「NOMAD FACTORY Magma」製品レビュー:65種類のラック型エフェクトを自由に組めるバーチャル・プラグイン

NOMAD FACTORYMagma
 NOMAD FACTORYはサンディエゴ〜LAエリアで活躍するエンジニア、バーニー・トレリによって開発されたアナログ系のプラグイン・エフェクトで人気の会社だ。どれもビンテージ風を売りにしており、人気が高い。同社による新製品、Magmaは全く新しく開発されたという65種類のラック・エフェクトのプラグイン集。ただ単にバンドルというだけでなく、それぞれをプラグイン内で接続、構築できるという新しい形のバーチャル・エフェクト・システムだ。

単純明快なインターフェース
豊富に用意されたプラグインの数


ndowsはWindows XP SP2以降(32ビット)/Vista(32/64ビット)/7(32/64ビット)となっている。動作フォーマットはRTAS/VSTのほかMacではさらにAudio Units対応なので、ほぼすべてのDAWで使えると言えるだろう。エフェクトはすべてバーチャル・スタジオ・ラックと呼ばれる、ラック・マウント・スタイルとなっている。同時に表示可能なのは4つまでだが、さらにそれらを最大4つ組み合わせ、都合16個のエフェクトを一つのプロジェクトとして立ち上げることができる。いわばこのプラグイン自体がホストであり、この点が通常のエフェクト・バンドルと違う点だ。それぞれのエフェクトをFXと呼び、リストでは各カテゴリーごとに分けられている。このFX4つの組み合わせをラックと言い、ラック自体の組み合わせはプロジェクトと呼ばれ、同様にカテゴリー分けされている。FXのプリセットは楽器名で分けられており、どういう楽器にかけるものかが把握しやすい。FXの位置は各ラック左端にある上下の矢印のほか、ドラッグ&ドロップでも変更可能。また、ラックはそれぞれチェインの組み合わせを変えることができる(画面①)。こういった作業は分かりやすいインターフェースもあり、全くマニュアルの必要も無く行える。もちろん各エフェクトのパラメーターも特にハードのエフェクターを使い慣れている人なら簡単に操作可能だろう。また、MIDIコントローラーなどを使えばより感覚的に使うことができそうだ(画面②)。 rooting▲画面① チェインは画面を見れば一目瞭然(りょうぜん)で、4つのFXの組み合わせのラック単位で、シリアル/パラレル接続を選べる MIDI▲画面② DAWのオートメーション機能だけでなく、MIDIコントローラーなどにコントロール・チェンジをアサインすればパラメーターのリアルタイム操作が可能このMagma、システムはもちろんだが、特筆すべきはその圧倒的なFXの数にある。1パッケージで65種類というのはほかでは見ない数だし、プリセットだけでも600近くある。FXのカテゴリーは次の通りで、Amplifiers、Analysis、Cabinet、Delays、Distortion、Dynamics、EQs、Filters、Generator、Harmonic、Modulation、Reverbs、Special、Utilityとなっている(画面③)。幾ら数が多くても、気になるのはそのクオリティだ。ここでは各ジャンル、実際に聴いた中から幾つかピックアップしてみよう。 category▲画面③ Magmaの最小単位であるFXはエフェクト・カテゴリーで分けられる

