DAWのサウンドにビンテージ感を与えるアナログ・ディストーション

CONISISTFDV01
カスタム・オーダーの音響機器で知られるコニシス研究所。ノックダウン製品を扱う個人経営のガレージ・ショップから、一歩進んだ感のあるメーカーだ。今回は、そんな同社が発売したアナログ・ディストーションTFDV01を試した。

2種類のノブで音作りできるモノラル機
トランスとディスクリート回路を内蔵


TFDV01は、普段の制作環境に組み込むことで、手軽にビンテージライクなサウンドが得られるよう設計されている。外形寸法120(W)×75(H)×190(D)mm/重量800gという独特なサイズとなっており、アウトボードとしては小さめ、ギター用のペダルに比べると、かなり大きめといったところだ。入出力としてライン・イン(XLR)やインスト・イン(フォーン)、ライン・アウト(XLR)を装備。モノラル仕様となっており、DC電源で動作する。操作子の数も限られており、アナログ・ディストーションのかかり具合を制御できる"SOUND SHIFT"と出力音量を調整するための"OUTPUT"という2種類のノブのみ。内部にはトランスとディスクリート回路が搭載されており、入力した音にアナログ特有の質感を加えられるのが特徴だ。そのサウンドとは、どのようなものなのか?

ギターやベースの音に芯や粘りをプラス
ドラムを通すとアタックがマイルドに


まずは、インスト・インにギターやベースをつないでチェック。すると、SOUND SHIFTをゼロにしていても原音が良い具合に変化。音に芯が加わった感じだ。それから、SOUND SHIFTを上げてひずみの量を増やすと腰のある音になり、粘りも出てきた。本機のひずみはギターやベース用のディストーション・ペダルとは別次元であり、"ひずんでいる"という感覚はSOUND SHIFTをかなり上げないと得られないだろう。また、普段ギターやベースをプレイしている筆者が思うに、本機は演奏に対するレスポンスが実に良い感じだ。お次は本機にシンセを接続し、エレピなどの音色変化を確かめたが、こちらは腰のある音になったというより自然な空気感が加わった印象。その効果はスピーカー・シミュレーターのように派手ではないが、アンサンブルの中に入った際、ほかの楽器とのなじみが良くなりそうだ。また入力ソースにもよるが、SOUND SHIFTの値を高めに設定すると、より本機の特色が出やすいだろう。今度は、筆者のAVID 192 I/Oからアナログ出力したソフト・シンセやボーカルのモノラル・トラックを本機のライン・インに入力し、ライン・アウトから出力したものを192 I/Oのアナログ入力に戻してみた。やはり良い感じにかかってくれるし、楽曲のアンサンブル全体を聴きながらかかり具合を調整できるので、各ノブの値を決めやすい。こうした使い方をした場合も、SOUND SHIFTは高めに設定した方が良かった。ちなみに、ドラムに試すとアタックが若干マイルドになる印象。軽くコンプレッションされるように感じたが、コンプを使ったときとは違い、自然なかかり方だ。最後に楽曲をモノラル・ミックスし、トータルでかけてみた。モノラルで曲を聴いているということもあってか、サウンドにビンテージ感が加わる感じだ。トータルでかける場合は、SOUND SHIFTをほどほどの設定にした方が良い印象。ひずみを感じる一歩手前くらいが良いだろう。


テープ・シミュレーターなどのプラグインと比較すると、本機でかけられるひずみには全く派手さが無い。だが、対応ソースの幅広さを含め、DAW内のサウンドを外部のビンテージ機器に通した感じは狙えると思う。実際にコンディションの良いビンテージ品をそろえるのは大変なので、そういった用途を求めている人にお勧めだ。

▼フロントには、左からインスト・イン(フォーン)とライン・イン(XLR)を装備



▼リアには、左からライン・アウト(XLR)とDCインが配置されている




サウンド&レコーディング・マガジン 2012年8月号より)

撮影/川村容一

CONISIS
TFDV01
49,800円
▪最大入力レベル/ライン・イン:+17.5dBu、ギター/ベース・イン:+10.5dBu▪最大出力レベル/+28dBu▪外形寸法/120(W)×75(H)×190(D)mm(突起部を除く)▪重量/800g