ROLANDStudio-Capture

最近ボカロ関連のミックスが増えてきました。とは言っても、ぶっちゃけた話、ボカロ以外は生ドラム、生ギター、生ベースでCDクオリティの本格的なレコーディングをやっています。ボカロでボーカルを募集する必要が無くなり、気軽にバンド録音を行う時代になった気がします。ROLANDの新しいUSBオーディオ・インターフェースStudio-Captureを見て思ったのは、世の中の需要を調べて、ものすごく良いタイミングで出るなということです。本機はリハーサル・スタジオなどで自分たちでバンド録音をやりたい!という需要を敏感につかみ取った製品だと思えます。
24ビット/192kHzの録音に対応
クオリティの高いVS-PREAMP
Studio-CaptureはMac/WindowsをサポートしたUSB2.0接続のオーディオI/Oで、24ビット/192kHzまで対応します。アナログ入出力は、マイク/ライン入力がXLR/フォーン・コンボ×12とライン入力がフォーン×4、ライン出力はXLR×2とフォーン×8。全マイク/ライン入力には同社で定評のあるVS PREAMPを採用し、非常にクオリティの高い録音を可能にしています。またすべてのマイク入力にはコンプ/リミッター/ゲートを内蔵。さらにマイク/ライン入力ch1-2はHi-Zモードも備えます。一方、デジタル入出力はS/P DIF(コアキシャル)を1系統を装備。本機は16イン/10アウト仕様で、入力ch15-16はアナログとデジタルで共有します。このように価格に比して豊富な入出力を確保しており、僕はまずそこに拍手を送りたいと思います。さらにマイク/ライン入力が12chもあるのが良い。ドラムをマルチマイクで録音しようと思うと10chは必要になってくるわけで、そこにベースとギターを加えてちょうど12chになります。今までこの価格帯で一般的だった8ch入力のオーディオI/Oを二段にした感じですが、丸みのある形状や適度な軽さが気軽にリハスタに持っていきたいと思わせる大きさです。
4つまでのミックス・アウトを作成可能
自然にかかるコンプレッサー/リミッター
フロント・パネルを左側から順に見ていきましょう。各入力メーターの下に小さいボタンが16個配置されており、それを押せばゲイン調節が行えます(本機はヘッド・ルームが18dB、入力換算ノイズが−125dBuとなっています)。例えば“INPUT1”の入力チャンネル・ボタンを押すとLCDスクリーンにch1の入力メーターとゲインが表示されます。そしてマイク・ゲインは“SENS”ツマミを回して設定し、Hi-Z設定/リバーブの調整など多くの操作は“VALUE”ノブで行うことができます。この辺の操作は後述する付属ソフトでも視覚的に行うことができるのですが、小一時間いじっていたら本体によるほぼすべての操作をこのLCDで確認できるなと感じました。最初は小さいと感じたLCDスクリーンもあまり苦に感じずサクサクと操作できたので、やはり秀逸なユーザー・インターフェースですね。入力の細かい設定はパネル中央下の“PRE-AMP”というセクションで行います。マイク・ゲインはここの中央にある先述の“SENS”ノブで調整し、周りに4つ配置されているボタンで位相の反転、ファンタム電源のON/OFF、ハイパス・フィルターのON/OFF、後述するAUTO-SENS機能の設定などを瞬時に行うことができます。その右には“COMPRESSOR”セクションがあります。非常に良くできたコンプレッサーで、通常の操作ならON/OFFのボタンと“THRESHOLD”のノブ調整だけ済むでしょう。さらに右横には“MONITOR OUT”セクションがあり、右側の“LEVEL”が実質的なマスター・アウトに、左側の“DIRECT MONITOR”がダイレクト・モニタリング用です。この“DIRECT MONITOR”ノブを調整することによってDAWを経由した入力の戻りと、オーディオI/Oに入力したダイレクト音のバランスを瞬時に調節できるのです。一番右側にあるのはヘッドフォン調整用の“PHONES”セクションで、2つあるヘッドフォン出力のボリュームをそれぞれ独立して調節できます。“MONITOR OUT”とのリンクを切ることもできるので、モニターでマスター・ボリュームを下げて、ヘッドフォンだけで聴くことも可能です。さて、お伝えしたくてうずうずしていたのですが、ここからAUTO-SENSの紹介です。これはマイク入力のゲインをボタン1つで自動的に調節してくれる機能。もう〜超便利。プロのエンジニアが言うのもなんなのですが、プロ機器すべてに備えてほしいくらいです。使い方は“AUTO”ボタンを押してマイクに声や楽器の一番大きいだろうと思われる音を入力するだけです。ボタンを押した後4〜5秒の間に音を入力すれば、自動的にレベルを設定してくれます。実際に試してみたところ、デフォルトではピークから−6dBぐらいにゲインを合わせてくれます(任意に設定可能)。この設定はすごく適切で、“ドラムのマイク・レベルの設定をシビアに追い込んだのに、いつの間にかスネアの入力がレベル・オーバーしていた”こともあるので、6dBくらい余裕があるのが一番良いポイントです。マイク・レベルの設定に自信の無いユーザーはAUTO-SENSに積極的お任せしてみましょう。次に付属ソフトのStudio-Capture Control Panelを見てみましょう。起動するとまずダイレクト・モニタリング用のミキサー画面(画面①)が開きます。ここには各入力チャンネルに加えてDAWのリターン・チャンネルも5系統用意され、任意のモニター・バランスを作ることができます。


