「CLASSIC PRO CSX12P」製品レビュー:軽量設計と高出力を両立したPA用の2ウェイ・パワード・スピーカー

CLASSIC PROCSX12P
サウンドハウスがプロデュースするブランド=CLASSIC PROからPA用のパワード・スピーカー、CSX12Pが登場しました。低域に12インチ・ウーファーを、高域に1.7インチ・ドライバーを搭載した2ウェイ仕様となっています。価格は1本40,000円弱とリーズナブルですが、その実力はいかなるものなのでしょうか?

内蔵アンプは連続出力1,100W
DSPによる3種類のEQモードを搭載

まずはスペック面から見ていきます。外形寸法は370(W)×630(H)×350(D)mm、重量は21.5kgとなっており、2ウェイ・パワード・スピーカーとしてはかなりコンパクトな印象です。本体の一部分に重さが偏っているということはなく、持ち上げたときのバランスは良好。その上、ハンドルがエンクロージャー側面の中央という扱いやすい位置に付いているため、可搬性はかなり高いと思います。またウェッジ・モニターとしても使用できるよう、向かって左側の側面に開閉式のスタンド・アームが用意されている点も好印象です。

内蔵アンプはクラスDのものが採用されており、連続出力は何と1,100W! このサイズでこのパワーは驚きです。背面の“VOLUME”ノブを使用すると、アンプの出力ゲインを−∞から±0dBまで40段階で調整可能。このノブはクリック式で、視認性が高く、設定も容易です。背面にはマイク/ライン・インやライン・イン(共にXLR/フォーン・コンボ)、各入力に対する独立したライン・アウト(XLR)、そして“MIX OUT”(XLR)も装備。2つの入力は個別に音量調整できませんが、ミックスしてスピーカーと“MIX OUT”から出力可能です。また内蔵DSPによるEQもプリセットされており、用途に応じて“MUSIC”“FLAT”“LOW CUT”という3種類の設定が選べるようになっています。これはあらゆる面で便利そうです。

ナチュラルな響きの“FLAT”モード
音圧感が増す“MUSIC”モード

それでは実際に使用した印象をレポートしていきます。まずはプリセットEQを“FLAT”に設定し、音楽を再生してみたところ、12インチ・ウーファーとは思えないほどしっかりとした低域に驚かされました。出音全体に関しては、低域から高域までクセが無くナチュラルな印象。まさに“FLAT”な、まとまりのある音です。弾き語りやアコースティック・バンドなどに適しているでしょう。次にプリセットEQを“MUSIC”に設定してみると、グッと音圧感が増しました。楽曲のボトムの部分……特にベースの帯域が持ち上がってくるようです。音圧感/パワー感共にこのサイズのスピーカーとしては十分過ぎるほどに出てくるため、特にクラブ・ミュージックなどの再生には“MUSIC”が向きそうです。もう1つのプリセットEQ“LOW CUT”は、余計な低域成分をカットしたり、CSX212SPなど同シリーズのサブウーファーと併用する際に使うハイパス・フィルターです。今回はCSX12P単体でのチェックとなりましたので、声で“LOW CUT”の効果を確かめてみることにしました。するとどうでしょう。声の不要な低域成分の除去に有効な設定となっているようで、非常にすっきりとした音になりました。100Hz辺りから思い切りの良いカーブでカットされるため、特にスピーチなどにはマッチするでしょう。これら3種類のプリセットEQをうまく使い分けることで、より幅広いジャンルの現場に対応できると思います。

アンプ出力1,100Wのスピーカー・システムをこのサイズで持ち運べるという“フットワークの軽さ”も本機の魅力。カフェやギャラリー・スペースといった小規模会場でのクラブ・イベントも本機があれば十分でしょうし、DJ用のモニター・スピーカーとしても便利だと思います。また、先述の通り背面の入力端子にはマイクやライン機器をダイレクト接続できるため、卓を用意せずとも1MC+1DJのヒップホップ・パフォーマンスが行えたりします。トーク・イベントでは、“LOW CUT”を活用することで外部のEQなどを省略することも可能。そのほか、非常に便利だと感じたのはスタンド・アーム。ライブ・ハウスではウェッジ・モニターの台数が不足しがちですが、本機を常備しておけばいざというときに重宝するでしょう。

PAの現場では音質面もさることながら、機動性や利便性も重要なポイントになります。その面で本機は非常に優れています。トラブルについても、最小限に回避できるような設計となっているのではないでしょうか。そして、このアンプ・パワーでこの価格はあらためて驚異的だと思いました。

▲背面には、上段のchAにマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とライン・アウト(XLR)、下段のchBにライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とライン・アウト(XLR)を装備。2つの入力は個別に音量調整できないが、ミックスしてスピーカーと“MIX OUT”(XLR)から出力できる ▲背面には、上段のchAにマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とライン・アウト(XLR)、下段のchBにライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とライン・アウト(XLR)を装備。2つの入力は個別に音量調整できないが、ミックスしてスピーカーと“MIX OUT”(XLR)から出力できる

サウンド&レコーディング・マガジン 2013年5月号より)

CLASSIC PRO
CSX12P
オープン・プライス (市場予想価格/39,800円前後)
▪スピーカー構成/低域:12インチ・ウーファー、高域:1.7インチ・ドライバー ▪周波数特性/50Hz〜20kHz ▪クロスオーバー周波数/1.8kHz ▪内蔵アンプ出力/1,100W(連続) ▪最大SPL/130dB ▪指向性/110°(水平)×60°(垂直) ▪外形寸法/370(W)×630(H)×350(D)mm ▪重量/21.5kg