「TWO NOTES Torpedo Live」製品レビュー:名機のプリセットを収めるキャビネット&マイキング・シミュレーター

TWO NOTESTorpedo Live
自宅でギターやベースを録音する際に、近隣環境などの諸事情でギター/ベース・アンプを鳴らせないミュージシャンは多いだろう。そんな人たちに向けて開発されたのが、アンプ・シミュレーターだ。しかし、アンプ・シミュレーターは音作りの手軽さを重視しているが故に、サウンド面ではどうしても自分らしさを表現し切れないところがある。やはり、いつも自分が使っているアンプやエフェクターで、思い通りの音を作りたいというのがプレイヤーの心情だろう。Torpedo Liveは、そんなミュージシャンがサウンド面のリアリティを追求できるよう作られた製品だ。

バーチャル・キャビネットを32種類内蔵
マイクの設置位置を細かく設定可


Torpedo Liveは、デジタル・ロード・ボックスと定義された"スピーカー・キャビネット&マイキング・シミュレーター"とも言うべきギター/ベース向けのツール。ギターをアンプで鳴らすときは、ギター→エフェクター→アンプ・ヘッド→キャビネットという順番に各機をつなぐわけだが、本機はそのキャビネットの代わりに接続するもので、アンプ・ヘッドから受けた信号をオーディオI/Oやミキサーに出力してモニタリングできる。入出力としてはフロントに1基のヘッドフォン端子(フォーン)が備えられており、リアにはアンプ・ヘッドの出力をつなぐためのスピーカー・イン(フォーン)やスピーカー・スルー端子(フォーン/後述)、MIDIコントローラーなどをつなぐためのMIDI IN、そしてMac/Windowsベースのコンピューターと接続可能なUSB端子が装備されている。本機にはギター/ベース用のキャビネット・シミュレーターが32種類プリセットされており、TWO NOTESのWebサイトから無料ダウンロードできるMac/Windows対応のリモート・コントロール用ソフト=Torpedo Remoteを使うと、USB経由で新たなキャビネットを計13種類追加できる。マイキング・シミュレーターにはマイク・モデリングが8種類用意されており、ダイナミック(ムービング・コイル/リボン)やコンデンサーなど、さまざまなタイプが選択可能。Distanceというパラメーターではキャビネットとマイクの間隔を、Centerというパラメーターではキャビネットの中心からどれくらいマイクをズラすのかを調整でき、5バンドの内蔵EQなど、そのほかの機能と組み合わせて実際のマイキングを再現できる。

アンプ・シミュレーターでは実現できない
リアルなザラつきや中低域の押し出し


今回、私が本機のチェックに使ったのは、SOLDANO SLO-100という真空管アンプ・ヘッドだ。私は普段、SLO-100と合わせてMARSHALL 1965というキャビネットを使っている。そこで、1965に近いキャビネットをTorpedo Liveのプリセットから探してみたところ、Brit VintCと名付けられたものがそれに該当した。マイクには、Dynamic 57というSHURE SM57のモデリングを選択。本機のライン・アウトを私物のオーディオI/O、AVID Mbox Proに接続し、ギターを弾いてみた。SLO-100が真空管アンプということも手伝い、そのサウンドには想像以上の音圧がある。アンプ・シミュレーターでは出せないザラつきと中低域の押し出し感に圧倒された。アンプ・シミュレーターではひずみの音質がツルっとし過ぎていて、当たり前だがかなり作られた感じがある。しかし本機を使った場合は、ひずみをアンプ・ヘッドで作り出せることから、音の質が全く違う印象だ。次にアンプ・ヘッドのオーバードライブ・ゲインを絞り、いろいろな種類のキャビネットを試した。中でも気に入ったのはWatt FanCというプリセット。口径12インチのスピーカーを2基収めた、HIWATTのキャビネットを再現したものだ。Watt FanCからクランチ・サウンドを出してみたところ、アンプ・シミュレーターとは比較にならないくらい中高域に粘りがあり、"ジャキーン!!"と鳴らすようなプレイでは、本機の音なのか実際のキャビネットの音なのか、自宅の環境では判別しづらいほどだった。また、ひずみだけでなくクリーン・トーンもうまく再現できる。本機にFENDER Twin Reverbのアンプ・ヘッドを接続してみたところ、重心が低く、高域に独特のつやを持つ音色が得られた。さらに、本機にはパワー・アンプのシミュレーターも搭載されている。ギター・アンプのヘッドではなく、プリアンプなどを接続する際に便利なものだ。6L6やEL34などの真空管を生かしたパワー・アンプの再現が可能で、ギターはもちろん、オルガンやエレピなどを録音したりライブで使用する際にも有用だろう。また、スピーカー・スルー端子を使えば、キャビネット・シミュレーターと同時に実際のスピーカー・キャビネットを鳴らすことができる。プロフェッショナルな現場では、本機のライン・アウトから出力したサウンドと、実際のマイクで拾ったスピーカー・キャビネットの音をミックス、またはセレクトして扱えるわけだ。アンプ・ヘッドを所有していることが前提になるが、とりわけ自宅録音がメインのミュージシャンは、本機を導入することで格段にサウンドのクオリティを上げることができるだろう。

▼リア・パネルには、左からACインやUSB端子、MIDI IN、S/P DIFアウト(コアキシャル)、ライン・アウト(TRSフォーン)、ライン・イン(TRSフォーン)、スピーカー・スルー端子(フォーン)、そしてスピーカー・イン(フォーン)が並ぶ




サウンド&レコーディング・マガジン 2012年8月号より)

撮影/川村容一

TWO NOTES
Torpedo Live
オープン・プライス (市場予想価格/90,000円前後)
▪周波数特性/5Hz〜19kHz▪ノイズ・レベル/−94dBu以下@20 Hz〜20 kHz▪外形寸法/430(W)×44(H)×163(D)mm▪重量/2kg

▪Mac/Mac OS X 10.4以降▪Windows/Windows XP/Vista/7