「YAMAHA Stagepas 600I/400I」製品レビュー:小規模ライブに適したミキサー+スピーカーの小型PAシステム

YAMAHAStagepas 600I/400I
国産総合音響メーカーのYAMAHAから、2台のスピーカーとミキサーがセットになったPAシステムStagepasの新モデル600Iと400Iが登場した。場所を選ばずに使用が可能な本機、その音質や機能などを早速チェックしていこう。

軽量で持ち運びに便利な設計
iPod/iPhone接続用の端子も装備


本機は2台のパッシブ・スピーカーと、片側のスピーカー背面に収納可能なパワード・ミキサーから構成されている。パワード・ミキサーを収納しない方のスピーカーの背面は、付属のスピーカー・ケーブルやマイク・ケーブルなどが入る小物入れとなっており便利だ。スピーカーのユニット構成は、600Iは10インチのコーン(LF)と1.4インチのコンプレッション・ドライバー(HF)、400Iの方は8インチのコーン(LF)と1インチのコンプレッション・ドライバー(HF)となっている。スピーカー1本の重量は600Iが10.8kg、400Iが7.5kgと、比較的軽量な作りになっているので、持ち運びも簡単だろう。続いてパワード・ミキサー部分を見ていこう。600Iは10ch仕様で、4つのマイク/ライン入力(XLR/フォーン・コンボ×2、XLR×2)とステレオ・ライン入力×3(3系統のフォーン、1つのステレオ・ミニ、1系統のRCAピン)という構成。一方400Iは8ch仕様で、4つのマイク/ライン入力(XLR/フォーン・コンボ×2、XLR×2)、ステレオ・ライン入力×2(2系統のフォーン、1つのステレオ・ミニ、1系統のRCAピン)となっている。ステレオ・ライン入力はそれぞれスイッチでモノ・ライン入力にもなる。なお、コンデンサー・マイクやDIなどで使用するファンタム電源はch1〜2のみ使用が可能なので、注意が必要だ。また両機ともUSB入力×1(APPLE iPod/iPhone専用)も採用されており、ステレオ入力にアサインできる。なお、パワード・ミキサー部分の重量は600Iが3.8kg、400Iが2.8kgとなっており、スピーカーと同様に軽量かつコンパクトだ。最大出力は600Iが340W+340W、400Iは200W+200Wとなっている。このサイズでは素晴らしいスペックだ。

誰でも使えるイージー・オペレーション
タイトでパワフルな低域が魅力


それでは600Iを使って実際に音を出してみよう。本機は“誰でも1分で音が出せるPAシステム”をコンセプトに開発されていて、実際に1分足らずで設置できた。早速、パソコン上の音源をオーディオ・インターフェース経由で本機に入力して再生。第一印象として“えっ、マジで!”という感じだ。筆者の本音を言うと、価格なども含めて侮っていた部分もあったのだが、その偏見は1秒未満で払しょくされた。ミキサーで規定のレベルまで音量を出してみたが、まるで12インチのスタンド立てスピーカーを鳴らしているようで、100人〜200人くらいの会場は余裕といった感じだ。次にマイクを入力してチェックをしてみた。派手さはないが、控えめな高域とタイトな低域のため、300Hz〜800Hz辺りの日本人の母音の帯域がしっかりと聴こえる。続いてch4のHi-Zボタンを押してベースをダイレクトに挿してみた。これはカフェなどの多くの簡易PAで苦手な低音楽器の鳴りをチェックするためだ。結果は“素晴らしい”の一言。モニターしやすい音なのである。パワーを突っ込んでもつぶれた感じが無く、中域の解像度が自分の音を伝えてくれる。中途半端なベース・アンプよりも良いのではないだろうか。400Iもチェックしてみたが、やはり、600Iと比べてしまうとパワー面では600Iとだいぶ差がある。とはいえ、100人程度の会場では十分だろう。音色面ではほとんど差は無いが、高音は600Iよりフラットで、中域のピーク成分も480Hzくらいに若干ピークがある以外は70Hz辺りまでフラットに再生できている。例えばカフェや路上ライブなど、PAエンジニアがいないシチュエーションでミュージシャン本人やイベント主催者がPAしなければならない状況で、本機の簡易性は十二分の魅力を発揮するだろう。この消費電力なら車のACソケットでの運用も視野に入ってくるし、個人的には野外現場やキャンプのBGMとしてぜいたくなひとときを演出してくれそうで楽しみだ。main 600i mixer_2013-3▲背面に収納が可能な600Iのパワード・ミキサー部分、10ch仕様で左からマイク/ライン入力などが並ぶ (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)
YAMAHA
Stagepas 600I/400I
オープン・プライス 600I:市場予想価格99,800円前後、400I:市場予想価格69,800円前後
●Stagepas 600I:▪周波数特性/40Hz~20kHz(-3dB/+1dB)▪最大SPL/129dB▪アンプ出力/340W+340W(L/R)▪消費電力/35W(Idle)、100W(1/8出力)▪クロスオーバー周波数/1.8kHz▪外形寸法/335(W)×545(H)×319(D)mm▪総重量/25.4kg ●Stagepas 400I:▪周波数特性/40Hz~20kHz(-3dB/+1dB)▪最大SPL/125dB▪アンプ出力/200W+200W(L/R)▪消費電力/30W(Idle)、70W(1/8出力)▪クロスオーバー周波数/2.2kHz▪外形寸法/289(W)×472(H)×275(D)mm▪総重量/17.8kg