動作環境はBFD2/BFD Ecoに準拠
太鼓や金物など4つのカテゴリーに分類
本製品の動作環境はBFD2(Ver2.1以降)、もしくはBFD Ecoに準じる"BFD専用の拡張音源"で、そのためBFD本体がないと動きませんので注意してください。ちなみにBFD2はMac/Windowsで動作し、Audio Units/VST/RTAS/スタンドアローンに対応。RAMの空き容量は1GB(2GB以上を推奨)以上が必要となります。
本製品の気になるサンプル容量は16.5GB。音源を開いて最初に驚かされるのは楽器の種類で、定番の太鼓や金物はもちろんのこと、かけ声から足拍子といったものまで実に合計56種をラインナップしています。その数だけでも圧巻ですが、これはあくまで見た目の数に過ぎず、音色によってはさらなるバリエーションが含まれています。一例を挙げると"Kakegoe"という音色は見かけ上は"KakegoeA""KakegoeB"の2つですが、その中には合計で27タイプ/148種のフレーズが存在します。
続いてプリセット構成を見ていくと"Kit1 Kabuki""Kit2 Noh&Kabuki""Kit3 Ohayashi""Kit4 Kabuki SFX Percs"と、使用場面で分けた計4つのカテゴリーが用意されています。ぱっと見ると、どうやって音色が分かれているかイマイチ判断しにくいですが、実際に確かめてみると、Kit1はパーカッションで、Kit2は大鼓、小鼓、締太鼓にかけ声、足拍子というシンプルな構成で、まさしく能の舞台を作り上げるもの。Kit3は毛色が変わって大拍子、締太鼓など少数の打楽器に金物、鳴り物といった"お囃子"の祭りに最適な構成です。最後にKit4は拍子木や拍板、木魚といった飛び道具、効果音的な音色が並びます。
空気感のある澄んだ音色
表現力豊かな99ベロシティ・レイヤー
同音源は前述の通り、1つの音色に複数のサンプルが当てられたり、配置も当然通常のドラム・マップではありませんので、4つのプリセットそれぞれに対応したキーマップが用意されています。ちなみにキーマップが未対応の状態だと鳴らない音色もあるので注意してください。これはソフトの構造上仕方ありませんが、GUI上にはドラムとパーカッションの絵が並んでしまうので、直感的に音色の配置を把握するのはやや難しいです。とは言え、プリセットとキーマップは非常に丁寧に作られているので、1つ1つ音色を選んでいくよりも、プリセットとそれに対応したキーマップをその都度選んでいく方が良いでしょう。
肝心の音は一聴すると澄んだ空気感のあるサウンド。特に拍子木や金物の音の抜け方は特筆すべきで、これまで筆者が使用してきた他社のパーカッション系の音源で気になった、音の粗さや空気感の雑さがこの音源では全く感じられませんでした。音源内ではダイレクト、Overhead(ステレオ)、Room(ステレオ)でバランスを簡単に調整できるほか、BFD2のシステムに準じ、個別のパンやボリューム調整も可能。プリセットそのままの音でも十分良いですが、例えばリバーブをかけても原音が繊細なので美しく響いてくれます。このあたりは丁寧に収録されたサンプルのたまものと言えるでしょう。
続いて舞台用の劇伴に本音源を混ぜてみましたが、最大99ベロシティ・レイヤーというレンジの豊かさで抑揚の激しい音楽にもしっかり追随してくれる上、特に小鼓のベロシティによる表現変化は、これまでの音源では得られなかった新たな感覚で、インスピレーションが次々とわいてきました。Kinやスズのような金物も高音域が痛くなく奇麗に響くのでアクセントとして重宝します。またこれらの音源はあまりなじみがないため、リズム・パターンをなかなかイメージしにくいかもしれませんが、MIDIグルーブが160種類も用意されているため、これらを参考にすれば和楽器のリズムを学ぶこともできます。例えば和のグルーブに弦楽器という構成でも自然にマッチするアンサンブルが得られました。
本製品を試してみて思ったのは、劇伴やポップスに使うのはもちろんですが、サンプル自体のクオリティが非常に高いので、音数が少ない場面でパーカッションのみで使ったとしても存在感があり、その威力を発揮できるのが強みだと感じました。もちろん効果音として扱うことも十分可能なので、音楽の制作はもちろん、テレビやラジオ、さらには舞台の場など、状況を問わずいろんな場面で使える音源だと思います。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2013年1月号より)