iPadアプリですべてを操作する革新的なPA用デジタル・ミキサー

MACKIE.DL1608
APPLE iPadなどのモバイル・ツールの登場で、さらなる利便性を享受できるようになりました。今回のレビューはそんなツールを使用した最先端のPA系製品です。2012年の春ごろにアナウンスのあったiPadをフィーチャーした画期的なデジタル・ミキサー、MACKIE. DL1608がついにベールを脱ぎました! 早速レビューをしていきたいと思います。

iPadを本体に挿し込んで操作
Wi-Fi経由で10台のiPadを接続可能


本機のインプットはXLRで16ch(13〜16chはXLR/フォーン)、アウトはメイン・アウトにXLR×2、6つ用意されたAUXアウトにはフォーンを装備します。16chすべてのマイク入力には同社の高品位なOnyxマイク・プリアンプを搭載し、イン/アウトには24ビットCIRRUS LOGIC AD/DAコンバーターを採用。入力音に忠実で幅広いダイナミック・レンジや透明感のあるサウンドが得られます。またDL1608は本体のみのモデルに加えて、iPad 2 16GB Wi-Fiモデル(MC769J/A)が付属するDL1608iP2(オープン・プライス/市場予想価格150,000円前後)も用意されます。ちなみにiPadは第1世代から第3世代まで対応し(第4世代も対応予定)、iOS 5以降で動作します。ちなみに今回はDL1608iP2を用いてチェックしていきます。届いた段ボールを空けると、DL1608と一緒にiPadが同封されています。本体のサイズは291(W)×95(H)×391(D)mmで、重量は3.1kg(iPad/外付け電源は含まず)と小型。本体にはヘッド・アンプのボリュームと端子類だけとかなりのシンプル設計。一見"新しいiPadのデバイスかな?"というルックスです。早速iPadと本機を取り出して取扱説明書の通りにiPadを本体にスライドさせて差し込み、電源を入れて専用のiPadアプリMackie Master Fader for iPad(AppStoreで無料ダウンロード可能)を立ち上げれば、近代的なデジタル・ミキサーに早変わり! iPadは本体から取り外してWi-Fi経由でリモート操作も可能です(別途無線LANルーターが必要)。驚くべきは最大10台までのiPadから無線LAN経由でアクセスでき、さまざまなシーンでスタッフやミュージシャンが同時に別々のiPadから本体を操作できるのです。iPadにはまずch1〜8までのインプット・メーターを兼ねたフェーダーとステレオ・フェーダーのみで構成されるホーム画面が立ち上がります(左写真)。詳しく見ると手前からインプット・ネーム、ソロ、フェーダーとダイナミクス用メーター、パン、ミュート、EQと並びます。GUIは単純明快で、直感的なフィンガー・タッチでミキサーを操作できます。直接触って感覚的にサウンドを操れる4バンドのパライコ(画面①)、ハイパス・フィルター、コンプレッサーやリミッターにノイズ・ゲート(画面②)のほかに、リバーブ、ディレイなどの空間系エフェクトは、センド量だけでなくパラメーターの操作が可能(画面③)。アウト類は常に画面右横にドックのように表示されるので、すぐにマスターL/Rと、6系統のAUXにアクセスできます。さらに全出力には31バンドのグライコ、コンプ、リミッターを搭載するので、アウトボードも要りません。BGMの再生などのプレーヤーに関しても、DL1608にはiPadの再生専用チャンネルを別途搭載し、本体のインプット・チャンネルを使用する必要なく、iTunesの音源を再生できます。また、DL1608でミキシングしたサウンドはマスター・ネーム上にあるRecordをタップするだけで、2ミックスのWAVファイルをiPadに直接録音することができます。130213-mackie-1▲画面① 4バンドのパライコをコントロールする画面は視認性も良く、直感的な操作が可能。低域と高域はシェルビング/ピーキングの選択も可能だ130213-mackie-2▲画面② ゲートとコンプのコントロール・パネル。いずれもスレッショルド、レシオ、アタック、ホールド、リリースの設定のほか、コンプはニーもソフト/ハードが選べる130213-mackie-3▲画面③ FXのコントロール・パネルは基本的に上段がリバーブ、下段がディレイとなる。リバーブはホール・タイプが選択でき、ディレイも5種のモードがある

