラー側からなかなか目的のチャンネルを見つけることができず、DAW上のトラックを選択して表示させるという使い方が普通でした。しかしNuage Faderではフェーダー上部にあるLCDにチャンネル表示がされるだけでなく、その下に16色表示可能なLEDが付いており、Nuendo 6上のトラックの色がここにそのまま反映されるのです。さらに、そのちょっと下にあるスライダー・バーに指を滑らせると、ミキサー画面を横スクロールさせることができ(Nuage Faderに割り当てられたチャンネルも同時にスクロールする)、目的のチャンネルを選択するという基本動作がマウスに劣らないスピードでできると思います(写真⑤)。
▲写真⑤ Nuage Fadarのタッチ・スライダー。指でなぞると、アサインされたチャンネルが全体的に左右へスクロールし、目的のチャンネルへ素早くたどり着ける ▲写真⑤ Nuage Fadarのタッチ・スライダー。指でなぞると、アサインされたチャンネルが全体的に左右へスクロールし、目的のチャンネルへ素早くたどり着ける
チャンネルの並びに関する機能で言えば、これもやはりNuendo 6の新機能ですが、アウトプットや録音中のチャンネルなど、そのときどきで使うチャンネルをNuage Faderの左端/右端に固定することができます。そのためのLockボタンが用意され、ボタン1つで必要なチャンネルが固定できて非常に便利です。アナログ卓では、フェーダーの高さとパンの角度でどのチャンネルが何だったかを覚えたりしたものですが、Nuageでも少し慣れれば色の付いているチャンネルとスライダー・バーによって同感覚で扱えるのではないでしょうか。これはプロ用の大型のものを含め、ほかのコントローラーではできないNuageの特徴だと思います。また、複数台のNuage Faderをシステムに組み込んだ場合、全体を1つのミキサーとしてスクロールさせるか、1台ずつバラバラに使用するかもUNIT LINKボタンで簡単に設定できます。例えば2台ある場合は、左のNuage Faderにはいつも触る16本のトラックを表示しておき、右はスライダー・バーでスクロールさせるといったフレキシブルな使い方ができるようになっていて、複数の人によるオペレーションも可能でしょう。Nuage Masterにある小さなタッチ・スクリーンでは、Nuage全体の画面表示とは別に、選択したチャンネルのEQ、ダイナミクス、チャンネル・ストリップなどの機能を呼び出し、エディットすることができます。ここでのプラグインのエディットにはGUIが出ませんが、各ノブに割り振られるパラメーターはやはりNuendo側で設定できるので、よく使うものを好みの並びにしておけば指が覚えるくらいまでに使いこなせると思います。このセクションはコンパクトにまとまっていて使いやすく、この部分だけ単体で売ってくれないかなと思ってしまいました(笑)。またNuage Masterには、ユーザーが自由に機能をアサインできるU1〜U12ボタンがありますが、実はNuage Fader/Masterにある同じ形のボタンはすべて機能を任意でアサインでき、表面のカバーを外してボタンの表示名を変えることが可能です。未来のバージョンでNuendoのデザインがどう変化するか分かりませんから、これはとても良い仕様だと思います。さらにNuage Masterにあるジョグ・ダイアルですが、ポストプロダクションを仕事にしている方はダイアルの使用感にこだわると聞きます。触った限り高級感があって重く、軸がぐらぐらしたり回転が安定しない感じは全くなくて、頑丈な部品を使っているなあと思いました(写真⑥)。ジョグはスクラブや低速再生だけでなく各イベントのフェード・イン/アウトやクリップ・ボリューム、スタート/エンドのトリムなどいろいろなことに使えます。
▲写真⑥ Nuage Masterのジョグ・ダイアル。質感や重量にこだわって作られたとのことで、ぐらつきの無い頑丈な操作感。トランスポートやズーム/フェード関連で使える ▲写真⑥ Nuage Masterのジョグ・ダイアル。質感や重量にこだわって作られたとのことで、ぐらつきの無い頑丈な操作感。トランスポートやズーム/フェード関連で使える
これはNuage全体に言えることですが、とても頑丈な作りで手触りがよく、どのボタンもしっかりしていて、“仕事に使う機材”という印象を受けます(写真⑦)。
▲写真⑦ YAMAHAにてNuageを操作する筆者。半日ほどの試用だったが徐々に操作に慣れていき、チェック終盤では自然とノブやボタン類に手が伸びるようになっていた ▲写真⑦ YAMAHAにてNuageを操作する筆者。半日ほどの試用だったが徐々に操作に慣れていき、チェック終盤では自然とノブやボタン類に手が伸びるようになっていた
