「ADAM F7」製品レビュー:新開発のリボン・ツィーターを搭載する2ウェイ・モニター・スピーカー

ADAMF7
すっかりスピーカー・ブランドとして定着した感のあるADAMのパワード・モニター。筆者が初期のモデルS3Aを使用し始めてもう6年ほど経ちます。1度メインテナンスに出しましたが、毎日車に乗せて運び、それなりの音量で鳴らしているのに、今でも全くヘタリを見せることなく元気に活躍してくれているタフな製品です。ADAMは製品の開発/改良のスピードが速く、プロ・オーディオ界でS3Aが好評を博した後、2年ほどで進化版のS3Xを発表。Aシリーズの進化版=AXシリーズでも多くの製品をラインナップし、プロ/アマを問わずユーザーの多様なニーズに応えています。

リボン・ツィーター/ウーファーを
バイアンプで駆動


今回レビューするのは新たな製品ライン=Fシリーズの上位機種F7。ADAMの製品としては驚きのプライス・タグながら、同社らしい特徴を押さえた仕様でリリースされる魅力的な製品です。小規模スタジオまたはプライベート・スタジオでの使用が想定されていると思われるF7、その実力をチェックしていきたいと思います。仕様はフロント・バスレフの2ウェイ。ツィーターはADAM独自の技術ART(Accelarated Ribbon Technology)を採用。Fシリーズ用に新開発されており、上位モデルのX-ARTツィーターをコンパクト化。このリボン・ツィーターはADAMの大きな特徴と言えるかと思います。ウーファーはカーボンと紙の2層構造の7インチ・ユニット。見た目はかなり耐久性がありそうです。また、この価格帯ながら、各ユニットは専用アンプで駆動されます。ぜいたくですね。リア・パネルにはゲイン調整用ボリュームと、80Hz以上のHPF(ハイパス・フィルター)スイッチ、そしてルーム・アコースティックに対して微調整できるように低域/高域のシェルビングEQが装備されています(周波数ポイントは300Hz/5k
Hz固定)。ゲインは0位置、EQもフラット位置にクリック・ストップが付いているので、使い勝手は良さそう。また本機は一定時間(20分)入力が無いとフロントのインジケーターが緑から赤に変わり、自動的に待機モードに入ります。パワー・アンプやパワード・モニターは結構電力を消費するので、経済的な観点からもうれしい設計です。

バスレフ式ならではの量感が感じられる
豊かで安定した低域


デモ機は送られて来た時点で新品と思われ、エイジングはされていない様子。まずスピーカー・スタンドに設置して、聴き慣れたリファレンスCDを試聴してみました。音量はあまり出していない状態ですが、ローはかなり出ており、バスレフ式ならではの量感が感じられます。キック・ドラムの余韻の長さやベースの音程感などはとても聴き取りやすく、ミックス時の低域の処理がやりやすそうです。中域はYAM
AHA NS-10MやS3Aと比較するとエネルギー的には控えめ。リボン・ツィーターならではの解像度/スピード感があり、さすがにS3Aと比較すると不利ですが、価格差を考慮すれば健闘していると言えます。XLR入力/ゲインはフルテンで聴いた場合、NS-10M(YAMAHA PC-2002でフルテンでドライブ)と比べると音量感は少し小さめ。ただ、鳴り自体にパワーは感じられます。さまざまなソースを試聴した結果、個人的な感想ですが、本機はバランス的にやや低域に寄っているように感じました。小音量でもずっと安定してローが聴こえるので、クラブ・ミュージックなどは心地よいのですが、その分中域以上の音楽的な情報をもっと聴きたくなります。このクラスでは十分に良い音ですし、エイジングが進めば印象が変わるかもしれませんが、各ユニットがよくできているだけに、わずかにバランスを改善すればもっと良くなるのにと思ってしまいました。そこでリア・パネルのEQを調整してみました。低域を2dBほど下げると聴きやすくなりますが、80Hz以下のローカット・スイッチを入れるとさすがにスッキリし過ぎる印象。そこで思い当たったのですが、FシリーズにはSub Fというサブウーフ
ァーもラインナップされています。もしかすると本機のHPFをオンにして、Sub Fと組み合わせて使うのが、F7がベスト・パフォーマンスを発揮する使用法なのかもしれません。 モニター・スピーカーの好みは本当に十人十色で、その評価は聴く人によって大きく変わってくると思います。本機はかなり魅力的な価格設定ですので、ぜひ一度楽器店などで他の同価格帯モデルと比較してみることをお勧めします。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年4月号より)
ADAM
F7
29,800円(1本:発売記念特別価格) ※キャンペーン終了後の価格は未定
▪構成/HF:リボン、LF:7インチ・カーボン&ペーパー ▪内蔵アンプ/40W+60W ▪周波数特性/44Hz〜50kHz ▪外形寸法/225(W)×321(H)×266(D)mm ▪重量/9kg(1本)