スッと伸びる高音とまとまりのある低音
細かい設定も可能なモニター・リバーブ
続いて音質の評価です。システムはAPPLE MacBook Proに接続したStudio-Captureと、AVID HD I/Oおよび192 I/Oの3機種を比較試聴。ABLETON Liveに音を取り込んで検証してみました。48kHzでサンプリングされた2ミックスのファイルを聴き比べてみると、さすがにHD I/Oには負けますが、192 I/Oとはなかなか良い勝負をしていると思います。Studio-Captureの音はフラットな印象を受け、広がりはほんの少し小さく感じますが、価格や入出力の仕様を考えるともう大健闘でしょう。僕的には最終マスターまでミックスできると言い切れますね。録音チェックとしては、ボーカルとアコギをNEUMANN U87AIで、エレキはHi-Z入力で試してみました。音質はやはり楽器メーカーらしい音と言うべきでしょうか、スッと伸びた高域が気持ち良く、しかも低域は暴れ過ぎないように既に処理されたようなまとまりを持っています。ざらざらとした弦を引っかく感じやエレキのパキパキとした感じなど、アタックのある音はモッチリと太くなる印象を受けます。内蔵コンプも試してみましょう。プリセット“Vocalist1”を選んで、かなり張ったり乱暴に歌ってみましたが、AUTO-SENSのレベル設定もあり、大きい声でもひずまず、コンプの不自然なかかり方もありませんでした。これにモニター・リバーブをかけてみましょう。リバーブも良い音で、密度が濃く奥行きがあります。リバーブのパラメーターを微調節できるのも良いです。また本機には、自社開発のチップ&ドライバーによってバッファー・サイズを下げた際の安定性を向上させる“VS STREAMING”というローレイテンシー技術が使われており、コンプを通した後も目立った遅れを感じずに快適でした。 コンセプトの定まった製品はとても魅力的です。バンドで購入して“すごい曲作ろうぜ”というニーズにもぴったりですし、この多入出力は工夫次第でライブやPAにすら使うことができると感じます。将来的にバンドが解散してもきっといろいろと役に立ちますよ(笑)。僕は次のマルチチャンネル・ライブのときに購入してみようかなと考えています。

ROLAND
Studio-Capture
オープン・プライス (市場予想価格/100,000円前後)
▪接続タイプ/USB2.0▪オーディオ入出力/16イン、10アウト▪最高ビット&レート/24ビット、192kHz▪周波数特性/20Hz〜60kHz▪ダイナミック・レンジ/105dB▪ヘッド・ルーム/18dB▪外形寸法/284(W)×89(H)×162(D)mm▪重量/1.9kg、【REQUIREMENTS】:▪Mac/Mac OS X 10.6.8以上、INTEL Core 2プロセッサー、2GB以上のRAM▪Windows/Windows8/7(SP1以上)/Vista(SP2以上)/XP(SP3以上)、INTEL Core 2プロセッサー 2GHz以上のCPU、2GB以上のRAM