Nuage Fader/Masterの背面へ回ってみましたが、基本はコントローラーなので表面の見た目とは裏腹にすっきりとしていました。スタジオに導入したときにもワイアリングが楽でしょうね。ファンクション・ノブの動きについては、パラメーターの変化が粗い印象を受けたのですが、これは“加速をしないでほしい”というリクエストがあったからだそうです。何かのパラメーターのオートメーションを描いているとき、ノブを触ってどこかに持っていってまた元の値に戻すとして、ノブが加速してしまう(回す速度で可変幅が変わる)場合、指を元の位置に戻しても元のパラメーターに戻せるとは限りませんから、視覚に頼ることになります。その点、Nuageのノブは加速をしないので、アナログ卓のノブのように目を使わなくても扱えるように設計されています。もちろんそのままでは粗いというときは、ノブを押してから回すと10倍の細かさで動かせます。個人的にはもう一回押すとさらに一段細かくなってほしかったのですが、これは今後のソフトのアップデートでも十分対応可能なことですね。 

ミキサー関連が充実したNuendo 6
ポスプロ向けの新機能も装備


さて、ここまでNuageのコントローラーについて書いてきましたが、Nuendo 6自体もCubase 7に続いて先日メジャー・バージョン・アップされています(画面①)。
▲画面① 兄弟ソフトCubase 7のバージョン・アップに続いて登場したNuendo 6(オープン・プライス/市場予想価格250,000円前後、Mac/Windows対応)。N uageの中核を担うソフトであり、もちろんスタンドアローンのDAWソフトとしても使える。ちなみにCubase 7との違いは、ラウドネス・メーターなどポストプロダクションに対応する機能を搭載している点で、逆にCubase 7のコード・トラックや大半の付属VSTiを使うには別途NEKを購入する必要がある ▲画面① 兄弟ソフトCubase 7のバージョン・アップに続いて登場したNuendo 6(オープン・プライス/市場予想価格250,000円前後、Mac/Windows対応)。N
uageの中核を担うソフトであり、もちろんスタンドアローンのDAWソフトとしても使える。ちなみにCubase 7との違いは、ラウドネス・メーターなどポストプロダクションに対応する機能を搭載している点で、逆にCubase 7のコード・トラックや大半の付属VSTiを使うには別途NEKを購入する必要がある
既にCubase 7のレビューなどでご存じかと思いますが、まず今回ミキサーが変わり、見た目もかなり変更されました。前述したようにリサイズが可能になって、いろいろな状況で見やすくなったかと思います(画面②)。
▲画面② Nuendo 6で刷新されたミキサー画面。リサイズが可能になったため、Nuage Faderのチャンネル・ストリップに合わせてサイズ変更したり、スタンドアローンのDAWソフトとして使う場合もディスプレイの大きさに応じて調整ができる。またコンプ/エンベロープ・シェイパー/ゲート/サチュレーターなどのエフェクトが各チャンネルにあらかじめビルトインされ、使い勝手がさらに向上した ▲画面② Nuendo 6で刷新されたミキサー画面。リサイズが可能になったため、Nuage Faderのチャンネル・ストリップに合わせてサイズ変更したり、スタンドアローンのDAWソフトとして使う場合もディスプレイの大きさに応じて調整ができる。またコンプ/エンベロープ・シェイパー/ゲート/サチュレーターなどのエフェクトが各チャンネルにあらかじめビルトインされ、使い勝手がさらに向上した
らにプラグインをインサートしなくても、従来VST3だったCompressor/Vintage Compressor/Envelope Shaper/Gateなどのエフェクトがミキサーの機能(Stripセクション)としていつでも使えるようになりました。従来からのものだけでなく、Tube CompressorやSaturator、それからハイパス/ローパス・フィルターなども拡充され、簡単なミックスならこのStripセクションと空間系エフェクトがあればできるようになっています。Stripセクションのエフェクトは、チャンネル・ストリップやミキサーのラックに表示され、大量に使ってもほかのウィンドウを邪魔することなく見やすく配置されます(Nuage Faderでも上部LCDに表示されていい感じです)。