「ROLAND Duo-Capture EX」製品レビュー:iOSにも対応する軽量コンパクトなUSBオーディオ・インターフェース

ROLANDDuo-Capture EX
 APPLE iPadが登場してからというもの、各メーカーからこぞってiPadに対応した音楽系アプリや制作機材が登場してきました。今やライブ・パフォーマンスでiPadを使う光景も当たり前、iPadアプリのみでアルバムを制作するアーティストも現れてきています。そんな中、ROLANDからもiPadに対応したDuo-Capture EXが登場しました。その実力やいかなるものか早速チェックしてみましょう。

USBバス・パワーに加え
単三電池×3本での駆動にも対応


Duo-Capture EXの概要をまず紹介すると、コンピューターとはUSBで接続し、入出力は2イン/2アウト。別売のAPPLE Camera Connection Kitを使用すればiPadでの使用も可能です。本体はコンパクトにまとまっており、分厚い文庫本くらいの大きさで、持ち運びも楽そう。黒いボディは高級感あふれるアルミ製となっており、実売価格が1万円台後半でこの機能/仕上げは驚きのコスト・パフォーマンスと言えます。Duo-Capture EXの電源方式はUSBバス・パワーと別売のACアダプターに加え、単三電池×3本での駆動にも対応。iPad+Camera Connection Kitで使用する場合は、供給できるバス・パワー電力が低いため、電源は電池もしくはACアダプターでまかなう形となっているようです。入出力は各チャンネル共に独立したマイクプリを搭載する2系統のアナログ入力と、本体のOU
TPUTつまみでレベルが調節できるアナログ出力2系統にMIDI IN/OUT端子、ヘッドフォン端子と必要十分。ファンタム電源も搭載しており、コンデンサー・マイクも使えます。またインピーダンスの切り替えも可能なので、ギターなどを直接つないで録音することも可能。さらにこの大きさでMIDI端子まで付いていて便利ですね。

上位機種Octa-Capture譲りの
脚色なくオールラウンドに使える音


それでは実際にコンピューターに接続して使用してみましょう。今回はまずDAコンバーターの音質をチェックするべく、筆者のスタジオでDAWからトラックを再生してライブのリハーサルを行いました。出音の第一印象は、色付けが少なく素直な柔らかい音というもの。センド・エフェクトでかけたディレイの混ざり具合も分かりやすいです。筆者は本機と同じVS Preampテクノロジーを搭載した上位機種Octa-Captureを使用したことがあるのですが、サウンドのキャラクターはOcta-Capture譲りで、"脚色なくオールラウンドに使える音"と言えるでしょう。ドライバーの安定性も全く問題なく、これはライブ・パフォーマンスに持ち出す用の一台としても使えるなという印象を受けました。次にコンデンサー・マイクを立てて、マイクプリの性能をチェックしてみました。こちらも出力と同様の素直な音質。ROLAND伝統のVS Preampテクノロジーのおかげで、価格が10倍くらい高いマイクプリ単体機を用意して比較しても、なかなかの健闘ぶり。ただテストしていて若干気になったのが、インプットのピーク・ランプの点灯が体感より早めであるところ。ピーク・ランプが点灯してもまだ−9dBほどのマージンがあり、ピーク・ランプ点灯=クリップというわけではないので注意が必要です。しかし無理矢理レベルを突っ込んでも、バリバリとクリップ・ノイズが発生するのではなく柔らかくつぶれていく感じに音が変化するので、ビギナーでも使いやすいでしょう。次はいよいよAPPLE iPadに接続してみましょう。リア・パネルのサンプリング・レート切り替えスイッチを"TAB"に変更すると、iPad対応モードに切り替わります。iPadにCamera Connection Kitを取り付け、単三電池を入れたDuo-Capture EXを接続します。するとPowerランプが緑から赤に変わり、使用可能になったことを伝えます。早速筆者の所有するMOOG Animoogをはじめ、幾つかのiPadアプリでテストしてみたところ、音質やレイテンシーなど、コンピューターにつないでいるときと同じ感覚で使えました。また、通常iPadにはオーディオI/OかMIDIインターフェースのどちらかしか接続できませんでしたが、Duo-Capture EXのMIDI端子にMIDIキーボードを接続すれば、オーディオ/MIDIを同時にコントロールできるのです。これは便利!Duo-Capture EXはコスト・パフォーマンスが高く、ソフトで細かな設定をする必要もないので、コンピューターが苦手な初心者にもお薦めです。音質はROLANDの他製品と同じくVS Preampテクノロジーを使用しているので質が高く、既に自分のシステムを構築している人でも、持ち出し用の一台として使えます。特に電池駆動は思いのほか便利。電池は使用状況にもよりますが、通常の使い方であれば3〜4時間は持ちそうです。それにしても、昨今は各社こうしたiPad対応製品を多数リリースしてきており、iPadが随分制作機材として認知されてきたとの感慨を覚えます。この状況が続けば、10年後の音楽制作スタイルがどう変化しているのか、実に興味深いです。 DUO-CAPTURE_EX_R_300_TMP ▲リア・パネル。左よりDCイン、MIDI OUT/IN、アナログ出力L/R(TRSフォーン)、USB端子の下がサンプリング・レート切り替えスイッチ(44.1/48kHz/TAB)、その右がファンタム電源、インスト入力のHi-Z/Lo-Z、ダイレクト・モニターのMONO/STEREO/OFF、電源の各スイッチサウンド&レコーディング・マガジン 2013年1月号より)
ROLAND
Duo-Capture EX
オープン・プライス (市場予想価格/ 17,000円前後)
●量子化ビット数/24ビット ●サンプリング・レート/44.1/48kHz ●周波数特性/20Hz〜22kHz(48kHz)、20Hz〜20kHz(44.1kHz) ●ダイナミック・レンジ/99dB(A/D)、102dB(D/A)  ●外形寸法/154(W)×47(H)×119(D)mm ●重量/460g

▪Mac/Mac OS X 10.5.8以上(すべて日本語版)、INTELプロセッサー、1GB以上のRAM、DVD-ROMドライブ ▪Windows/Windows XP Home/XP Profes sional SP3/Vista SP2/7 SP1(すべて日本語版)、1GHz以上のINTEL Pentiumまたは互換プロセッサー、1GB以上のRAM、DVD-ROMドライブ