ベース・ミュージックやEDMに向けたサンプル・ベースのソフト・シンセ

BEST SERVICENitron
 NitronはMac/Windowsに対応するサンプル・プレイバック方式のソフト・シンセ。ソフト・サンプラーのNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5や無償のサンプル・プレーヤーKontakt 5 Player(スタンドアローン/VST/Audio Units/RTAS対応)で使用するタイプの音源です。50台以上のハードウェア・シンセからマルチサンプリングされたという約1,000種類のパッチを収録しており、シンセを多用したダブステップやエレクトロ、ドラムンベースなど、ベース・ミュージックやEDM系のトラックに最適な内容となっています。それでは実際に使っていきましょう。

ファットかつアナログ的なサウンド
和音パターンを選べる"CHORD"機能


インストールはKontakt 5またはKontakt 5 Player→Nitronという順番で行いますが、既にKontakt 5シリーズを使用しているならNitronをインストールするのみです。アクティベーションはNATIVE INSTRUMENTS SEVICE CENTERで行えるので、同社の製品を使ったことがあれば非常に簡単です。内蔵ライブラリーには単一のパッチで構成される"INSTRUMENTS"と複数から成る"MULTI"が用意されており、ベースやリード、パッド、アルペジオ、効果音などのカテゴリーに分かりやすく分類されています。それらを順番に聴いていくと、サンプル・プレイバック方式のシンセでありがら、音色のロード時間が短いことに満足感を覚えました。先述の通り、プリセット音色はシンセを多用したクラブ・ミュージックに合いそうな今っぽい印象。キレがありつつ、オケの中で埋もれない存在感を持っています。また、それらはハードウェア・シンセの音をサンプリングしたものなので、アナログ・モデリングやデジタル・シンセ型のソフト・シンセには無い太さやアナログっぽさを有しており、高域に丸みを感じさせるリッチな響きとなっています。ベースの音色はかなり低域まで出ていますが、30Hz以下はあらかじめカットされているようで、曲作りに使いやすそうです。Nitronは"MASTER""FILTER"という2つのセクションのみで構成されており、非常にシンプルです。パラメーターも必要最低限で、シンセやサンプラーを触ったことがあれば、すぐに機能を理解できるでしょう。"MASTER"セクションでは発音モードを"POLY""MONO""LEGATO"の3種類から選んだり、その出音についてトランスポーズやピッチ調整が行えます。また、サンプルの再生位置やベロシティ、ポルタメント、エンベロープなどの設定も可能。"CHORD"というパラメーターには12種類のコード・タイプがプルダウンで用意され、入力したMIDIノートに対して好みのハーモニーを加えることができます。コードの平行移動が多いダンス・ミュージックで重宝しそうですね。そのほか"UNISON"では出音の左右幅を広げたり、デチューンさせることでより太くリッチな音色に仕上げることができます。

ロー/ハイ/バンドパスをはじめ
フォルマント・フィルターなども装備


"FILTER"セクションには、その名の通り各種フィルターを用意。2種類のローパスをはじめ、ハイパスやバンドパスが選べます。また、シンセ音を人間の声のように加工できるフォルマント・フィルターやフェイザーも搭載されており、すべてのフィルターに対しカットオフ周波数やレゾナンス、フィルター・エンベロープなどを感覚的に調整できます。フィルターの効き具合はちょうど良く、あまり過激なかけ方はできないように思いますが、普通に使用するには十分な印象です。"FILTER"セクションには、サチュレーターも装備されています。アナログライクでウォームなひずみと、それに伴う低域を足すことができ、出音が適度に明りょうかつ太くなります。とても好感が持てました。また"FX"というボタンではエフェクトのON/OFFが可能。エフェクトはディレイやリバーブ、コーラス、フランジャーなどが組み合わさったもので、パラメーターの微調整などはできませんが、各パッチに最適なものとして作られています。そして、最後に注目したい機能に"DBD"というものがあります。簡単に言ってしまうとピッチ・エンベロープなのですが、バウンシィなサウンドやサイレンのような音、上昇/下降音などを簡単に作れるので、現在のダンス・ミュージック制作ではとても便利そうです。


サンプリングCDでNitronのような音色に特化したものは数多く存在していますが、サンプル・プレイバック方式のシンセとしては、必要最低限のパラメーターで音色を効果的にエディットできるところがすごく良いと思いました。ベース・ミュージックやEDMにある程度フォーカスしているので、どんな音色が収録されているのか覚えやすく、使い勝手が良さそう。また、そのほかのジャンルにアクセントとして使うのもアリだと思います。(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年12月号より)

  
BEST SERVICE
Nitron
18,900円
▪Mac/Mac OS X 10.6以降、1.66GHz以上のIN TEL Core Duo ▪Windows/Windows 7(32/64ビット)、1.66G Hz以上のINTEL Core DuoもしくはAMD Athlon 64 ▪共通/2GBのRAM、NATIVE INSTRUMENTS K ontakt 5/Kontakt 5 Playerで使用可能(スタンドアローン/VST/Audio Units/RTASに対応)