
上位機種にも採用のD-PRE搭載
シンプルながらMIDI IN/OUTも完備
本誌2013年3月号にUR22の開発者インタビューがあったので、まずはそれを読んでみました。音質にとことんこだわった設計で、マイクプリは同社URシリーズの上位機種で採用されている“D-PRE”を搭載……ふむふむ、高音質マイクプリを2基備え、音楽制作に最小限なアナログ2イン&2アウト仕様のUSBオーディオI/Oというわけですね。で、お値段は?……え、こんなに安いの!?と、スペックと価格のギャップに驚きました。さらにMIDI IN/OUTも付いていて、DAWソフトのCubase AIまでバンドルされています。本機とコンピューター、そしてMIDIキーボードがあれば、本当に真っさらな状態からでも音楽制作が始められるのです。いや、すごいですね。外観はシンプルな小型ハーフラック・サイズで、分厚いメタル・ボディは少々手荒に扱っても壊れなさそうな安心感があります。フロント・パネルにはXLR/フォーン・コンボの入力端子が2つあり、それぞれ前述したD-PREを搭載。入力2にはエレキギターなどを直接入力できるHi-Zスイッチも備えています。またヘッドフォン出力がフォーンで用意されており、マスター出力とは別にヘッドフォン専用ボリューム・ツマミも完備。さらにダイレクト・モニタリング用のMIXツマミもスタンバイします。リア・パネルにはフォーンのライン出力×1系統、MIDI IN/OUT、コンデンサー・マイク接続用のファンタム電源スイッチ、そしてUSB2.0端子が並びます。さらにこのクラスとしては異例の24ビット/192kHzの録音をサポートしているのも特筆すべき点です。今回は、ABLETON LiveをインストールしたAPPLE MacBook Proに本機を接続してチェック。セッティングも付属のCD-ROMからドライバーをインストールするだけというシンプルさで、オーディオI/Oの上位機種で見かけるミキサー・ソフトを立ち上げるという手間も要りません。DAWのオーディオ設定でUR22を選びさえすれば、2イン/2アウトのオーディオI/Oとしてばっちり機能します。
48kHz録音は中低域のしっかりした音
96kHzは超低域&超高域の伸びが秀逸
お待ちかねの音質評価です、NEUMANN U87AIを使用してアコギとボーカルの録音/再生に加え、CDの曲や私の48kHz/96kHzのWAVミックス・ファイルを再生して比較です。かなり価格差はありますが、比較対象にはAVID HD I/Oを選んでみました。まずは再生の音質評価です。一聴して出た言葉が“良いじゃん!”ということ。やや超高域と超低域にロールオフ的な丸みがあり、トランジェント(音の立ち上がり特性)は少しおとなしめですが、価格差ほどの音質差はありません。気に入ったのは位相特性で、HD I/Oと比べてそん色が無いくらいステレオ感が奇麗に広がっています。ヘッドフォンの音もSONY MDR-CD900STと相性が良く十分な音量ですし、音のディテールがよく分かります。とにかく優秀です。録音サウンドにも期待がかかります。まずは48kHzで録音してみたところ、再生時と同じように超低域と超高域にやや丸みがありますが、ボーカルは中低域の解像度がしっかりしていて、低域の空気の揺れみたいなものもしっかりとらえています。ギターもギスギスせずに中域にツヤがあり、粒立ち感もしっかり出ています。D-PRE恐るべしですね。96kHz録音では、48kHz時にややカマボコ型に感じていた周波数特性の角が直角に近くなったというか、超高域と超低域がスッと伸びた感じです。さらに192kHz録音では48kHzから96kHzに変更したときほどのインパクトはありませんが、96kHzでスッと伸びた高域&低域のすそをさらにピンと伸ばした感じです。マイクプリの出来が悪いと、サンプリング・レートを変えても大して音質が向上しないことも多いのですが、D-PREはやはりハイサンプリング・レートに十分応えられるだけの実力を持っていたということですね。なお個人的には96kHzの音が好みでした。今回はCubase AIは試せませんでしたが、現状バンドルされているCubase AI6もCubase AI7がリリースされたときは無償でアップグレードできるそうです。この値段でDAWもバンドルされているなんてビギナーにとっては超お勧めの製品です。一方で、この音質の良さからして気軽に2イン/2アウト環境を外に持ち出したいプロにも十分に応えられるとも言えます。このプライスなので気軽に買えちゃう部分も購買欲を刺激されますね。