iPadならではのスピーディな操作性
MACKIE.らしいコシのあるサウンド


今回はアコースティックのライブ・イベントでチェックしました。編成はどのアーティストもアコギ、キーボード、オケ用CDプレーヤーのL/R、コーラス、ボーカルです。まず通常通りにインプットとアウトを仕込み、画面右の"A1"をタップしてボーカル・マイクを足元のモニターに返してみます。ある程度音量を返したところでAUXマスターフェーダー上にあるアイコンをタップすると31バンドのグライコが現れます。このイコライザー画面でDrawというアイコンをタップすると、絵を描くようにEQカーブを作れるのが楽しい! さて、すべてのモニターをチューニングし終えたら、次はメイン・スピーカーです。今まで数々の名機になった音響機器を送り出した同社らしく、EQの効き方もリニアで動かした分しっかりと効いてくれるのがさすがです。動作に関してもサクサクと動いてくれるのでストレス自体は感じません。続いて、エフェクトの設定のためにFX画面を出すと大きなアイコンが表れて、単音に2種類のエフェクトを付加できます。この画面はどのチャンネルも共通です。見た目とは裏腹に奇麗できめの細かいリバーブが簡単なセッティングで手に入るので、これだけで得した感じもします。エフェクトの下準備が終わったらリハーサルに突入。まずキーボード、アコギとライン系をもらいます。通常筆者はライン系にはEQを全くしないので、元音と卓のヘッド・アンプ頼りになりますが、MACKIE.らしく中低域にコシのあるサウンドが素晴らしい! EQ負けもしないので音数の少ない状況でもスカスカになりません。さらにボーカルとコーラス・マイクをチェック。こちらも同じく芯のある音ですが、中高域に嫌な感じもなく、歌がオケに負けることもないので、無駄に音量を上げることが無いです。このあたりからも実に音楽を聴かせるためのミキサーであることが分かります。

サウンド作りに役立つリモート操作
セッティング・データもスムーズに保存


Wi-Fi環境があれば、本体からiPadを外してステージ上からもモニター・オペレートが可能なので、ミュージシャンのリクエストを確実に反映させたパーフェクトなステージ・サウンドも実現できます。もちろんiPadを片手に歩き回ってフロアのサウンドを調節すれば、100%の納得いくサウンドに近道でたどり着けるでしょう。また各チャンネルにはギターやピアノ、ドラムやスピーカーなどイメージ・アイコンが用意されているのですが、iPadのカメラで撮った写真を張り付ければ、メンバーの写真や機材などを視覚で認識できるというユニークな機能もあります。音決めが終わったら次のバンドのリハに移るためセッティング・データを保存......本機はその作業さえもびっくりするくらい簡単。SnapshotをタップさえすればStoreやRecallが分かりやすく、しかも簡単に開きます。各チャンネルのリコール・セーフなどの設定はもちろんのこと、あとは保存ボタンになったデータを選択してOKを押すだけです。もちろんチャンネルごとのデータ、ダイナミクスやエフェクト、EQカーブなどの個々の自分のセッティングも保存もできます。iPad自体が珍しいものではなくなった現在、つまりそれだけの人が"DL1608となりえるツール"を所有しているということです。あとはわずかな値段で本体を手に入れたら、誰でもすぐにプロフェッショナルなライブ・ミキシングが始められるという、まさに夢のようなDL1608。未来が来たと言っても過言ではない製品だと思います。130213-mackie-4▲リア・パネルは左上からパワー、ファンタム電源スイッチ、その下がMAIN OUT(XLR)、右手は入力セクションで16chを用意。ch1〜12はXLRで、ch13〜16はXLR/フォーンとなる。その下はAUXセンド(フォーン)×6。左下はDCアダプター・インとEthernet関連リンク
MACKIE.
DL1608
オープン・プライス (市場予想価格/118,000円前後)
●最大入出力/16イン、3アウト(ヘッドフォン含む)●周波数特性/20Hz〜20kHz ●AUXセンド/6●AD/DAビット・レート/24ビット●サンプリング・レート/48kHz●外形寸法/291(W)×45(H)×391(D)mm●重量/3.1kg(iPadは除く)

●対応iPad/iPad、iPad 2、iPad(第三世代)●対応OS/iOS 5以降