
シャープで現代的なフィルター・サウンド
15種類のデジタル・エフェクトを搭載
まずは入出力から見ていきます。ライン・インL/R(Hi-Z対応のフォーン)、AUXインL/R(フォーン)、メイン・アウトL/R(フォーン)のほか、MIDI IN/THRU/OUTを備えています。続いては本機のメインとも言えるフィルター部分です。ローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチからフィルター・タイプが選択できるアナログ・フィルターを2基搭載。L/R個別にフィルターの設定が可能で、パラメーターはカットオフ、レゾナンス、そしてQを操作できます。サウンドはアナログならではの温かさ、滑らかさを持ちながらもシャープでソリッドな現代的な印象で、フィルター単体として非常に高品質なものだと感じました。モジュレーション・ソースには、9種類の波形(下降ノコギリ波、上昇ノコギリ波、三角波、サイン波、矩形波、4種類の異なるデューティ比を持つパルス波)を持つLFOフィルターを2基装備。また、入力された信号の音量に追従して、フィルターを変化させオート・ワウのような効果が得られるエンベロープ・フォロワーも実装しています。また、用途に合わせて2基のフィルターで5種類のルーティングを組むことができ、ステレオL/R(2ch)、パラレル(並列接続/モノラル)、シリアル(直列接続/モノラル)、フィードバック、パラレル・フィードバックがあり、中でもフィードバックでは激しくひずませたり、予測不能な複雑な音色を作り出すことができます。フィードバックや内蔵のノイズ・ジェネレーターをトーン・ジェネレーターとして、アナログ・シンセのようにも使えます。本機にはアナログ・フィルターに加え、リバーブ、ディレイ、コーラスなど15種類のデジタル・エフェクトも搭載されており、各エフェクトにつき3つのパラメーターをエディットできます。例えば、コーラス+リバーブではリバーブ・レベル、コーラス・レート、コーラス・ミックスのパラメーターが操作可能です。ほかにもビット・クラッシャーやウェーブ・ガイドと呼ばれるエイリアン・ボイスのような効果を生み出すものまで用意されています。こちらはデジタルならではの奇麗なかかり具合が印象的で上品な音質です。
ノブの操作をリアルタイムに簡単記録
DAWとの連携がスムーズなMIDI対応
さらに、最大64ステップのシーケンサーが内蔵されており、2基のフィルターのカットオフ、レゾナンス、Qをすべて独立してコントロール可能。ステップごとに打ち込み感覚でエディットできるほか、Recordボタンを押すだけでノブの操作をリアルタイムにレコーディングできます。記録したシーケンスはMIDIクロックによりDAWなどと同期させることも可能です。先述の通り、入力端子はHi-Z対応なので、エレキギターやベースを直接挿して、コンパクト・エフェクター的な使い方もできそうです。筆者はギターやベースを弾かないため、Hi-Z出力を持つRHODESに接続してみたところ、プリセットを変えていくだけでもかなりユニークで、複雑なエフェクト効果が得られました。プラグインで同じようなことをしようとするとトラックにエフェクトを複数挿した上で、かなりのオートメーションを書かなければなりません。ところが本機では数個のノブやボタン操作だけで、さまざまなサウンドを生み出すことができます。各ノブはアナログ・フィルター部も含めてすべてMIDIで制御可能なので、DAW上でコントロール・チェンジのオートメーションを書くなどができます。また、最近のDAWはオーディオI/Oを介して、外部エフェクトを内蔵エフェクトのように利用するためのルーティング・プラグインが装備されています。それを使えば信号のイン/アウトの設定、レイテンシーの自動補正も簡単に行えるので、本機をプラグインのように扱うこともできるでしょう。アナログ・フィルターとしてはもちろん、感覚的にノブを操作することで、想定外のサウンドが生み出せる、まさにハードウェアの楽しさが詰まった機材。曲作りのヒントやアクセント、そしてライブでの活用も視野に入れて使っていけそうです。
