即戦力になる30種のサウンドを搭載したボーカル用エフェクター

BOSSVE-5
 今年の3月にMusikmesse 2012で発表されてから気になっていたBOSSのボーカル向けエフェクターのVE-5。同社からは足元で操作する別モデルVE-20が既に発売されていますが、VE-5はライブ・パフォーマンスにおけるイージーな操作性を考慮して、手元でコントロールできる仕様になっているようです。早速レビューしていきましょう!

マイク・スタンドに本機を取り付けることで
ライブ中に手元での操作が可能


実物を手に取ってみると、予想した以上に高級感があってコンパクト。重量も軽いのでカバンに入れて持ち歩きたくなります。入出力系統を見ていくと、入力はMIC IN (XLR/TRSフォーン)と外部オーディオ・プレーヤーなどを入力するAUX IN(ステレオ・ミニ)の2系統、出力はミキサーやレコーダーへ接続するXLR OUT(XLR)とPHONES/LINE OUT(ステレオ・ミニ)の2系統、それに加えてフット・スイッチ(別売)を接続するCTLです。続いてフロント・パネルを見ていきましょう。まずツマミを中心にした操作子の中でひときわ存在感を放つFAVORITE SOUNDという3つのボタンには、お気に入りのエフェクトを最大3つまで登録して、瞬時に呼び出すことできます。本体の背面には電池ボックス(単三電池4本で駆動)と、マイク・ホルダーを取り付けるネジ穴があり、ここに付属ホルダーを装着すれば、本機をマイク・スタンドへ取り付けられます。これによって、歌いながら手元でエフェクト・チェンジを簡単に行えるようになります。足元もしくは手元の操作に関しては好き嫌いが分かれるところですが、これまで多くのボーカル・プロセッサーを使用してライブをしてきた筆者の観点から申しますと、操作ミスが起きにくいのはやはり手元操作。まして本機のように簡単操作であれば、なおさら確実なパフォーマンスができると思います。先述しましたが、足元派の方に向けて、フット・スイッチにも対応している点も気が利いています。

調節可能な6種類のエフェクトを搭載
パフォーマンスに適したLOOP機能


肝心のエフェクトは30種類のサウンドを搭載しています。ここで言う"サウンド"とは、音楽ジャンルや用途に合わせてあらかじめ用意されるプリセットのことで、パネルの中央のSOUNDツマミで選択します。その中でもオススメなのは、しっかりとした残響を得られつつもボーカルが際立つ"ROCK"や、ダブル効果の "DOUBLE VOICE"、手軽にハモりを付けたいときに重宝する3度ハーモニーの"3rd HARMONY"、エレクトロやR&Bにマッチする極端なピッチ補正の"Elect
ric Tune"など......買ってすぐにステージで使えるほど、クオリティも優秀です。これらのサウンドは6種類のエフェクトで構成されており、MENUボタンで順番にDYNAMICS、PITCH CORRECT、TONE/SFX、DOUBLE/HARMONY、DELAY、REVERBのON/OFFが切り替えられるほか、各エフェクトのパラメーターの調節も可能です。例えばDOUBLE HARMONYならユニゾン/3/4/5/6度/オクターブまであるので、凝ったハーモニーはもちろん、ハーモニーのキー指定もOK。また、PITCH CORRECTはナチュラルなピッチから、前述の"Electric Tune"のように過激なものまでバリエーションも豊かなので、ピッチにあまり自信のない筆者のようなボーカリストにも安心です。ちなみにパラメーターの設定は最大で50個まで登録可能。これらのエフェクトをパネル上にあるEFFECTとHARMONYボタンで、瞬時にON/OFFを切り替えられるのもうれしいですね。続いてVE-20でも好評だったLOOP機能を紹介しておきましょう。これはその名の通り、異なるメロディやハーモニーなどを録音/再生を繰り返して音を重ねていくフレーズ・ループ機能で、38秒以内であれば何度でもオーバー・ダビングが可能。操作も分かりやすく、LOOPボタンを繰り返し押すと、赤(録音)→緑(再生)→黄(オーバーダブ)の順に変わります。個人的に気に入ったのは、別種類のサウンドが重ねられるところ。試しに低音の効いた"ROBOT"や"HEAVY SCREAM"などのサウンドを駆使してみたら、ボイス・パーカッションのようなリズム・フレーズが簡単に作成できました。この機能を使いこなせば、ライブの飛び道具として一役買ってくれることでしょう。最後に内蔵マイクのレビューを少しだけ。所見ではオマケ程度の機能なのかと思いきや、かなりの高感度で作曲時や簡単な仮歌の録音にも使えそうです。今回のテストでボーカル・エフェクターの進化とコスト・パフォーマンスの高さにあらためて驚きました。本機はライブ主体に活動するボーカリスト全般にオススメできるほかにも、クラブ・ミュージックの声ネタとしても、面白い効果が得られるのではないかと思いました。 VE-5back.jpg ▲リア・パネル。左からMIC IN(XLR/TRSフォーン)、XLR OUT(XLR)。下の部分にはマイク・スタンド・ホルダーを取り付けるためのくぼみが見られるサウンド&レコーディング・マガジン 2012年9月号より)
BOSS
VE-5
オープン・プライス (市場予想価格/25,000円前後)
●規定入力レベル/−40dBu(マイク)、−20dBu(ライン) ●入力インピーダンス/4kΩ(マイク)、22kΩ(ライン) ●電源/単三電池×4、ACアダプター(DC9V) ●外形寸法/178(W)×55(H)×108(D)mm ●重量/460g(電池を含まない)