著名な調律師が手掛けるモデリング系ピアノ音源の最新バージョン

MODARTTPianoteq 4 Pro
 リアルなピアノ音源といえば大容量サンプル系が多く、数十GBのデータをハード・ディスクにインストールしなければならないものもあります。しかし今回レビューするピアノ音源MODARTT Pianoteqは、サンプリングではなくモデリングにより、ピアノの構造を演算することで音を作ってしまおうというもの。その最新版がリリースされたのでチェックします。

新たにSTEINWAYのD型をモデリング
プリセットを鳴らすだけでも素晴らしい音


本レビューでは最新版の上位モデルPianoteq 4 Proを使いますが、機能違いでStandard(29,400円)とStage(11,550円)も用意されています。ここで特筆したいのはソフトの容量で、何とたった35MB!! 筆者はPianoteqが発売されてから今までずっと使っていますが、当時はメモリーが節約できて相当助かりました(笑)。さて、果たしてその音質はどうでしょうか? 今回の最新バージョンではSTEINWAY D型グランド・ピアノをモデリングした音源、D4が加わりました。とりあえず一通りプリセットを鳴らしただけでも素晴らしい音色です。特に弱いタッチで弾いたときのニュアンスがとても自然で、弾いていてすごく気持ち良い音です。エディットのパラメーターもほかのソフトとは違い独特です。ハンマー・アクションの調整から弦の長さまでも自由自在で、現実ではあり得ないセッティングも可能です。この辺りはモデリングの良いところですね。Pro版ではNOTE EDITという機能があり、各鍵のパラメーター(チューニングなど)が棒グラフのように表示され、その名の通り1音ごとの調節をグラフィカルに行えます。また、Randomというボタンを押すことにより、パラメーターがランダムに変更され思いもよらない音が生成される機能もモデリングならではの楽しさがありますね。エフェクトはアンプ・モデリングとEQ、コンプをはじめ、リバーブ、ディレイ、トレモロ、ワウ、コーラス、フランジャーといった空間系など必要なモノは一通りそろっています。リバーブはコンボリューション型を搭載しており、非常にリアルな音像の表現が可能で、好きなIRデータをインポートすればオリジナルの響きも再現できます。

再生音が操れるアウトプット・モード
Add-on音源もさらにリアルな響きに


面白いと思う機能の1つにアウトプット・モードというのがあります。これは再生音にステレオ/モノラルに加えてバイノーラル設定を備え、バイノーラル・マイクで録音したような音像が再現できるというものです。ヘッドフォンで聴くとまるでその場所に居るかのようなとてもリアルな音になります(ピアノに対してどのポジションで聴いているかも自由に設定可能)。また、サウンド・レコーディング・モードでは細かいマイキングも思いのままで、最大5本のマイクを使った録音もシミュレートでき、マイクの位置や高さの調節、ピアノのふたの開閉具合なども調整可能となっています。さらに本機は、アコースティック・ピアノ以外にもAdd-onというMODARTTのオンライン・ストア(store.minet.jp/search.html?word=MODARTT+add-on)で追加購入できる音源を鳴らすこともできます。デフォルトで入っているピアノ音源はクラシック向きの音で、ロック系などのバンド・サウンドの中では埋もれてしまいがちな音色。そういう場合に使えるのが、Rock Piano YC5 Add-on(3,360円)で、特徴はカラッとしていてガッツがあり、抜けてくる音。ロック系のアンサンブルの中でも埋もれず前に出てくる印象です。筆者が特に気に入っているのは、Electric Pianos Add-on(5,565円)。これは本当にリアルでレコーディングで何度もエンジニアに"この音源は何?"と聞かれたことがあります。RHODES系とWURLITZER系の2種類がセットになっており、タッチによる音色変化がどちらも素晴らしいです。内蔵エフェクトのアンプ・モデリングやトレモロと組み合わせると最強。もちろんこのAdd-onもハンマーの動きや挙動を細かく調整できます。リアルでハイクオリティなピアノ音源をお探しの方は、ぜひ一度試してみることをお勧めします。サウンド&レコーディング・マガジン 2012年9月号より)
MODARTT
Pianoteq 4 Pro
47,250円
▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.5〜10.7(32/64ビット)、Power PC G5 Dual 2GHz以上、またはINTEL Cor e 2 Duo以上(Dual Core以上のプロセッサーを推奨)、1GB以上のRAM、動作フォーマット:Audio Un its/VST2.4/RTAS/スタンドアローン ▪Windows/Windows XP SP2/Vista/7(32/64ビット)、INTEL Pentium 4 2GHz以上(Dual Core 以上のプロセッサーを推奨)、1GB以上のRAM、動作フォーマット:VST2.4/RTAS/スタンドアローン