「ROLAND R-88」製品レビュー:オーディオI/Oとしても使えるミキサー内蔵8+2trデジタル・レコーダー

ROLANDR-88
ROLANDから新発売のR-88は、コンパクトなボディながら8ch仕様のミキサーと10tr(8インプット+2ミックス)のレコーダーが一体になり、さらに10イン/8アウトのUSBオーディオ・インターフェースとしても使える高機能ぶりだ。早速レポートしていこう。

A4サイズの小型ボディに
8基のマイクプリを内蔵


本体のサイズはA4ほどで高さは93mm、精かんなつや消しブラックのボディは2.7kgと意外に軽い。入出力端子はプロ仕様のXLRで、両サイドもリア・パネルも端子で埋め尽くされている。フロントに液晶タッチ・パネルを採用するなど操作系は整理されており、バッテリーの交換もスムーズ。ケーブルの取り回しやスイッチの事故を防ぐ取っ手などデザインも行き届いている。このサイズで8マイクプリを装備し、単三電池×8本で野外録音ができるのは大きな魅力だ。録音メディアは32GBまでのSDHCカードが使える。本機は最高で24ビット/192kHzに対応するが、192kHzでの同時録音は4trまでとなる。上記の設定で32GBのカードを使うと3.8時間の録音が可能。ちなみに電池使用時の録音時間は、96kHz/8trでファンタム電源をONにすると、アルカリ電池で約1時間、充電式のニッケル水素電池で約2時間。ほかに9〜16Vの外部電源にも対応する。早速音質チェックのため、手持ちのマイクをつないでアコースティック・ギター/ボーカル/バイオリン/ドラムなどをさまざまなレートで録音してみた。マイクプリは色付けの少ないフラットな特性で、トリムをかなり上げてもプリアンプのノイズが少ない印象。96/192kHzで録音したバイオリンやアコギはハイエンドがとても美しく、アコースティックな編成の生録音はR-88と高性能マイクがあれば、とても楽しくなるだろう。録音時は入力感度/レベルを調整できるほか極性切り替え、ローカット(60/120/240Hz)やリミッターがかけられる。このリミッターがなかなか優秀で、キツめにかけても不自然な音になりにくい。また1-2/3-4/5-6/7-8の入力をペアにして録音したり、リミッターをグループ化して、グループ内のいずれかの入力にリミッターがかかったときに他の入力も同様にリミッティングする機能もある。録音中にタッチ・パネルから最大99個までのマーカーが付けられるほか、フロント・パネルの“Slate”スイッチを使ってR-88内蔵マイクからの声やサイン波も録音できる。これらの機能は、録音時の区切りやメモ代わりに便利だ。さらに5秒までのプリレコーディング機能も付いている。続いて、録音時の負荷を最も高くするために、インプット8chすべてのファンタム電源をONにし、24ビット/96kHzで10trの同時録音を行ってみた。液晶パネルにバッファーの負荷状況が棒グラフで示されるのだが、このセッティングでもバッファーは時折1/3まで上がる程度で、全く録音に支障はなかった。なお最大10trの同時レコーディングは可能だが、R-88に録音したトラックを再生しながら同時に他のトラックにダビングしていく機能は付いていない。

10イン/8アウトのオーディオI/Oとして
DAWとの柔軟な連携を実現


本機はデジタル・ミキサーも内蔵、入力音や録音したトラックをステレオ・ミックスにして出力したり、録音時に2ミックスとして別途録音することができる。ミキサーでは、各トラックのパン/ミュート/EQ、マスター・リミッターの調整などが可能。タイム・コードの機能も充実しており、外部タイム・コードに追従するだけでなく、外部からの信号が途切れると自動的に内部タイム・コードを生成することもできる。R-88が面白いのは、コンピューター(Mac/Windows)とUSB接続して10イン/8アウトのオーディオ・インターフェースとしても機能する点だ(サンプリング周波数は96kHzまで)。R-88への8つの入力と2ミックスはDAW側の入力の1-10となり、DAW側の1-8の出力はR-88のミキサーの1-8へ出力される。DAW側の音をモニターしつつR-88に入力されている音をDAWに録音できるので、マルチトラックのオーバーダブが可能になる。レイテンシーは24ビット/44.1kHz時で96サンプルと、実使用には全く問題なかった。さらにR-88側で録音しつつDAW側での同時録音も可能なので、単なるオーディオI/Oにとどまらない、さまざまな使用法が考えられる。例えば野外録音時に電池駆動の長いコンピューター(DAW)は録音しっ放しにしておいて、重要なポイントでR-88も回す、などである。広く生録音を愛する人にとって、R-88は有力な選択肢となるだろう。left_side_2013-3▲サイド・パネル(左)。左上よりAES/EBU入出力、カバー下にはSDカード・スロット、USB端子×2も装備する。左下よりDC入力、アナログ出力1/2(XLR)、ミックス出力(ステレオ・ミニ)、ワード・クロック入出力(BNC)、コントロール端子rear_2013-3▲リア・パネルにはアナログ出力3-8(XLR)を装備right_side_2013-3▲サイド・パネル(右)にはファンタム電源付きのアナログ入力1-8(XLR)が並ぶ (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)
ROLAND
R-88
220,500円
▪AD/DA/24ビット▪対応サンプリング・レート/44.1/48/88.2/96/192kHz▪周波数特性/20Hz〜40kHz▪全高調波歪率/<0.02%▪記録メディア/SDHCメモリー・カード(4〜32GB)、SDメモリー・カード(2GB)▪外形寸法/260(W)×93(H)×235(D)mm▪重量/2.7kg(電池を含む)