帯域別にエフェクトが可能
ビシッとした定位の分離感良い出音
DJM-2000Nexusはステレオ4ch仕様のDJミキサーで、最大ステレオ8系統の入力が可能。ユニークなのは同社のCDJやコンピューターなどをLANケーブルで接続するPRO DJ LINK端子(後述)を備える点でしょう。リア・パネルにはMIDI端子も装備し、MIDIクロックを出力して外部シーケンサーなどとの同期も可能です。操作子の配置はDJM-2000とほぼ同様。最も触れる機会が多いミキサー中央上部にはHI/MID/LOWの帯域ごとに12種類のエフェクトがかけられるBEAT EFFECTセクションがあり、その下には新機能のBEAT SLICEを搭載した大型タッチ・パネルを配置。各チャンネルにはトリム/3バンドEQ・アイソレーター/6系統のエフェクトがかけられるINST FX/縦フェーダーが装備されており、本機で使用できるエフェクトは、タッチ・パネルを使ったものとBEAT EFFECT、INST FXの計3系統あることになります。今回は、本機を筆者のスタジオ近くのDJバーに持ち込んで試聴してみました。まずはレコードから。音質は定位がビシッと定まって分離がよく、高域はクリア/低域はパワフルな印象。小箱でもはっきり分かるほどの高音質です。次はUSBメモリー内にある同じ曲のWAV/MP3をCDJ経由でチェック。全体的な傾向はレコードと似ていますが、WAVは少し柔らくおとなしめ。面白いことにMP3の方はWAVよりも派手に聴こえ、圧縮音源の嫌な部分をうまくカバーしている印象を受けました。新開発のピーク・リミッターも出音にマキシマイザーくささがなく、耳に痛い帯域はピークが出ないようしっかり抑えられているようです。次はエフェクト部。BEAT EFFECTは操作体系が分かりやすいので、初めてのDJでもしばらく触っているうちに使いこなせるようになるでしょう。タッチ・パネルはiOSアプリを操作する感覚に近く、ミキサーのパネルにAPPLE iPhoneが埋め込まれているかのようなフィーリングです。
タッチ・パネルを操作して
スタッター的なエフェクト・プレイを実現
PRO DJ LINKは、本機とLAN接続した同社CDJのBPMを同期させたり、同じくLAN接続したコンピューター内の曲ファイルを共有する機能です。SYNC MASTER機能を使えばPCDJソフトのように2台のデッキ間のピッチを自動で合わせることができ、エフェクターのBPMも曲と同期します。さらにこの機能を利用して、タッチ・パネルからBEAT SLICEをかけることも可能。これは昨今見受けられるスタッターのようなエフェクト効果を生み出せるもので、タッチ・パネル上にずらっとボタンが並び、押したボタンに応じて該当するスライスがループ再生されます。一通り試してみて感じたのは、“本機でDJしていると実に楽しい”ということ。まず音の良さに感動し、実際に触ってエフェクトの面白さにハマッていくうちに、冒頭の懸念は一瞬にして吹き飛んでいました。大抵の場合、DJミキサーのエフェクトは全帯域にかかるものですが、本機は帯域ごとに分かれているため、きめ細かいエフェクト・プレイが可能です。価格もハイエンドの部類に入りますが、筆者としてはこのクオリティを考えると、むしろ安いと感じてしまいました。最近、DJに求められるスキルが、短時間でピッチを合わせたり奇麗なロング・ミックスをすることから、エフェクトを駆使して原曲を加工する方向に移行していると感じます。その意味でも本機は“DJシーンを引っ張っていこう”というPIONEERの意気込みが感じられる1台でした。 ▲リア・パネル。上段に4ch並ぶ入力部は、CH1とCH3がCD/PHONO、CH2とCH4がCD/LINEという構成(すべてRCAピン)、中央がデジタル入力×4系統+デジタル出力×1系統(コアキシャル)、下段左よりマスター1出力L/R(XLR)、マスター2出力L/R(RCAピン)、REC OUT L/R(RCAピン)、ブース出力L/R(フォーン)、センド&リターンL/R(フォーン)、PRO DJ LINK端子×6(RJ45)、MIDI出力、USB端子 (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年3月号より)