このミキサーの刷新のおかげで、チャンネルの表示/非表示にいろいろな方法が加わりました。現在プレイバックしている場所にイベントが置いてあるトラックだけを表示とか、プロジェクト・ウィンドウで選択したトラックだけを表示など、トラックが増えてくると非常に便利です。また、リンク機能も大幅に拡充されました。以前はフェーダーがリンクするだけでしたが、Nuendo 6からはオートメーション可能なすべてのパラメーターもリンクさせることができます。これだけでも相当便利なのですが、加えてミキサー上部にあるQ-Linkボタンが押された状態では、複数選択されたチャンネルがリンク状態になり、やはり1つのチャンネルさえエディットすれば選択チャンネルにすべてのパラメーターが反映されます。Nuendo 5までのミキサーに長年慣れ親しんできた方の間では今回の変更は賛否両論ありますが、個人的にはこの2つのリンク機能が強力なのでもう戻れません。それから、ミキサーで複数のチャンネルを選択してそれらを送るグループを作れたり、選択したトラックを入れるフォルダーを作成できるなど、細かいリクエストはそこら中にいっぱい反映されています。Nuendo専用の新機能も幾つかあります。まずラウドネス・トラック。これはミックス全体のラウドネスを解析してトラックに曲線で表示させるという機能で、最初から最後まで再生しなくてもこの曲線を見ればミックスのどこにピークがあるか分かり、そこだけ直すことができます。音楽と違って放送用の番組をミックスしていたりすると、オフラインでのチェックが重要でしょうから相当便利なんじゃないでしょうか。またこのトラックを使って全体のレベルを上げ下げすることで、マスター・アウトを目的のラウドネス値にすることができますから、上手に使えばラウドネス値をできるだけ守って音の良い(放送用に最適化された)ミックスを納品できると思います。もう1つ、ADR Takerというダイアログの録音用に特化された機能も追加されました。ヨーロッパのポスプロのエンジニアたちのリクエストによって実現されたようですが、使い方を見ている限りものすごく使いやすそうです(吹き替えとかすごくやりやすくなるんじゃないかと)。  Nuageシステムの出来は相当良いと思います。Nuendo 6も既にかなり安定していますから、ハードウェアともどもどんな仕事にも十分耐え得る作りです。もちろんNuageシステムは高価な製品ですし、Nuendoもフラッグシップ・ソフトですから当然なのですが、他社製の何倍も値段のするコントローラーと比べても遜色ないというか、自社でDAWを作っているだけあってNuend
oとの親和性が非常に高く、操作性は確実に凌駕していると思います。最近ポスプロの現場ではNuendoが増えてきているという話を耳にしますが(エディットは確実に一番速いですからね)、ソフト主体のシステムという点で長年使えると思われますし、そうしたスタジオではNuage導入を考えてもいいと思いますね。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年6月号より)
YAMAHA
Nuage
※価格はシステム構成によって異なる
⃝Nuage Fader ▪外形寸法/581(W)×156(H)×720(D)mm ▪重量/17.8kg ⃝Nuage Master ▪外形寸法/354(W)×161(H)×720(D)mm ▪重量/10kg ⃝Nuage I/O ▪最高ビット&レート/24ビット、192kHz ▪周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.5dB、ノーマル・アウトプット・レベル@1kHz、インプット&アウトプット・ゲイン:0dB、インプット・レベル+4dBu(typ)) ▪全高調波歪率/>0.005%(インプット〜アウトプット、ゲイン:0dB) ▪クロストーク@1kHz/−100dB(ch1-16, adjac ent inputs) ▪外形寸法/480(W)×88(H)×372(D)mm ▪重量/16A:6.7kg、16D:6.4kg、8A8D:6.7kg 【REQUIREMENTS】(Nuendo 6) ▪Mac/Mac OS X 10.7/10.8(32/64ビット)、I NTELデュアル・コア・プロセッサー、2GB以上のRA M、8GB以上のハード・ディスク空き容量 ▪Windows/Windows 7/8(32/64ビット)、INT EL/AMDデュアル・コア・プロセッサー、2GB以上のRAM、8GB以上のハード・ディスク空き容量