ひずみ系や空間系などカテゴリーごとにも
異なるバリエーションを用意している


●アンプ/キャビ/ディストーション系最近はギター・アンプ系のプラグインも実に多い。Magmaではアンプ系、キャビネット系は1種類ずつと意外に少ないが、ディストーション系は7種類と豊富だ。ディストーションはどれもパラメーター次第では十分にひずんでくれる。アンプのジャンルにあるLEAD GUITARはそれ自体でどうしてもひずんでしまうので、もう少しナチュラルなアンプ・シミュレーターも欲しかった。しかしチェインを並列にして、アンプ・シミュレーターを通した音とそのままの音を混ぜることによって、芯を保ったままひずませるということもでき、これは効果的だった。●コンプ系コンプは7種類。チューブ・コンプ、アナログ・テープ・コンプなど、かなり音の傾向が違うものが用意されているのはうれしいところ。●モジュレーション系モジュレーションは13種類。コーラス、フェイザー、トレモロなど代表的なものはもちろん網羅しているが、同じフェイザーでもかかり具合の違うものなどを用意している。普通に充実しているジャンルだ。●EQ系グラフィック、パラメトリック系に加え、ビンテージ風など計8種類。●ハーモニクス系FAT-BASSはその名の通り低音を充実させてくれるFX。WAVESなどで人気のある効果だが、なかなかそれっぽく聴かせてくれる。STEREO IMAGER、STEREO MAKERなどは、地味だがミ
ックス時にはあるととてもありがたいエフェクト。こういったジャンルまでカバーしてくれているのもうれしい。●リバーブ/ディレイ系リバーブ/ディレイは合計8種類。ディレイはBPM指定ができるものと、ディレイ音のEQを調節できるものが2種類の計3種類。リバーブは、パラメーターを細かく設定できるものからスプリング、ルームなどはそれ専用のパラメーターでエディット可能なものまであるので、より追い込んだ空間表現が実行できるだろう。●その他3声のピッチ・シフト音を足して不思議な効果を得るCHROMA ZONEは、かなり過激なローファイ感を出すことのできる特殊エフェクトだ。そのほか、リミックスなどで活躍しそうなエフェクトも多く搭載する(画面④)。また、アナライズ用のジェネレーターも用意されている。 FX▲画面④ グラニュラー・シンセっぽいINSANULATOR(上)、オケからシーケンス・パターンもどきを簡単に作り出すTRANCE GATE(下)などを組み合わせればとてもユニークなサウンド・メイクが可能

工夫次第で飛び道具的にも使える
圧倒的なコスト・パフォーマンス


全体的な印象としては、いわゆるノーマルなエフェクトだけでなく、かなりぶっ飛んだFXも網羅し、数だけでなくカバーしているジャンルもとても幅広いという印象だ。Magmaの売りである組み合わせ機能を使えば、例えばディレイで左右に広がった音をステレオ・イメージで広げ、さらにトレモロをかけるなど、工夫次第でユニークな効果も狙える。こういった組み合わせはプロジェクトのプリセットとして楽器ごとに適したカテゴリーに分けられている(画面⑤)。 プロジェクト.jpg▲画面⑤ Magma全体の組み合わせを管理するプロジェクトのプリセット画面各エフェクトの組み合わせ自体はDAWソフトのミキサー機能やルーティング機能を使えばできないことはないが、簡単に呼び出せて使えるというのはとても効率的だ。Magmaは近日中にサード・パーティ製VSTプラグインの読み込みもサポートするそうだ。好きなVSTプラグインをラックの中に組み入れることができるようなので、オリジナルの組み合わせも可能になる。実際はDAWアプリの方で組み合わせを作っておき、それを呼び出せば近いことはできるはずだが、管理の面からすると一つのプラグインとして扱えた方が確かに便利だろう。また、近日中にはラックのチェインの中に新たにラックを取り入れることが可能なMFX-Chainerにも対応予定とのこと。Magmaの定価は28,140円だが、現在イントロ・プライスということで16,900円で購入可能。エフェクトの数で単純に割っても、一つのエフェクトは300円以下ということになり、圧倒的なコスト・パフォーマンスだ。現在のDAWシステムのエフェクト群すべてにバリエーション、彩りを加えたいという人には最適なシステムと言える。(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年9月号より)
NOMAD FACTORY
Magma
28,140円
▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.5/10.6/10.7(INTELのみ、Power PCには未対応)、対応フォーマット:RTAS(AVID Pro Tools 7以降)/Audio Units/VST ▪Windows/Windows XP SP2以降(32ビット)/Vista/7(32/64ビット)、対応フォーマット:RTAS(AVID Pro Tools 7以降)/VST ⃝共通項目/インターネット接続環境(インストーラ ーのダウンロードおよびオーサライズ時)